第七十三話 ミーシャの真実


インペリアル・ナイトという要が敗れたバーンシュタイン軍には、撤退という手段しか残されていなかった。
決して敗れることがないはずの偶像が崩れればあっけないもので、士気の低下におり戦線を維持する事すらも不可能であった。
奇しくも最強であるはずのインペリアル・ナイトが最大の弱点である事を露呈していた。
もっともその弱点を突くのが普通に戦うよりもよっぽど難しい事であるのは、戻ってきたカーマインたちを出迎えたランザック軍がよく知っていた。
テレポートの光があふれカーマインたちが現れた時の完成があたりを揺るがすほどに響き渡る。

「まさか本当にあのインペリアル・ナイトを退けるとは、その歳でたいした腕前じゃないか。本当に驚いた。なあウォレス」

「だから言っただろう。一度勝っていると」

「はは、すまない。だがそれも仕方がないだろう。インペリアル・ナイトに勝ったことがあるとうそぶく奴などいくらでも居るだろ」

将軍と言う地位を忘れて少し浮かれた様子のウェーバーに対して、ウォレスはなんとか言葉を返していたが、カーマインの表情は晴れていなかった。
自分でも気づかないうちに右手で痛めて左腕をおさえていたが、本当に痛むのは別の場所であった。

「カーマインお兄ちゃん、腕大丈夫?」

「うん、たぶん二、三日は腕から痺れが取れないと思う」

ルイセがそれを聞いて直ぐに手をとって回復魔法をかけ始めてくれたが、痛みは、胸の痛みは全く取れなかった。
ジュリアンと剣を交えながら、沢山の言葉を交えた。
お互いの国の立場となって戦わなければいけない事への肯定と否定。
あの日出会ってしまった事への肯定と否定。
確かにジュリアンの言うとおり、腕を競い合うのならばもっと別の、心から喜びを分かち合えるような場所で競いあいたかった。

「ねえ、喜ぶのはいいんだけどそろそろ戻った方がいいんじゃない? 学院がどうなってるのか不安だし」

「そうだったな。ウェーバー、すまないが急いで戻らなければならないんだ」

ティピが不安げに言った言葉で、急いでいる理由を思い出しウォレスがすまなそうに手を上げた。

「なに、もう戻るのか。今夜一日だけでも駄目なのか。礼をいくら言っても足りないぐらいなんだぞ」

「ウェーバー、お前はもうランザックの将軍だろ。旧友と語り合うよりも、先にやらねばならないことがあるだろう」

「ああ……そうだったな。ガラシールズを取り戻さなければ」

自分の仕事を思い出したウェーバーは、部下に合図をすると一振りの剣を持った部下が現れた。
一体何のつもりか遠目ではわからなかったが、剣を持った部下が近づくにつれそれが何であるのかはっきりと解った。
しなやかなカーブを描いた真っ白な鞘に収められた細身の剣。
ジュリアンが戦場で使用していた、カーマインたちと出会う切欠となった剣であった。

「カーマイン君がインペリアル・ナイトを討ち取った証だ。受け取ってくれ」

「…………はい」

ちゃんとした言葉を返すべきなのだろうが、カーマインはそう言うことしか出来なかった。

ただ受け取った剣を力強く握り締めながら、一人静かに決心した。

「ウォレスさん、少し時間をくれますか?」

「ええ、はやく戻らなくて良いの?!」

ウォレスよりも先に驚きの声をあげたのは、真っ先に戻ろうとせかしたティピであった。
それも当然の事で、カーマインもはやく戻るべきだとは思っていた。
だからこそ、ジュリアンの剣を持ったまま走り出した。

「すぐに戻る!」

「あ、ちょっと待ちなさいよ!」

「カーマインお兄ちゃん?」

「いいから、二人とも。行かせてやれ」

「でも、ウォレスさん!」

ウォレスの言葉でルイセもなんとなくだが、理解したようで黙っていた。
だがティピだけはカーマインの行動を勝手なものだと一人怒り続けていた。





流れが悪い時は、何処までも悪い物だとジュリアンは右腕から流れる血をとどめ様と逆の手で押さえながら岩の陰に座り込んでいた。
真っ先に部下のてによって撤退させられたのは良いが、運悪く魔物に襲われバラバラとなってしまったのだ。
しかも応戦しようにも、そこでようやくジュリアンは剣を戦場においてきてしまった事に気づいて、逃げに徹した。
荒れ果てた岩が乱立する場所で隠れる場所には困らないが、一旦隠れてしまうと安全な分気軽に動けなくなってしまう。

「追撃はまだ後だと思うが、早く部隊と合流しなければ……」

まずは止血だと、長く髪を止めていたスカーフを外して包帯の変わりに腕に縛り付けと、束縛を解かれた髪がふわりと浮いて体にまとわり付いてくる。
わざと手入れを怠りながらも艶を何とか保つ髪に、こんな状況でさえ安堵してしまう自分をジュリアンは笑った。

「そんな事を考えているようでは、負けて当然か」

自嘲のための笑いであったが、それは強くなったカーマインに対して失礼だと被りをふる。
カーマインに負けた、いつか負けるという予感はあったものの、こんなにも早くその日が来るとは思いも寄らなかった。
それも純粋な勝ち負けではなく、泥臭い戦という最もお互いに相応しくない場所で。
自分の生は後悔の連続だとそう思わずにはいられなかった。
女の身で生まれてしまった事、女の身でありながら剣を取ってしまった事、女の身でありながら強くなり、彼らと出会ってしまったこと。

「一体、私はどうすればいいのだ。どうすれば私は、これ以上苦しまずにすむのだ?」

迷いを振り切り、父のためになどではなく自分の為にインペリアル・ナイトを目指し、その結果が今の自分の姿である。
何をしても、どうがんばっても望んだものとは別の未来が自分の前へと訪れてしまう。
自然と暖かい物が瞳からこぼれそうになった時、小さな石ころを蹴り上げる音が耳に届き、跳ねるようにして立ち上がる。

「誰だッ!」

「ジュリアン」

何故ここにいるのか、追撃のわりには他に人影がないと様々なことを思い浮かべながら、まずジュリアンは目元の雫を拭い去った。

「逃げ切れんと言う事か」

「追撃のつもりはないよ。これを返しにきたんだ。大事な物なんだろう?」

「私の、剣?」

カーマインが突き出すように差し出したそれをみて、ジュリアンは何を考えているのだと言う目を向けながらも受け取っていた。
確かに大事な物であったが、いまや長年使い続けたという愛着以上にはなにもない剣である。
ジュリアンには理解ができなかった。
いまや敵と味方に別れつつも、それは仕方が無いことだとお互いに命のやり取りをしたばかりである。
二人とも生き残る結末を迎えたが、本当にそれは運が良かっただけに過ぎないことはカーマインも理解しているはずだ。
呆れるのを通り過ぎて、カーマインの行動が腹立たしく、胸の奥からあふれ出すようにジュリアンは言葉を発していた。

「なぜだ、なぜお前たちは私の前に現れた!? なぜお前たちが敵なのだ!?」

「言っただろう、選んだからだって。ジュリアンはインペリアル・ナイトであることを。僕はローランディアの騎士であることを。だけど敵になりたくて選んだわけじゃない。だけど仕方が無いって言葉で済ますには、辛すぎる」

辛いという言葉を聞いて、ジュリアンは胸元に置いた手のひらを服ごと握り締めた。
締め付けられるようにシワだらけになった服の下からは、嫌でも女の象徴でもある胸の膨らみが強調される。

「どうしてこんな時代に生まれてしまったのだろう。別の時代に生まれていれば、私は女として生きてゆけたはず。そうすれば、こんな辛い思いをしなくてすんだ。誰もが苦しまずにすんだ」

何が言ってあげられるのか、カーマインは何一つ言葉を思い浮かべられなかった。
どんな言葉をかけようと、ジュリアンの苦しみはカーマインには完全に理解仕切る事はできない。
口を開いても出て行くのは漏れ出る吐息のみであり、それでもと伸ばした手のひらはすぐにジュリアンによって弾かれた。

「私に触れるな。私はインペリアル・ナイトだ。バーンシュタイン王国のために、私情を捨てなければならない!」

自分自身に言い聞かせるようにして、ジュリアンは走り去って行ってしまった。
その背を見送りながら、カーマインは直ぐそばの岩へとその背を預けて空を仰いだ。

「そっか、そうだったんだ」

走り去るジュリアンの背を見て、カーマインは何故自分が追って来たのかを悟った。
似ているのだ、ジュリアンが持っている男と女の間の劣等感が。
かつてカーマインがその胸に抱き、今もなおしつこくこびり付く胸の悪くなるような劣等感。

「グロウに対する僕の劣等感。何処までも自由で強い、大きな翼を持ったグロウ」

同じ気持ちを持つ物同士だから、カーマインはジュリアンを追ってきたのだ。
だがそれは自分自身が乗り越える事でしか克服できない、誰も手助けできない問題でもあった。
はやく学院に戻らなければならない事を忘れ、しばらくジュリアンの去った方向を呆然と眺め様として突如、有る方角へと振り向いた。
我知らず胸に湧き上がる不吉な不安感を胸に、ジュリアンの事も頭から吹き飛ばしテレポートの出来るルイセの下へと走った。





暗い意識の底へと沈み込んでいたグロウの意識を浮き上がらせたのは、赤子のように泣きじゃくる女の子の声であった。
朦朧とした意識の元では開いた瞳も役割を果たしてはくれず、ただ女の子の泣き声だけが耳に響いてきていた。
誰であろうか、聞き覚えのある声ではあるが、まだまだグロウの意識の覚醒は間に合わない。

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい…………わたし」

ある地点を越えた所で、一気にグロウの意識が覚醒した。
何も考えないままに真っ先に確認したのはファイヤーボールを受けたわき腹へと手を当てる事であった。
以前もファイヤーボールを目の前で爆発させた事はあったが、火の塊を直接ぶつけられたのはコレが始めてであった。
なのに服はぽっかりと穴が開いているものの、怪我一つ無い。
どういうことなのか、とりあえず怪我がないという事実がグロウを冷静にさせ、ようやく辺りを見渡す事ができた。
何処なのか間では解らないが、あたり一体何かの装置のような物や配線が所狭しと並べられた大きな部屋であった。
グロウは今その装置の一つの台座の上に載せられているようで、その直ぐ目の下に座り込んで泣き崩れるミーシャがいた。

「ミーシャ?」

「グロウさん……私、人間じゃなかったの。ただの…………」

思わず立ち上がり駆け寄ろうとしたグロウは、透明なガラスのような物に頭をぶつけた。
どうやら装置の台座ではなく、円柱型のガラスかなにかの透明な筒の中へと入れられているようだった。
すぐ隣には先ほどまでの自分のように座り込んだまま意識のないニックと、見知らぬ初老の老人がいた。

「おお、気がついたようだな。などと和んでいる暇はない。奴が戻ってくる前になんとしても逃げる手立てを考えなければ」

「ちょっと待て、一体どうなってやがる。てめえは誰だ!」

「私は魔法学院の副学院長だ。この状況を見れば解るとおり、奴に捕らえられたのだ」

「奴? 学院長か……なら、なんでミーシャはそんな所で自由になっていやがるんだ」

突然の事過ぎて何がなんだかわからないグロウへと、目の前の老人とは別の声がかけられた。

「それはだね、ミーシャは私の可愛い、可愛い道具だからだよ」

決め付けるかのようなその言葉に、ミーシャが痙攣を起こしたように反応していた。
それだけで現れた男を敵だと定めたグロウは、射殺すかのような目つきでにらみつけた。

「おや、気に食わなかったようだね。まあ、君達は心配する事は無いさ。少々記憶をいじらせてもらったら無事に帰すつもりだ」

「クソ爺、無事に帰ってもらえると思っているのか?」

「ああ、思っているさ。所で君達が入れられている装置には、ある施しがしてあるのだが……おっとうっかり起動させてしまったようだ」

あくまでも穏やかな口調で学院長が、装置に近寄り何かを押した刹那、絶叫が響き渡った。
叫んだのはグロウであり、放電とは違う体を駆け抜ける刺激の塊に頭の中の全てが焼き切れそうな激痛が走ったのだ。
自分の中に潜む、命を搾り出されるような不愉快さを持った激痛が何時までもグロウの中から消え去ろうとしない。

「やめないか学院長、ただでさえ不完全なその装置を、ましてや普通の人間に対して使ったりなど!」

「叔父様、お願いします。止めてください、あの人たちには何もしないって言ったじゃないですか!」

「やれやれ、道具が主に対して意見とはな?」

一先ずグロウを襲った仕掛けは止められたものの、ミーシャに対する学院長の目つきがますます冷気を帯び始めていた。
そんなことにも気づけなかったミーシャは何よりも先に、グロウが倒れこんだ装置へと駆け寄っていた。

「グロウさん、お願いですから大人しくしていてください。そうすれば叔父様は無事に帰してくれるんです」

「そんな…………信じ、るか」

「嘘ではないよ。今回のグローシアンの誘拐は全て副学院長が仕組んだ事、君達はその捕縛の際に副学院長を殺害してしまう。そういうシナリオで行くつもりだ」

「そして全てのグローシアンを葬り去った事実は闇の中か。見損なったぞマクスウェル学院長!」

「これから死にゆく者の弁など無意味だよ。それにこちらは忙しいのだ。これから数時間で残ったグローシアンからグローシュを絞り出さなければいけないのでね」

学院長がおいと声を上げると、妙齢の女性が部屋の中へと入ってきて学院長の背後にある装置へと歩み寄った。
詳細は不明であるが、いくつか有るボタンが迷いなく押されると、部屋の中央にあった円形のふたの様なものが盛り上がりはじめた。
盛り上がったように見えたそれは、グロウたちが入れられている装置と同じ円形のガラスであり、その中では見知った一人の女性がいた。
青く長い髪を持ったニックの恋人、アイリーンがそこに囚われていた。

「やめて……私の、記憶…………奪わないで」

「ニック、起きろ。こんな時に、暢気に気絶してんじゃねえ!」

「ここは、アイリーン? アイリーン!!」

「ニック、ああ。コレは夢なの、最後だから許された奇跡なの?」

再開を喜ぶ恋人が駆け寄るには近く、されどとてつもなく長く大きな隔たりにさえぎられていた。

「コレを見てもまだ、あきらめられないと言うのか。それ程の価値があるというのか、マクスウェル!」

「あるさ、グローシアンになる事にはそれだけの価値が」

グローシアンになると言う事はどういうことなのか。
副学院長だけは学院長の腹積もりを知っていたようだが、次の言葉を聞いてさすがに青ざめていた。

「まだ君にさえ言っていなかった事があったな。私はね、はるか過去に滅んだ支配階級グローシアンの末裔なのだよ。しかも王族のね。だがいかなグローシアンといえど、普通の人間と交わればグローシュの能力はそこで途絶える。これでわかったかな?ただの人間になった私がグローシュを欲するわけが!」

「それで自分がグローシアンになって、昔のように支配者になろうといのか?!」

「ご名答」

「くだらねえ。みみっちい人間が考えそうなくだらねえ事だな」

グロウの憎まれ口がよほど気に食わなかったのか、学院長は黙って合図をすると、秘書であるセレナがスイッチを入れた。
巻き起こる放電に似た刺激に絶叫を上げながらも、僅かに慣れた痛みに耐えてグロウは意味のある言葉を叫んでいた。

「ミーシャ!」

殆ど半分は絶叫にまぎれて聞き辛かったであろうが、ミーシャは泣き腫れた瞳で振り返っていた。

「突然すぎて、状況の半分もわかんねえが。お前はどうして欲しい、どうしたい!」

「わたし…………」

「あんなクソ爺に道具呼ばわりされて満足かよ。クッ、言ってみろよ。黙って泣いてちゃ、なんも」

限界が訪れたようにグロウが膝を突いてしまった。
まだ決断できずにいるミーシャを待つように、その手はガラスを引っかくように手を伸ばし立ち上がろうとするが足に全く力が入っていなかった。
それだけではなく、声もでず、なによりも何か大切な物が自分から失われていくような不安が湧き上がり始めていた。

「普通の、グローシュを持たない人間からグローシュを抜き取ろうとしても」

「ただ廃人と化すだけであろうな」

「俺は……誰だ」

呻くような言葉の意味を、グロウ自身が理解していたのか、その目から徐々に光が失われようとしていた。
グローシュを操るコツは、グローシアンが生まれる時に日食、月食を通して自然と脳の中にその波長を覚える物である。
つまりグローシュを抜き取ると言う事は、脳という敏感な器官に触れると言う事でもある。
目が霞むように、記憶がかすみ出したグロウの目の前で炎が膨れ上がっていた。
爆煙と炎の向こうから現れたのは、身に纏ったマントで全身を防御した学院長であった。

「どういうつもりか、弁解はあるのか?」

「弁解もなにも、私が道具だとか人間じゃないとか、今はそんな事どうだって良い。仲間を、親友のお兄さんを見殺しにして、そんなの間違ってる! 私のせいでルイセちゃんが泣いちゃう様なことだけは、絶対に間違ってる!」

「そのグローシアンとの仲を深めるために、入力した感情がそもそもの間違いであったか」

学院長が杖の矛先をミーシャに向け、道具をゴミ箱に捨てるときの様に何の感慨もなく魔力を練り始めた。
仮にも魔法学院の最高峰にまで上り詰めた男に、どこまでミーシャが張り合えるのか、ミーシャも杖を構えた時に状況は一変した。
けたたましく部屋の中へと鳴り響く警告音、危険度を示すためにか真っ赤な光が危険を知らせるために繰り返し点滅しながら部屋の中を照らし出した。

「一体、おいどうなっている?!」

「装置が溜める事のできるグローシュの限界量に迫っています。このままでは装置がオーバーフローします」

「馬鹿な、一体何人分のグローシュを保管できると。それにただの人間にはそもそもグローシュなど無いはずだ。一体何処から、そのようなものが!」

全員の目がグロウに注がれる中、グロウはまだひざまずいた状態でうめき声を上げていた。

「俺は、誰なんだ…………生きる意味を、禁じられた……俺は、誰に?」

目に見える放電に似た現象が、ひざまずいたグロウの背中へと集まっていった。
まるでそこに一番グローシュが集まっているとでも言うように。
事実、放電とは異なる光が生まれ始めた。
誰もが言葉にならず、見守るしかない中で光が形を成して、大きく広がっていった。
グロウを閉じ込めていたガラスは砕けちり、羽ばたいた翼がその破片の全てを吹き飛ばし光り輝く粉雪のように散らせていった。
もう自分を縛る物はなにもないと、ゆっくりと俯いたままにグロウが立ち上がる。

「翼、馬鹿な。馬鹿な、馬鹿な、馬鹿な。ただの平民が、何故そんな大それた物を持っている! 何故グローシアンでも無い貴様が、王たる証を持っている!」

「クッ……フフ、アーッハッハッハッハッハッハッハッハ!!」

あざける様なグロウの笑い声が、何も答えることなく響き、その頬を一筋の光が流れ落ちていた。

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