第六話 放浪のウォレス


ルイセがぽけっと宿のロビの椅子に座っていると、正面にある窓から兄の姿が見えた。
得に注意してみるつもりではなかったが、知らないものばかりの村ではやけに、いやグロウだったからかもしれない。
一度左右に頭を振ってから再度窓の外を見ると、いきなりグロウがあの剣士に切りかかるのが見えた。

「グロウお兄ちゃん?!」

交わった剣を返され、グロウの喉元に突きつけられるたのは一瞬であった。

「ど、どうしよう。カーマインお兄ちゃんを」

オロオロとして立ち上がるルイセだが、突きつけていた剣を引き剣士が頭を下げた事で少し落ち着いた。
そのまえにグロウが何かを言った様だが、距離がありすぎて聞こえるはずもない。
だがそれでも剣士が頭を下げた事から、先ほど自分が剣を返したときの事を何か言ったのかもしれない。
それこそ自分のためにと思ったところで、座りなおした椅子の上でルイセはうつむいた。
グロウの何もかもがわからないのだ。

「いつも苛めるくせに、急に優しくなったり」

それはこれまでの気まぐれという印象であった。

「なのに……意地悪なんかじゃない。冷たくなっちゃった。なのにまた優しくなったり」

グロウの抱える矛盾した行動がルイセを悩ませていた。

「グロウお兄ちゃん」

前みたいに苛めて欲しいとは言わないが、気軽には話して欲しいと願いを込めて呟く。
もちろん言葉にするだけじゃ意味がないと解っていても、ルイセにはどうすればよいのか解らなかった。

「呼んだか?」

「え、え? あれ、何時の間に?」

どれ程思考の渦にはまり込んでいたのか、声を聞くまでその存在に気付いては居なかった。
いきなり悩みの原因が目の前に現れ、ルイセは困惑して慌てる。

「なあ、ルイセ」

「う、うん……なに?」

これから何を言われるのか、緊張の面持ちで待つルイセだが、それは予想外すぎる行動であった。
急にルイセへと手を伸ばしたグロウの手が、その二本に分けられた髪のうちの一本を引っ張ったのだ。
ピンッと張った髪の毛は当然、痛みをルイセにもたらした。

「痛い、痛い。いきなり何するのグロウお兄ちゃん!」

「グロウ様?!」

「なにっていつも通りだろ? 今日はまだルイセの髪を引っ張ってなかったからな」

「もう、グロウお兄ちゃん意味わかんない。カーマインお兄ちゃん!」

そうやってカーマインを呼ぶルイセの声も、いわばいつも通りであった。

「グロウ様、お止めください。ここは家ではないのですよ。みっともないですから、せめて家で」

「ユニ、なんか違うよそれ。痛い、よ〜。やっぱ冷たいままでいいよ。苛められるよりもいいよぉ」

「そっか、じゃあこういうのはどうだ」

急に声の調子を変えたグロウに、ルイセは抱きしめられていた。
カーマインにはよく、自分から抱きついて言っていたが、グロウにしかも向こうから抱きしめられた事は始めてで、ルイセは軽いパニックに陥っていた。

「え?えー!!」

「俺が悪かった。昨晩何があったかは言えないが、俺の態度が悪かったのは謝る。それと、さっきのアイツもすまなかったって言ってた」

「う、うん。解ったから、離して恥ずかしいよぉ」

そう言ったはずなのに決して抱きしめる力を緩めないグロウ。
ルイセが見上げたその顔は、ニヤリと笑っており嫌な予感が駆け抜けた。

「お、カーマイン何処行ってたんだ? どうだ羨ましいだろ」

「え、カーマインお兄ちゃん?! 違うのこれは、グロウお兄ちゃんが勝手に」

「…………グロウ様」

ルイセの顔はグロウの胸元に押し付けられているため見えていないが、実はカーマインはこの場にいない。
ユニの呆れた呟きも新手の苛めにの方法に対してあきれているのだ。
それからカーマインが戻ってきても、グロウのルイセへと苛めは続き、ある意味また嫌われてしまう事となった。
ウォレスが宿に現れたのは、それから間も無くの事だった。





確かにウォレスと言う男は義手をしていたが、それはとても普通の義手とはいえなかった。
精巧に作られた指先に、自由に曲げられる手首と手のひら、金属で出来ている事以外は普通の腕と変わらなかった。
百九十を超えるがっしりとした肉体にそのメタリックな右腕が加わり、厳つさが倍増していた。
ルイセなどはその見た目が怖いのか、カーマインの後ろに隠れるようにしている。

「うむ、さすがサンドラ様が作られたものだ」

渡された魔法の眼を傷跡の残る眼にあわせてはめると、ウォレスは満足そうに言った。
その魔法の眼でさらに厳つさが増したのは、本人が喜んでいるのだから今は言わなくてもいい事だろう。

「本当にそんなんで見えるの?」

「ティピ、お母さんが作ったものだよ!」

「そうだけどさ」

遠慮のないティピの台詞に、少しだけウォレスが笑う。

「ぼんやりと人や物の輪郭が見える程度だが、全く見えなかった時に比べれば段違いだ。これでお前たちは用が済んだわけだが、すぐに王都に戻るつもりなのか?」

「いえ、すぐに戻っても王都に着く前に夜になりそうだから、ルイセも居るからここに泊まるつもりです」

「そうか、それは丁度良かった。実はサンドラ様が直接来ると思っていたから、礼は口で言うつもりで何も用意していない。礼の手紙を書くから届けて欲しい」

「それぐらい構いませんよ。母さんも魔法の眼の付け心地とか感想があれば聞きたいだろうし」

ウォレスの義理堅い言葉に好感を抱いたカーマインは快く承諾する。
どうやら好感を抱いたのはカーマインだけではなかったようで、ルイセもその影から一歩踏み出している。
さらにグロウはとんでもない事まで言い出す始末であった。

「ただし、手紙を届けるかわりに、今晩奢ってくれるんだろ?」

「え、本当?! 一杯食べちゃおっかなぁ。密かに目をつけてたメニューがあるのよね」

「グロウ様、ティピ…………」

「もう、恥ずかしいなぁ」

ティピ以上に遠慮のない声を上げたのはグロウであった。
結局はティピも同意するように声をあげ、ユニやルイセから冷たい視線を浴びてしまう。
だがウォレスはそれほど気にしなかったのか、むしろ嬉しそうに承諾した。

「それぐらいは構わない。誰かと一緒に飯を食うのも久しぶりだからな。遠慮せず食えばいい」

その言葉に礼の言葉が五つ重なった。





「ヤバイ…………食いすぎた」

賑やかな、喧しいほどの夕食が済み、すっかりと世もふけた頃、グロウは壁に手を着きながら宿の廊下を歩いていた。
右手は言葉を補足するように胃のある腹に当てられている。

「本当に食べすぎです。ウォレス様が寛容な方で助かりました。夕飯の値段を見ましたか? 普通なら怒られますよ?」

「だから結局半分は出しただろうが、う……」

「私、胃薬を貰ってきます。ロビーの方でお待ちください」

「頼む」

ふわふわと飛んでいくユニを一瞬だけ見送ると、グロウはゆっくりとその足をロビーへと向けた。
夜の冷えた空気を吸い込む事で少しは胃のもたれが少しは和らいだが、全く足りなかった。
そのうち吐くかもと思いながら歩いていくと、その先のロビーには先客の姿が見えた。
椅子に座りながらテーブルにひじを着いて窓の外を眺めているカーマインであった。
当然のようにティピの姿も見える。

「あれ? グロウ、どうしたの? あー、どうせお腹でも壊したんでしょ。奢りだからって食べ過ぎたバチよ」

「喧しい、ちょっと胃がもたれただけだ。今ユニが胃薬を持ってくる。それでお前はここで何をしてるんだ?」

「音が聞こえたんだ」

端的に応えたカーマインが指差したのは、窓の外、宿の前で剣を振るあの時の剣士であった。
いつからそうしていたのか、一度剣を振るたびに玉のような汗が飛び散っていた。

「少し見れば僕らなんかよりよっぽど強い人だって解る。だけど、剣を振るたびに凄く辛そうな顔をするんだ。気になってね」

「アイツか、何をそんな必死になってるんだ?」

「必死? あたしにはいらついてるからって、闇雲に剣を振り回してるようにしかみえないけどなぁ」

「案外、ティピが一番的を得ているかもね」

剣術なんかわからないとばかりに投げやりな意見を言ったつもりが、意外にも同意されティピの方が驚いていた。

「グロウ様、胃薬を……カーマイン様、ティピ。それにウォレス様まで」

戻ってきたユニが呟いた台詞に、グロウたちは一斉に後ろを振り返り驚いた。
確かに暗がりの中ウォレスの様な体の大きな男に立たれれば驚きもするが、その事に気付かなかった事が大きい。
知ってて一緒に居たのではとユニは首を傾げ、とりあえず胃薬をグロウに渡す。

「ウォレスさんも気になったんですか?」

「ああ、俺は目が見えない分、音や肌で感じる雰囲気に敏感でな。あれほど乱れた気に当てられては大人しく寝てなどいられない。それにあの手の悩みは覚えがあるからな」

それはカーマインやグロウとは違い、すでにあの剣士の悩みを見抜いての言葉であった。
答えを欲する幾つもの視線を前にして、ウォレスは宿の玄関から外へと出て、剣士の下へと歩いていく。

「何をそんなに迷っている」

「迷っているだと?」

ピタリと振り下ろそうとしていた剣を止め、そのまま剣士がウォレスへと振り返る。

「何の信念も持たぬまま何千と剣を振っても何も実るものはない。ただ疲れと苛立ちが募るだけだ」

「私の剣に信念がないというのか?!」

「では、何の為にお前は剣を振る? お前の剣は何を成す為にある?」

「それは…………ぐっ、う、煩い。私の事は放っておいてくれ!」

まさに確信を疲れたのか、屈辱に顔を染めて剣士は逃げるように宿へと駆け込んだ。
その過程でグロウ達のことにも気付いたが、一瞥しただけで自らが取った部屋へと駆け込んでいった。
剣士とは違い、ゆっくりと宿に戻ってきたウォレスを一堂はあっけに取られた表情で見ていた。
一番最初にその状態から抜け出したのは、ティピであった。

「さっすが、年長者の言葉は重みが違うわ」

「そうですね。グロウ様など、無礼を行って結局なにも言えなかったのですから」

「いらん事を言わんでいい。一応謝らせる事は出来た」

ムッとして何とか言い返したグロウを見て、ウォレスはその顔をわずかに緩めた。

「アイツの悩みは、望む望まざるに関わらず強くならなければならなかった者に多い。強くならねばならなかった理由が消えたとき、ふと思う。自分の力はこれからどうすればよいのか。何に対して、誰に対して使えばよいのか」

四人はそれを聞いて、あの剣士が何故あの橋で剣を捨てたのかようやく理解する事が出来た。
理由はわからないが、方向性の見えない剣の道を憂い、断ち切ろうとしたのだと。

「グロウ、それにカーマイン。お前たちも普段から良く考える事だ。何の為に、誰の為に力を振るうのか」

夜が静まり返っていった。

「さて、俺はもう寝る。お前たちも明日、王都まで歩くのならはやめに寝る事だ」

「お休み、ウォレスさん」

「お休みなさいませ」

そう締めくくり部屋へと戻っていくウォレスの背を、カーマインとグロウは黙ってみつめていた。
単に大柄だというのではない、その背中は見た目以上に大きく、力強い事にひそかな憧れを見出していた。

「何の為に、誰の為にっか……考えた事もなかったよ。ただ母さんに言われて、武術をかじって。ただ言われたから」

「今日、ここに居なかったのならいずれ俺達も、アイツみたいに闇雲に剣を振るしかなかったんだろうな」

「ちょ、ちょっとどうしたのいきなり真面目になって?! ものすごく、変よあんた等」

「ティピ、先に部屋に戻りましょう。私たちは今は、邪魔になるだけです」

「あっ、ちょっと引っ張らないでよ、ユニ。なに? なんなのよ!」

再びロビーは静寂が訪れ、投げかけられた言葉を考える二人だけが残された。
何の為に、誰の為にその力を振るうのか。
酷く簡単なようで、答える事は困難な言葉であった。
そんな答えがすぐにでも見つかれば、あの剣士もこんなに苦しまなかったのだろう。
どれ程考え込んでいたか解らないほどに時間がたった頃、カーマインの方が根を上げ考えを中断する。

「ダメだ。そんなすぐには答えなんか出ない。僕はもっと何日も掛けて考える事にするよ。グロウはどうする?」

「俺もだ。今日の所は……ッ!」

カーマインが立つその向こう、窓を超えた先に人影が見えた。
夜の闇に浮かぶ白い仮面と闇に溶けるような薄紫の衣、それが見えたのは一瞬の事でありすぐに消えて、見えなくなる。
カーマインの腕で胸を貫かれて死んでいたはずの、埋めて隠したはずの男と同じ服装であった。
いるはずのない、生きているはずのない男。

「あれは」

「え?」

驚きの顔となったグロウの視線を追ってカーマインも振り返るが、そこには夜の闇しか存在しなかった。
再び怪訝な顔でグロウに向き直るが、すでにその顔から驚きは消えており、いつもどおりの皮肉げな顔があった。

「どうしたの、グロウ?」

「あ、いやなんでもない。こんな遅くまで起きていたのは久しぶりだから、疲れて見間違いをしたらしい。俺は寝る」

隠し切れない動揺に、カーマインは当然の如く気付いていた。





夜が明けて、必ずといっていい程起しに来るルイセが来る前に、グロウは起きていた。
ユニすらもまだ夢の中であるのに、ジャケットを羽織り、ブロードソートを腰に挿す。
その目は鋭く、まるで戦闘を前にした時のように研ぎ澄まされていた。

「考えればすぐにわかる事だった。俺がお袋の研究室で血まみれのカーマインと息絶えた男を見つけた時には、すでに窓ガラスは割れていた。侵入のためと思ったが入り口の番兵は死んで、お袋の魔道書が盗まれた」

昨晩見たのがその盗んだ当人だと考え付くのに時間は掛からなかった。
だがグロウは魔道書を取り返すことよりも、自分が見たものを隠し通す事を選んでいた。
突然人が変わったように常人離れの跳躍力を見せて王都へと向かい、推測だが、素手で人間を殺したカーマイン。
あれ以来それとなくカーマインを見ていたが、いつもどおりのカーマインであった。
いや、いつも通りでなければならない。

「グロウお兄ちゃん、起きてる? 起きてるわけ……」

軽いノックの後に入ってきたルイセは、すでにグロウが着替えすらも済ませていた事に驚き声も出せないでいた。
理解できないままにきょとんとした表情でグロウを見ている。

「よぉ、カーマインは起したのか?」

「え、あっ……ううん。まだだよ」

「なら俺はいいからカーマインを起してこい。ウォレスに手紙を貰ったら早速王都に戻るぞ。 ……どうした?」

言われてもまだ動かないルイセを怪訝に思うが、それも当然かと思わないでもなかった。
ルイセに起されずに起きていた記憶などグロウ自身にもないからだ。

「グロウお兄ちゃんが起きてるなんてびっくりしたから。じゃあ、私カーマインお兄ちゃんを起してくるね」

「いま、ルイセ様の声が…………グロウ様が起きて? え、私、寝過ごしましたか?!」

ルイセが去ると同時に、起きて早々着替えの終わったグロウを見たユニが慌てて起きだす。
その様子がおかしくて、少しだけグロウが笑う。

「俺が少し早く起きただけだ。だが、どちらにせよもう起きろ。揃い次第王都へ行くぞ」

二度目となる説明を行うと、グロウはユニをおいて一人さきに宿のロビーへと向かう。
その後ろでは慌てていたユニが、

「お、お待ちくださいグロウ様。あ、ちょッキャァ!」

ベッドから落っこちた音がしていた。





「しかし、朝飯も食わずに行くとは、急用でも思い出したのか?」

「まあな。アンタにも早起きを強要して悪いとは思っている」

「悪いに決まってるでしょ! なによ、いくら急いでるからって朝ごはん無しはないんじゃない? ほら、アンタもルイセちゃんも何とか言ってやんなさいよ!」

「私はもともとそんなに食べられないから……」

「いいじゃないか。王都についたらティピの好きなもの買ってあげるからさ」

その一言は効果的であったようで、一瞬迷ったが、すぐにティピは上機嫌になりはじめる。

「ほら、ウォレスさん。さっさと手紙出して、早くしないと王都に着くのが昼過ぎになっちゃうわよ! 行動はキビキビとッ!」

「ほら、これがその手紙だ。サンドラ様に宜しく伝えてくれ」

「ああ、わかった」

かなりそっけなくグロウが手紙を受け取るのを見て、違和感を感じたのは渡したウォレスだけではなかっただろう。
得に朝いきなり起きていたグロウを見たルイセなどは、昨日までのしこりが甦ったようにグロウを見ている。

「グロウ様?」

「なんでもない。ウォレス手紙はちゃんと渡す。じゃあな」

返答すら望まぬようにグロウが踵を返して一歩踏み出した時、村人であろう男たちが一行の目の前を通り過ぎる。
ソレだけであるのならば、全く問題はなかったのだが、その会話の内容が問題であった。
酷く困ったように眉間にしわを寄せながら、東の森を見ながら呟く。

「本当に、なんやったんやろうな。気味が悪いよ」

「触らぬ神にたたりなし。しばらく村人には山に近づかぬように言うしかないだろ」

通り抜けるように耳に入り込んだその台詞を聞いて、カーマインがその二人組みを呼び止めたとしても仕方のないことだろう。
だがグロウが確かに舌打ちした事にウォレスは気付いていた。

「あの、なにかあったんですか? 酷くお困りのようですけれど」

「カーマイン、一々そんな事を聞くな。俺は先を急ぐんだ」

「いいじゃないか少しぐらい。それで何かあったんですか?」

「ええ、実はこの村を東から出て突き当たりを北に山に向かうと木こり用の小屋があるんですが、昨晩、さらに一昨日辺りから見知らぬ人がうろついてるのを見ましてね。それだけならまだしも、こそこそと辺りを見渡したり、通りがかる人を威圧的に見たりと気味が悪くて」

「無茶苦茶怪しいわね。犯罪者なんじゃないの?」

「犯罪者……まさか、マスターの魔道書を盗んだ者の仲間では」

なんとも短絡的なティピの意見だが、ユニの付け足した言葉にカーマインとルイセがはっとなる。

「やはり犯罪者ですか?尚の事、近づかないようにと村人に言って回らなければ」

「そうと決まったわけじゃない。ほら、これで気は済んだだろ。王都へ」

「グロウ、おかしいよ。いつものグロウなら、自分が殺してでも捕まえてやるって言うはずだろ?」

「それは……今はルイセだっているだろうが。俺とお前だけならまだしも、ルイセをそんな事に巻き込めるか!」

その台詞に心配してくれるんだとちょっぴり感動してしまったルイセだが、やはり違和感を感じたらしい。
じっと問い詰めるようにグロウを見ると、カーマインもルイセにならうようにしてグロウを見る。
これ以上は無理を押し通せないと感じたグロウに、ウォレスから止めの言葉が図れることとなった。

「お前たちが行くのならば、俺も行こう。なまった体を鍛えなおすのに丁度いい。それにサンドラ様の子に怪我などさせられないからな」

ウォレスの言葉が決めてとなり、村人の為に山の小屋へと向かう事となってしまった。

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