タマムシシティのポケモンセンターを発つ直前、久しぶりにオーキド博士に連絡を取ろうと言う話になった。 サトシのゲットしたバッヂが四つと、折り返し地点に入ったこともあり誰からも異議は出なかった。 最近はロケット団と関わる事もなく、怒られる事はまずないだろうと思ったのが運のつき。 テレビ電話に出たオーキド博士の顔は、どう見積もってもご機嫌と呼べるようなものではなかった。 「あの、お爺様。今回は何も怒られるような事はしていないと思うのですが」 受話器を持ったシゲルが呟き、その通りだと後ろからサトシとルカサが無言で首を縦に振る。 「確かに、今回は何もしておらんの。そう、なにもじゃ」 悪い事は何もしていませんよというアピールは上手く行ったらしいが、揚げ足を取るようにオーキド博士が言った。 どういう意味だろうと三人が首をかしげてすぐに、オーキド博士の何時もの大声が受話器を通ってあふれ出した。 「バカモン、ワシがお前達を送り出した理由を思い出してみろ! ポケモン図鑑じゃ、ポケモン図鑑」 「あッ!」 言われて直ぐにシゲルは思い出したようだが、サトシとルカサがなんだったっけと首をかしげたのがまずかった。 「その顔を見ればすっかり忘れて追ったのはまるわかりじゃ。数日前に貴重なサンダーの情報がインプットされたのには驚いたが、それ以外をおろそかにしすぎじゃ。今日中にじゃ、十種類以上のポケモンのデータをインプットせい。そして可能ならそのポケモンをゲットして送ること」 「ちょっと待ってくれよ、オーキド博士。それじゃあ、次の街に」 「それがいかんのじゃ。バッヂばかりに目をむけ、自然の中で学ぶ事がおろそかになっておる。それではいざと言う時に見知らぬポケモンだからと慌てる事になってしまうぞ」 オーキド博士の最もな言葉に、サトシが胸を押さえウッと後ずさった。 知識と言う点では、三人の中で一番サトシが劣るからだ。 そのためサトシは次のジムへと早く赴きたい気持ちをグッと堪えたようで、シゲルの気持ちは確認するまでもない。 敬愛する祖父が自然の中で学べというならば、その言葉を疑うまでもなく受け入れてしまう。 残るルカサはというと、三人のうち二人がすでに傾いている為、反論することなくオーキド博士の言葉を受け入れた。 「それではお爺様、夕方かそれ以降にもう一度連絡を入れることにします。朗報をお待ちください」 「うむ、期待しておるぞ。しっかりポケモンをゲットするんじゃぞ」 と言うやり取りがあってから数時間後、サトシたちの姿はタマムシシティを出て直ぐの草むら近くにあった。 時間が経ったせいか、いさかやる気を失くして岩の上に座っているルカサと、その岩に寝転ぶようにして持たれているサトシの目の前では、今まさにシゲルがモンスターボールを投げようとしている所であった。 圧倒的なパワーと火力で攻めたリザードが弱らせたニャースへとモンスターボールが飛んでいく。 ニャースの小判に当たって跳ねたモンスターボールが瞬く間にニャースを吸い込み閉じ込めた。 ゆらゆらと揺れるモンスターボールを前に、シゲルが確信を持って近づいていくとモンスターボールは静かにその動きを止めた。 「よし、これで三匹目。またしばらくしたら頼むよ、リザード」 「ガァ!」 順調さを確信する台詞を吐いてモンスターボールを拾ったシゲルは、リザードをモンスターボールに戻して振り返った。 そこでようやく連れの二人のやる気が減衰している事に気づいた。 つい先ほどまで岩の上に座っていたルカサは、こくりこくりと舟を漕ぎ、サトシは地面に突っ伏して眠っていた。 「君たちは、起きろ。お爺様の言葉を忘れたとは言わせないぞ。今日中に十匹以上捕まえて贈らなきゃいけないんだ」 怒鳴り声に近いシゲルの声で眠っていた事に気付いた二人は、ガバッと跳ね起きた。 腕を胸の前で組んでいるシゲルに気付くと、直ぐ苦笑いを始めた。 「お、起きてたわよちゃんと。ね、サトシ」 「そうだぞ。ちゃんとシゲルがサンドをゲットした所を見て」 「僕がつい今しがたゲットしたのはニャースだ」 その一言でツーっと視線をそらした二人は、胸に抱いていた気持ちを表に出して開き直る事にした。 「ちゃんと私もサトシも三匹ずつゲットしたわよ。でもなんだか違うと思わない?」 「そうだよな。オーキド博士にはフシギダネたちを貰ったり、ポケモン図鑑も貰ったけど。研究の為だからゲットしてこいって言われても、納得は出来ないよな。俺はどうせゲットするなら友達になるためにゲットしたい」 「そうよね。一歩間違えたら、今私たちがやってるのってただの乱獲よ?」 「そんな密猟者みたいな物言いは止すんだ。確かに手当たりしだいと言ったゲットは感心しないが、少なくともお爺様の下に送られたポケモンたちが不幸になるような事は絶対に」 「静かにして!」 シゲルにとっては当たり前の、至極当然の主張をする途中ルカサの手の平がその口を無理やり閉じさせた。 一体何事だと驚く二人の目の前で、ルカサは直前のやり取りを全て放り出してすぐそばの草むらを凝視していた。 カサリと揺れる草むらはポケモンが飛び出してくる予兆であった。 ルカサがそれに気付くのは良いのだが、少し様子がおかしい。 たった今乱獲云々と言っていたくせに、何故草むらが揺れた程度でこうも慎重になったのか。 シゲルとサトシは視線を向け合い、互いに思い浮かんだ予想を声なく確かめ合い、そして次の瞬間それが間違っていなかった事を知った。 草むらからぴょこんと飛び出したのは、薄茶色の毛皮に、巻きにまいたトサカと尻尾を持ったロコンであったからだ。 「きたー! ロコンよ、ロコン。この子はオーキド博士には渡さないからね、私が貰うわよ!」 つい先ほどまでの真面目口調は何処へやら。 ちなみに、ルカサは明らかに自分の為にゲットするつもりなので、会話上の矛盾はない。 「しかしどうして草むらから飛び出てくる前に可愛い系のポケモンだって解ったんだ。謎だ」 「ルカサぐらいになると、お目当てのポケモンの微かな鳴き声も記憶してるんじゃないのか?」 幼馴染二人から、お前は何者だと言う視線を受けつつ気付いていないルカサは、モンスターボールを取り出した。 事情が良く飲み込めていないロコンはルカサを見て小首を傾げると、後ろ足を持ち上げて首筋をかいていた。 余りの愛らしさにルカサが悶え苦しむ姿があったが、ゲットさえすれば何時でもその姿を見れるはずと断腸の思いでモンスターボールを投げつけた。 ゼニガメか、バタフリーか、意標をついてイワークか。 ルカサが投げつけたモンスターボールが口を開くよりも先に、飛び出す影があった。 「え、なに?」 ロコンが飛び出した草むらから飛び出したそれは、今だ口を開いていないモンスターボールを弾き返した。 投げたはずの手に戻ってきたモンスターボールを手に、瞳をぱちくりさせるルカサの目の前には唸り声を上げるガーディがいた。 それもただのガーディではなく、左目に大きな傷跡を持ったガーディであった。 余りの痛々しさにロコンの事は放り出してルカサが駆け寄ろうとする。 「バウッ!!」 噛み付かれたかと錯覚するような吼える声がガーディから発せられ、ルカサの足がそこで止まってしまう。 それだけではない。 ルカサや、後ろに居るサトシやシゲルが持っていたモンスターボールの幾つかが突然その口を開いたのだ。 今朝から走り回って捕まえたポケモンたちがモンスターボールから解き放たれ、あろうことか逃げ出してしまう。 「まずい、今のは吼えるって技だ。急げ、今ならまだもう一度モンスターボールを投げつけるだけで捕まえなおせるはずだ」 「お、おう。ルカサ、お前も逃げられてるぞ!」 「でも、あの子が。あッ!」 一つしかないガーディの瞳に映る怒りの表情が気になっていたルカサであったが、そのガーディはロコンをつれて何処かへといってしまった。 逃げ出したポケモンたちを再ゲットしたサトシたちは、一度タマムシシティに戻っていた。 オーキド博士に頼まれた数だけポケモンをゲットはしていなかったのだが、ルカサがあのガーディを気にして聞き込みをしようと言い出したからだ。 眼球に達しているのではないかと思うような大きな左目の傷、向けられた怒気とトレーナーのポケモンを逃がす行為。 野生のポケモンがトレーナーやゲットされたポケモンに敵意を持つと言っても普通のものではない。 片目のガーディについて情報を集め始めると直ぐに情報は集まり出した。 どうやら自分達以外にも何人ものトレーナーがゲットを邪魔されたり、手持ちのポケモンを逃がされたりしたらしい。 そう言った恨みを買う一方、聞き捨てならない情報も得る事が出来た。 あのガーディはトレーナーから虐待を受けた挙句に捨てられた事を恨み、野生のポケモンたちをトレーナー達から守っているらしいと言う事であった。 左目の大きな傷もその時のものであろうと聞いたルカサの決断は誰よりも早かった。 「私、あのガーディをゲットするわ。辛い目にあってトレーナーを憎むのも解る。けど、今のままじゃ恨みを買ったトレーナー達にまた同じ目にあわされちゃう。何よりも癒してあげたい、あの子の体も心も」 ルカサの悲痛な言葉に、サトシとシゲルが同意しないはずがなかった。 再びガーディと出会った街道に戻り、ゲットのためにどうおびき寄せるかを話しあう。 「重要なのはどうおびき寄せるかだ。幸いにしてルカサにはゼニガメが居るから、バトルはそんなに心配ないだろう」 「ってことはガーディは炎タイプか。適当にポケモンをゲットしてれば、また現れるんじゃないか? ゲットを邪魔して回ってるみたいだし」 「でもそれじゃあ、ガーディが来る前に私の子たちが力つきちゃうわよ」 余程ガーディの事が心配なのか余り頭の回っていない発言に、溜息を一つついてからサトシとシゲルが胸を張って言った。 「それまでは俺とシゲルが変わりにバトルするさ。あのガーディを心配してるのは何もルカサだけじゃないんだぜ」 「サトシの言う通りだ。一人で抱え込まずに、素直に頼ってくれ」 「ありがとう、二人とも。頼りにしてるわ。その代わり、あの子が現れたら任せておいて」 ガーディの救済を三人で誓うと、サトシとシゲルは代わる代わるポケモンバトルを開始し始めた。 もちろんバトルのためには野生のポケモンが必要なわけで、ポケモンを探してはバトルを行い、また場所を移動した。 その際にオーキド博士の為にゲットする事を忘れずにいたのは、シゲルのちゃっかりした意見であった。 バトルのたびにルカサは辺りに目を光らせ続け、目的のガーディが現れたのはバトルも数回を迎えた頃であった。 丁度順番であったシゲルが、弱ったオニスズメへとモンスターボールを投げつけた所へ草むらからガーディが飛び出してきた。 左目の傷からあのガーディである事は一目瞭然で、オニスズメへと向かうモンスターボールを前足で叩き落していた。 「グルルゥ」 一日に二度目の遭遇となると、ガーディもこちらを覚えていたのか必要以上に威嚇の唸り声を上げてきた。 今回は向こう側の事情を知っているため、怯むよりも先にルカサが前へと飛び出した。 「お願い怒らずに話を聞いて。私たちは貴方を探し」 「バウ!」 ルカサの説得を遮るようにガーディの吼える声が重なった。 「ルカサ、説得は後だ。かなり興奮していて、迂闊に近づくと危険だ」 「それは解ってるけれど……お願いゼニガメ」 シゲルの助言に唇を噛みながらルカサはモンスターボールからゼニガメを取り出した。 大きく傷ついた相手に更に傷を負わせるような行為は避けたかったのだが、強制的にでもゲットしなければ何も始まらないと痛感したからだ。 飛び出したゼニガメも、モンスターボールの中で大体の事情を聞いていたのか、何時もの弱気は影を潜めて勇ましく鳴いた。 「ゼニガメガ!」 「ゼニガメ、できるだけ急いで勝負を決めるわよ。水鉄砲」 力強く頷いたゼニガメは、勢いをつけるように一度体をそらして大量の水を口から放水し始めた。 目指す先は炎タイプのガーディであったが、大人しくそれを正面から受けるほど弱くなかった。 幾人ものトレーナーたちに煮え湯を飲ませてきたガーディである。 そのガーディがいつまでも同じ場所で、トレーナーたちの邪魔を出来ていた事実をルカサたちは考慮すべきであった。 迫る水鉄砲を前にガーディの姿が掻き消えた。 「え?!」 サトシのポッポの電光石火に匹敵する素早い動作にルカサもゼニガメもガーディの姿を見失ってしまう。 「まずい、高速移動だ。気をつけろ、ルカサ」 「右だ、ルカサ。防御させろ!」 唯一ガーディの動きを目で追えていたのは、ポッポの電光石火に慣れていたサトシだけであった。 その指示を信じて、ルカサはすぐにゼニガメへと指示を出した。 「からにこもってゼニガメ」 「ゼニッ!」 しゅぽんっと音が聞こえそうな動作でゼニガメが甲羅に篭った直後、サトシの言う通り右手側からガーディの突進攻撃が加えられた。 間一髪のタイミングであり、攻撃を受けたゼニガメの甲羅が勢い良く転がりやがて止まった。 引っ込めていた手足、頭を出したゼニガメであったが激しい転がりにより目を回したのかよろめいていた。 「まずいぞ、ここまでガーディが強いだなんて予想していなかった。いくらタイプで有利でも、ルカサにはきついぞ」 「確かにそれはそうだけど。頑張れルカサ。ガーディのこと癒してやるんだろ。だったら、負けるな!」 「当たり前でしょ。私は立派なポケモンドクターになるんだから。苦しんでるポケモンを前に、逃げたりなんかしない!」 「ゼニゼニ!」 自分も手伝うとばかりにゼニガメが鳴くと、アレだけ唸り声を上げていたガーディが一瞬だけその声を止めていた。 だがすぐに首を激しく振ると、元通りの唸り声を上げて威嚇してきた。 そしてまた目にも留まらぬ動きで動き始めた。 「ダメだ、こうも素早い動きだとどうしても後手後手に回らざるを得ない」 「俺がルカサに言って、ルカサからゼニガメに伝えてたんじゃ遅すぎるし」 確かに聡には見えているのだが、情報の伝達が遅れるのは否めない。 「私なら大丈夫よ。ゼニガメ、からにこもって高速回転!」 何故に今その技を選んだのか。 防御に高速回転を加えても防御は防御である。 シゲルとサトシが何かを言うよりも先に、ルカサが次なる指示を飛ばした。 「ゼニガメ、そのまま水鉄砲よ」 サトシに似た余りにも無茶な要求であったが、ゼニガメは高速回転を続けたまま水鉄砲を放った。 すると芝生に水をまくスプリンクラーのように、ゼニガメの甲羅から当たり一面へと水がまかれ始めた。 本来の水鉄砲としての威力は微塵も見られないが、元々炎タイプであるガーディには十分な効果があったようだ。 振りまかれる水を全身に受けて、ガーディの動きが鈍り始めた。 目にも止まらぬ動きで、十分目で追えるまでに落ちてきたのだ。 「よくもまあ、そんな無茶を。サトシそっくりなバトルスタイルだ」 「確かに、俺でもこうしたかも」 普段のルカサは正統派のバトルスタイルなのだが、サトシばりの無茶なスタイルを行ったのはそれだけ必死だったからだろう。 振りまかれる水に苦戦していたガーディを前に、ルカサは更にゼニガメに指示を飛ばす。 「今よ、ゼニガメ。動きの鈍ったガーディに水鉄砲。これで決めて!」 高速回転後、ややふらついたがゼニガメは特大の水鉄砲をガーディへと向けてはなった。 今度は避けられないと判断したガーディも火炎放射を放ってきた。 大量の水と炎がぶつかり押し合うが、やはりタイプ相性というのは大きかった。 次第にガーディの火炎放射が押され始め、ある地点で完全に炎が水に飲み込まれていった。 このままでは水鉄砲を受けてしまうとガーディは目を閉じて体を縮こまらせるが何時までたっても想像した水鉄砲の衝撃はこなかった。 「ルカサなにをやっているんだ」 「まだバトルは続いてるんだぞ。危ないって!」 変わりに聞こえたのは、シゲルとサトシの危険を訴える声であった。 それもそのはずでゆっくりと目を開けたガーディの目の前には、おっかなびっくり歩み寄ってくるルカサの姿があった。 早速唸り声を上げるガーディであったが、その声は多分に動揺が含まれていた。 「そのままでも良いから話を聞いて。貴方が心無いトレーナーに心も体も傷つけられたのは聞いたわ。でもそんなトレーナーばかりじゃない事を知って欲しいの。貴方の傷を私に癒させて欲しいの」 「グルゥ」 それでも唸り声をやめなかったガーディの視線は、ルカサが手に持ったモンスターボールに向けられていた。 「お願い、ゲットされるのが嫌なら私は貴方をゲットしない。だからせめて貴方の傷を治療をさせて」 「ゼニ、ゼニ」 心配そうにサトシとシゲルが見守る中、ルカサに走り寄ってきたゼニガメの声が加わった。 必死の説得が続く中、少しずつガーディの唸り声が小さく消えていった。 ほっと一安心してサトシとシゲルも近づこうとしたが、途端にガーディの唸り声が復活してしまう。 「うお、なんだ。怖、ルカサだけかよ」 「そうみたいだな、僕らは彼を刺激しないように近づかないようにしよう」 「ごめんね、二人とも」 そう謝った後、ルカサは手持ちの薬などを使ってガーディの左目の治療を始めた。 だがその顔が晴れる事はなく、治療が終わるにつれ暗くなっていくほどであった。 本来は包帯も巻いてやるべきだが、それが外れるまで一緒にいられるわけでもなくルカサは治療を終えた。 そしてガーディを抱きしめ、泣きながらごめんなさいと呟いていた。 「ゼニ……」 ゼニガメが心配そうな声をあげ、離れた場所でルカサとガーディを見ていた二人もなんとなく事情を察していた。 ガーディの左目の状態が思ったよりも良くなく、手遅れだったのだろう。 誰も声を掛けられず、しばらくルカサのすすり泣く声が聞こえるだけであった。 どれだけ静かな時間が続いた事か、やがてルカサが立ち上がりガーディの頭を人撫でして振り返った。 「ごめんね、二人とも。行きましょう。貴方も、これ以上トレーナーの恨みを買わないようにね」 「ゲットしなくていいのか?」 「出来ればしてあげたいんだけれど、あの子が嫌がるのを無理やり連れて行くのもね。ただでさえ私はイワークを一体無理に連れてきてるんだから」 シゲルの問いかけに答えたルカサは、以前三人がかりで無理にゲットしてしまったイワークを例にあげた。 正直に言うと、あのイワークとは今でも完全に仲直りはしていないのだ。 ガーディの治療は何とかできたが、完全にガーディの心を開く事の出来なかったルカサはかなり落ち込んでいた。 そんなルカサをサトシとシゲルが慰めながら、タマムシシティへと向けて歩き出した。 「ゼニ?」 ルカサは少し塞ぎこみ、サトシとシゲルは慰めることで手一杯で、気付いたのはモンスターボールに戻されなかったゼニガメだけであった。 ゆっくりと歩く三人から離れた場所から一定距離を取ってあのガーディが後をつけてきていた。
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