第十一話 お月見山登頂
 サトシたちは再びお月見山の洞窟へと足を踏み入れていた。
 ロケット団の事があったのは昨日の事であり、洞窟の入り口や入り口付近にはまだ警察の姿が見えた。
 だがそれもお月見山洞窟の奥へと進むに連れて見かける事はなくなっていく。
 代わりに見られるようになったのは野性のポケモンたちであった。
 特にお月見山ではこうもりポケモンであるズバットや、タケシも持っていた岩ポケモンのイシツブテが見られた。
「お、ズバットだ。あそこ」
 さっそく道を行く途中でサトシが天井に逆さにぶら下がって寝ているズバットを見つけた。
 すぐさまポッポの入ったモンスターボールを振りかぶるが、その手をシゲルが後ろから掴んでとめた。
「サトシ、次は僕の順番だったはずだぞ。洞窟に入る前にちゃんと決めておいたろ。誰が見つけても順番通りにバトルするって」
「すまん、すまん。ついポケモンを見つけると反射的に動いちゃって」
「ゼニガメ出てらっしゃい」
 ルカサの声にえっと二人が振り返ると、すでにモンスターボールは投げつけられており、中からゼニガメが飛び出した。
「あ、ずるいぞルカサ。ポッポ君に決めた!」
 つられるようについ先ほどシゲルに止められたのを忘れたサトシが、ポッポをモンスターボールから出した。
 さすがに近くに二匹も別のポケモンが現れたことで、眠っていたズバットが目を覚ました。
 鋭い牙を見せながら威嚇を始めるが、次の瞬間には度肝を抜かれていた。
「サトシ、邪魔しないでよ。ゼニガメ、あわで攻撃よ」
「そっちこそ順番は守れよ。次はシゲルの番だったろ。ポッポ風起こし」
 二人のトレーナーが指示し始めたことで、堪らないとばかりにズバットは翼をひるがえしてさらに洞窟の奥へと飛んで行ってしまう。
 すでにズバットが居なくなった天井へとゼニガメのあわが付着していき、それをポッポの風起こしが吹き飛ばしていく。
 空のモンスターボールを出す暇もなくズバットには逃げられ、即座にサトシとルカサは互いを睨むように見ていた。
 互いの額をくっつけ合う程の至近距離から言葉を投げあった。
「サトシが余計な事をするから、逃げられちゃったじゃない」
「先に順番を無視したのはルカサだろ。それに俺が間に入らなくてもどうせ逃げられてたよ」
「そんなのやってみなくちゃわからないじゃない。サトシよりは華麗にゲットしてみせるわよ!」
「君たちは解っててやってるんだよね?」
 全く無視された形となったシゲルは、怒りを抑えて問いかけながらモンスターボールを投げはなった。
「ヒトカゲ、サトシとルカサに火の粉だ」
「クァ?!」
「火の粉だ」
 驚いて振り向いたヒトカゲに言い聞かせるように言った。
 未だシゲルを無視して言い合っているサトシとルカサを見て、ヒトカゲは遠慮がちに炎の灯った尻尾を振りぬいた。
 風を受ける事で勢いを増した炎が千切れ、火の粉となってサトシとルカサに降り注いだ。
 ヒトカゲが手加減した事もあり服に燃え移るような事はなかったが、熱いものは熱い。
「熱ッ、なに。なに考えてるんだよ、シゲル」
「やだ、火傷の跡が残ったらどう責任とってくれるのよ!」
 両手で頭を庇って右往左往する二人に、シゲルは話を聞けと言い放つ。
「もう一度言うよ。誰が見つけようとポケモンとバトルする権利は順番通り持ち回り。順番を破るどころか、二人掛かりでポケモンに挑みかかるなんてもっての外だ。いいね、二人とも。返事は?」
「解った、解ったから。もう火の粉はやめてくれ。本当に熱いんだよ」
「以下同文。うう、焼けど治し足りるかしら。髪も痛んでないといいけど」
 ようやく大人しくなった二人を見て、シゲルはヒトカゲをモンスターボールに戻してから歩き出した。
 多少やりすぎた感はあったものの、三人で一緒に旅をする以上こういったルールは必須であった。
 旅立った当初はまだこういったルールは不要だった。
 何しろシゲルもルカサも積極的にバトルをしようと言う気が一切なかったからだ。
 だが二十二番道路でのポケモンバトル以降シゲルが、先日のロケット団の化石強奪以降からルカサがポケモンバトルに対して前向きになりだした。
 今までのように好き勝手バトルしていては必ずいつか三人の中で揉め事が起きると思い、シゲルがルールを提案したのだ。
「シゲルがルールを作ろうって言い出したのもわかるけどさ。俺やルカサは良いとして、次に会ったポケモンがイシツブテならどうするつもりなんだよ」
「そう言えばそうね。私達は違うタイプのポケモン複数持ってるからいいけど、シゲルって未だヒトカゲ一体だもんね」
「痛いところを。だからこそ、さっきのズバットをゲットしておきたかったんだよ。それを君らが邪魔したんだろう」
 実は先ほどヒトカゲに火の粉を撒き散らさせたのは、その辺りの八つ当たりも含まれていたりした。
 岩タイプのイシツブテには炎タイプのヒトカゲは不利なのである。
 それ以上に、三人の中で唯一ポケモンをゲットしていないシゲルには、多少の焦りもあった。
 出来れば次に遭遇するポケモンはズバットでありますようにと、今の時間帯天井にぶら下がっているであろうズバットを探して上を見上げながら歩いていく。
「なあなあ、シゲル。イシツブテだったら俺が代わってやろうか?」
「あ、ずるい。順番的には次が私なんだから。シゲルがパスした場合は、私の番よ」
「絶対にパスはしない。だいたい君らは人を応援しようとかそう言う気はな、うわッ!」
 余りにも五月蝿く二人が騒ぐので振り返り叫んだ時、後ろ歩きとなったシゲルの足に何かがぶつかった。
 体は前に、バックしようとしながらも足がその場に止まっており、ぐらりとシゲルの視界が回転した。
 思い切り転んで、お尻から岩の上に尻餅をついてしまう。
 余りの痛みに涙が滲み、視界が歪んでいっていた。
「痛ッ、たたた」
 シゲルのお尻の下にあったのは通路に転がしておくには余りにも大きな岩であった。
 何でこんな所にと思っていると、サトシが手を差し伸べてきていた。
「ずっと思ってたんだけど、シゲルって間が悪いと言うか運が悪いよな」
「あ〜、それ私も思ってた。でも間が抜けてないシゲルってただの嫌味な優等生になっちゃうわよ」
 好き勝手に言う二人に腹を立てながらサトシが伸ばした手に捕まると、グラグラとお尻の下の岩が揺れた。
 なんだと疑問に思う間もなく突然岩が浮き上がり、シゲルは今度こそ地面へと投げ出された。
 地面に転んだシゲルと、並んで立っているサトシ、ルカサの間に浮いていた岩には野太い二本の腕がくっついていた。
 それから岩には刻み込んだような目と口がくっついており、言うまでもなくそれはイシツブテであった。
 ついでにおでこのあたりには怒りの四つ角が浮かんでいた。
「イシツブテだ!」
 サトシが叫ぶのとほぼ同時のタイミングで、イシツブテが高速に回転し始めた。
 まずいと転んでいたシゲルが走り出すと、その後ろを地面の上を転がったイシツブテが追いかけ始めた。
「うわああああ!」
「ツ〜ブ〜テ〜!」
 シゲルの悲鳴と重なるようにイシツブテの恨めしそうな声が洞窟内に響いていた。
 目を合わせたときにはすでに怒っていたので解らなかったが、睡眠か休憩中にシゲルが乗りかかってきて怒ったのだろう。
 あの場にはサトシもルカサもいたと言うのに、イシツブテは執拗にシゲルを転がりながら追い掛け回していた。
「シゲル、代わってやろうか。このままだと結構危ないぞ」
「だから次は私の番だってば。私のゼニガメなら、イシツブテも一ころよ」
「お前ら、この期に及んで!」
 正直に言ってしまえば助けては欲しかったが、二人の言い方が癇に障ったシゲルはベルトのモンスターボールを前方へと放り投げた。
「ヒトカゲ、分は悪いが君の力を貸してくれ。イシツブテに火炎放射だ」
「カァ、ゲッ?!」
 モンスターボールから飛び出して直ぐに大きな口を開けたヒトカゲであったが、そこから炎が噴出すことはなかった。
 転がり続けていたイシツブテの回転は速度を極め、とても火炎放射で止まるようなものではなかった。
 結局はヒトカゲもシゲルと一緒に走り出し、逃げ続けるはめとなってしまった。
 逃げる人数が増えただけで何も状況は変わらなかったが、シゲルは文句を言う前に次の手を考えていた。
 ルカサが優等生と言い表しただけあって、シゲルは直ぐに次なる手を思いついていた。
「ヒトカゲ、このまま真っ直ぐ逃げ続けるぞ。ここは洞窟だから直ぐに行き止まりだ。それを利用する」
 シゲルの言葉を理解して頷いたヒトカゲは、あちらこちらに逃げるのではなく真っ直ぐ逃げ始めた。
 もちろんシゲルも隣で同じように走っており、行き止まりである壁に向かって一直線に逃げ続けていた。
 そして壁まであと数メートルと言う所で、体を無理やり直角に曲げて方向転換をした。
 直ぐにイシツブテも追おうとしたが、勢いのついた体はそうは行かなかった。
 曲がりきれず、かと言って止まる事も叶わずあえなく洞窟内の壁にめり込んでいった。
「うわっ、壁がボロボロと。すっげえ威力。イシツブテ、無茶苦茶強え」
「い、一応何時でも助けられるように準備はしておきましょう。ゲットとか抜きで、本気で危ないわ」
 壁にめり込んでもしばらく止まる様子のなかったイシツブテは、体を半分以上壁にめり込ませてようやく止まった。
 そのまま目を回してしまうかとおもいきや、まだまだ元気一杯、怒り一杯とシゲルとヒトカゲに振り返る。
「さて、これであの厄介な回転は止まったけれど。火の粉も火炎放射も効かないとなれば、ヒトカゲひっかくだ」
「カゲ!」
 追いかけられるのはここまでだと、ヒトカゲがイシツブテへと向けて駆け出した。
 前傾姿勢で走るそのスピードは以外に速いもので、イシツブテが次の動きをする前に接近しつくし腕を振り上げていた。
 鋭い爪をりようしたヒトカゲのひっかくであったが、やはりイシツブテは硬い岩であった。
 爪と岩肌がぶつかり合い嫌な音をたてあうと、ヒトカゲは全身を身震いさせていた。
「カァ〜……」
 余程イシツブテが硬かったようで、涙を浮かべながらヒトカゲが鳴いていた。
「やはり普通の技じゃ無理か。ヒトカゲ一端戻れ。反撃がくるぞ」
 痺れた爪の痛みで我を忘れていたヒトカゲがハッとすると、すでに頭上にはイシツブテの姿があった。
 すぐに跳び退るとイシツブテが重く硬い体を利用した体当たりが地面にめり込んでいた。
「シゲル、本気で俺かルカサと代われ、このままじゃ危ないぞ。別に順番パスとかじゃなくていいからさ」
「そうよ、わざわざ不利な戦いしてヒトカゲ怪我させるのもかわいそうでしょ」
 自分の不始末は自分で始末をつけようとしていたシゲルの決心がわずかに鈍ったが、奮い立たせたのはヒトカゲの声であった。
「カゲカゲカゲ!」
 嫌だ嫌だと言わんばかりに何度も首を振り、まだ戦えるとイシツブテを睨みつけていた。
 以前のトレーナー戦でもそうだったが、意外に意地っ張りな面を見せ始める。
 引き際が早すぎるシゲルと、意地っ張りなヒトカゲは意外と良いコンビなのかもしれない。
 イシツブテを前にシゲルは改めて勝つ手立てを考え始めていた。
「ヒトカゲ、しばらく時間を稼いでくれ。必ず何か方法を見つけてみせる」
「カゲ!」
 もう一度ヒトカゲがイシツブテへと向けて駆け出した。
 まだ転がられては堪らないと思ったのだろう。
 接近する事で転がる距離をなくし、体当たりをかわしながら時に痛みを我慢してひっかいていた。
「そう言えば、シゲルって前に戦ったトレーナーも水ポケモン出してきてたよな。やっぱりシゲルって運が悪いな」
「さっきだったら同意してあげたけど。今はそんな場合じゃないでしょ!」
「そうだけど、仕方ないだろ。そう思っちまったんだから」
 サトシがルカサに怒られている間も、ヒトカゲは必死にイシツブテをひきつけ、シゲルはイシツブテを倒す方法を考えていた。
 サトシの言う通り以前もヒトカゲは苦手な水タイプのポケモンとバトルし、勝ちをもぎ取っていた。
 バトルではタイプの相性は重要であるが、絶対ではないのだ。
 水タイプに炎タイプのヒトカゲが勝ったように、岩タイプにも勝てないはずはない。
 肝心なのは逆転の発想である。
 水が苦手なら撃たせなければ良い、撃てない環境を作ればよい。
「そうだ、相手が硬いのなら。ヒトカゲ、火炎放射だ。イシツブテの体を思い切り暖めるんだ」
「カァ!」
「ツブテ!」
 向かってくるイシツブテに対して、ヒトカゲが思い切り炎を吐き出した。
 だがはやりタイプの相性差から、イシツブテは軽く腕で顔を覆う程度で耐え抜いておりたいしたダメージは見られない。
 すぐに炎を振り払い、ヒトカゲに対して体当たりしてきた。
「かわしてもう一度火炎放射だ。暖められるだけ暖めるんだ」
 イシツブテの体当たりをかわしては火炎放射。
 炎を振り払われても何度でもヒトカゲが火炎放射を繰り出していった。
 そのためイシツブテの体が熱を帯び始め、灰色に近い茶色だった体が赤みを帯び始めていた。
 相当な熱量を持ったらしく、イシツブテの体から煙が出始めるほどである。
 肉体的なダメージは少ないのだろうが、熱がこもる事によって徐々にイシツブテが疲れ始めていた。
 怒りを表すように上に持ち上げていた両腕を徐々に下ろし始めていた。
「カァ〜……カァゲ」
 だが疲れているのはヒトカゲも同じらしく、火炎放射の後に息切れの間が出来るようになっていた。
「そろそろヒトカゲも限界か。火炎放射はもう良い、ヒトカゲ今度はひっかくだ!」
 息を整えたヒトカゲがイシツブテをひっかくと、さっきは弾かれただけの爪が確実にイシツブテの体を少なからず削り取っていた。
 自分でも驚いたヒトカゲが自分の爪を見ていると、イシツブテが逆襲の体当たりを喰らわせてきた。
 一瞬の隙をついたもので、熱々に熱されたイシツブテの体のこともありダメージは大きかった。
「ヒトカゲ、油断するな。イシツブテの体は膨張する事で僅かに硬くなくなってるんだ。続いてひっかく攻撃!」
 ダメージを負いながらも勢い付いたヒトカゲが、鋭い爪を唸らせ駆けた。
 対するイシツブテは自身の体に起きた状態が理解しきれず戸惑っていた。
 やはりそこがトレーナーのいるポケモンと、野生のポケモンの違いであった。
 イシツブテへと駆けていったヒトカゲが飛び上がり、渾身の勢いでその爪を振りかぶった。
 これを最後の一撃にするつもりらしく激しく嘶いたヒトカゲの右手の爪が輝き始めた。
 そのまま振るった一撃はイシツブテの体を大きく削り取っていく。
「まずい、それ以上傷を負わせたら。行け、モンスターボール!」
 余りにも深く入りすぎたヒトカゲの一撃を見て、慌ててシゲルがモンスターボールを投げつけた。
 イシツブテに命中したモンスターボールが、ヒトカゲの爪が振り切られるより先にイシツブテを飲み込んでいった。
 地面に落ちたモンスターボールが、一回、二回と揺れる。
 そしてその揺れが三回目に入ろうとした直前で止まり、カチッと回収完了の音を鳴らした。
 タイプの振りをひっくり返した息を呑むようなバトルに、シゲルやヒトカゲだけでなく、サトシやルカサもその場に腰を下ろしたいた。
「相変わらずシゲルのバトルは心臓に悪いわ。本当に運が悪いんだから」
「うるさいな、こうしてゲットできたんだからアチッ、モンスターボールまで熱ッ」
「やっぱり運が悪い奴」
 立ち上がり拾い上げたモンスターボールまでもが、イシツブテの熱量を処理しきれず熱々に熱されていた。
 素手で拾い上げたシゲルは、サトシの突っ込みに答えることなく焼き芋のように上に放り投げながらモンスターボールを冷まし始めた。
「でもさっきのヒトカゲの攻撃ってただのひっかくじゃなかったわよね。アレってもしかして、メタルクローじゃないの?」
「なんか格好良い名前の技だな。なんかずるいなシゲルのヒトカゲばっかり。強い技覚えて」
「サトシのフシギダネも確か葉っぱカッターを覚えたって言ってたわね。まずいわ、出てらっしゃいゼニガメ!」
 最初の三匹の中で新しい技を覚えていないのがゼニガメだけだと気付き、すぐにルカサはモンスターボールを投げていた。
「良い、ゼニガメ。あの誰も居ない所へ向けて、え〜っと。そうだ、水鉄砲」
「ゼニーッ!」
 明後日の方向へと向けてゼニガメが気合を入れるも、口の中から可愛らしい水鉄砲が出るのみであった。
 人間が水を口に含めばできるんじゃないかと言うような威力に、ゼニガメが恥ずかしそうに甲羅の中に引っ込もうとしてしまう。
「こら、すぐに諦めちゃ駄目。もっとお腹に力を込めて、水鉄砲!」
「ゼニーッ!!」
 言われた通りお腹に力を込めてゼニガメが叫ぶと、今度こそ見事な水鉄砲が口の中から放出された。
 やや上向きに放たれた水鉄砲は天井へとぶつかり、飛沫となって降り注いできた。
 シゲルなどはコレ幸いににと熱くなったモンスターボールを冷やしていたが、事はそれだけでは終わらなかった。
 水しぶきが辺り一体に広まった直後、そこら中に落ちていた岩がぐらぐらと揺れ始めたのだ。
「あれ、こんな場面どこかで……」
 ゆっくりと浮いていった岩々には、立派な両腕と顔がくっついていた。
 剣呑な瞳のままに振り返った岩は疑うまでもなくイシツブテであり、ルカサだけに留まらずサトシやシゲルまでもを睨みつけていた。
「やばい、やばい。さっきのイシツブテ以上に怒ってるぞ」
「そりゃ眠りを邪魔されただけでなく、水を吹きかけられたんだ」
「わざとじゃないのよ。ちょっとした行き違いと言うか、ごめんね?」
 責任を感じてか、可愛く謝ってみたルカサであったが効果は薄かった。
 一体、また一体と回転を始めたイシツブテたち。
「に、逃げるぞ二人とも!」
「ルカサが良く確認もしないで水鉄砲を使わせるからだぞ!」
「知らなかったんだから、仕方がないでしょ!」
「喧嘩してないで、走れ。全員のポケモン出しても、あの数はとめられないぞ!」
 ゴロゴロと回転しながら追いかけてくるイシツブテたちを引き連れながら、サトシたちはさらに洞窟の奥へと走り出した。

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