第四話 友達、だからこそ言えない気持ちなの(後編)
「ありがとう、ございました」
 沈んだ声でのお礼の後、管理局本局の医務室を後にしたなのは、駆け寄ってくるフェイトやユーノ、アルフを見てわずかに微笑を見せた。
「なのは」
「検査結果どうだった?」
 リンカーコアを蒐集されて以来、ずっと不調であった魔力がようやく完治し、医者のお墨付きまで貰ったのだ。
 ここで笑顔を見せなければ余計な心配をさせてしまうと、今出来る精一杯の笑顔で迎える。
「無事、完治」
 腕を上げて言葉の意味を強調するも、やはり嘘は通用はしなかったようだ。
 から元気を見抜いたように、アルフもユーノも駆け寄る歩調を緩め、立ち止まってしまう。
 特にあの時その場にいたフェイトにいたっては、なのはのから元気を見抜く以前にフェイト自身の表情が沈んでいた。
 そのフェイトの胸元では、なのはがあかねから手渡されたゴールデンサンが主のもとを離れ、寂しそうに揺れていた。
「フェイトちゃん、アリシアちゃんは?」
「ずっと呼びかけてはいるんだけど、お話してくれないの。あかねに手放されたのが、やっぱりショックだったみたい」
「あのあかねがなのはとの約束を反故にするなんて、ちょっと信じられないよ」
「それだけ、思いつめてたんだろうね」
 実際に現場を見ていないユーノやアルフにとっては、あかねが約束を反故にした上に声を荒げる場面が想像すら出来ないでいた。
 だが想像できないからこそ、それ程までにあかねが思い悩み苦しんでいたことが理解できた。
 辛く苦しい記憶が含まれていたとしても、皆が皆、あかねにあの時の記憶を取り戻して欲しいと思っていた。
 喧嘩したりぶつかりあったりしたけれど、思い出しさえすれば、それは素晴らしい思い出として思い出せるはずだから。
 その願いがいつの間にか、あかねの重荷になっていたなどと誰が思うだろうか。
「でもあかねの奴、大丈夫なのかい。確かジュエルシードの影響でリンカーコアが不安定なんだろ?」
「今までも四六時中ゴールデンサンを身につけてたわけじゃないから、直ぐに体調が悪くなったりとかはしないと思うけれど。一応明日、学校で体調のことは聞いてみるつもり」
 なのはが不安げに呟いたのは、あかねの体調を心配してのみではなく、あかねが自分と喋ってくれるのかどうかと言う不安もあった。
 教室を跳びす直前、あかねは自分のことを以前のように高町と呼び、アリサもバニングスと苗字で呼ばれていた。
 ただし以前は苦手だからと言う理由で壁を作っていただけだったが、今回は明らかに拒絶の為の呼び方であった。
 そして今も鮮明に思い出せるさよならという言葉、あれが単に学校を去るから言われたと言うわけでないことは明白である。
 あかねはこれまで一緒に遊んでいたグループを、抜けるつもりなのだ。
 折角フェイトも加えた楽しい学校生活が送れそうだったのに、そこにあかねがいないのでは意味がない。
 廊下で立ち尽くし、静まり返る中で思い出した様に、もしくは会話の流れを変える為にユーノが言った。
「あ、そうだ。二人とも、今のうちに渡しておくよ。こんな状況だけど、またいつ襲われるかわからないから」
 ユーノがポケットから取り出したのは、襲撃を受けた時に破損したレイジングハートとバルディッシュであった。
 二つとも破損の影は見られず、なのはと同じく完治したことを示すように頭上で輝く明かりをひび一つない綺麗な体で照り返していた。
 修復されたデバイスを受け取り、ほんの少しだがなのはとフェイトに笑顔が浮かぶ。
 それは一時的なもので、時間が経つにつれてまた大きな悲しみに引きずられてしまうことだろう。
 例えそうだとしてもなのはが完治を迎えたこと、デバイスたちがその手の中に戻ってきたことぐらいは素直に喜んで欲しいというユーノの気持ちであった。
「レイジングハート、お帰りなさい」
「Just now. My master」
「バルディッシュも完治、おめでとう」
「Thank you. Sir」
 ほんの少しだがなのはとフェイトが元気を取り戻したところで、ずっと廊下で立ち止まっていた四人に声がかけられた。
「あら、フェイト? 本局に来てたのなら声ぐらいかけてくれればよかったのに」
「母さん?」
 声をかけてきたのは、管理局の濃紺の制服の上から白衣を羽織ったプレシアであった。
 その横には見覚えのない初老を迎えた、精悍な顔つきの男の人が佇んでいた。
「一応アースラの方にも顔を出したんだけど、母さん忙しそうだったから」
「馬鹿な子ね。忙しくても娘と言葉をかわす時間ぐらい、いくらでも作れるわ」
 プレシアの隣にいる局員らしき男性がいるために、ためらいがちに呟いたフェイトであったが、プレシアはかまわずその頭を撫で付けながら答えていた。
 その時、フェイトの胸元で光るバルディッシュではないデバイスを目に入れ、おやっと眉を上げる。
「アリシア、貴方どうしてフェイトのところに」
「お母さん」
「ア、アリシア今はお母さんって呼んじゃ駄目」
 フェイトだけでなく、なのはやユーノ、アルフまでもが、今まで沈黙を保っていたはずなのに、プレシアを前にアリシアが喋り出したことに慌てた。
 フェイトが手のひらの中に宝玉であるゴールデンサンの体を握りこみ、なのは、ユーノ、アルフの順番でさらに手を重ねていく。
 アリシア・テスタロッサがデバイスで生きることになったのは、特に管理局には秘密なのである。
 ロストロギアであるジュエルシードによって、ある意味で人から生まれ変わったユニゾンデバイスであることに加え、初代ゴールデンサンの忘れ形見。
 あかねにとってはなくてはならないもので、管理局に取り上げられるわけには行かない。
 最後に四人でプレシアの隣にいた局員の人へと苦笑いを向けるも、男の人は四人の奇行を楽しむように微笑んでいた。
「落ち着きなさい、貴方たち。この人は時空管理局顧問官ギル・グレアムさん。私の保護監察官で、あのクロノ君の指導教官だったこともある人よ。アリシアのことも知っているわ」
「あのことは多くに触れ回るべきではないとは言え、何もかも隠すことは不可能だ。管理局でも上の方の人間は知っている。とはいえ、軽々しく廊下で話すことでもないな。何処かに会議室ぐらい空いているだろう。プレシア君、そこで君の娘の話を存分に聞いてあげなさい」
「ありがとうございます、グレアム顧問官」
「礼などいらんよ。君ほど手の掛からない保護観察対象などいないからね。楽をさせてもらってこちらがお礼を言いたいぐらいだ」
 それじゃあと言うとグレアムは、未だアリシアを隠すように寄り固まっている四人にかるく手を挙げ去っていった。
 その姿は管理局の高い位にあっても、何処か気さくな雰囲気を見せていた。





 プレシアが小さな会議室を借りてくると、直ぐに全員で移動となった。
 皆で一つの会議机を囲むように座り、机の中央にアリシアたるゴールデンサンの宝玉をちょこんと乗せる。
 もしもゴールデンサンをデバイスだと知らない人間が見たら、少しシュールな光景であったかもしれないが全員真面目であった。
「アリシア、とりあえずデバイスのままだと話し辛いから、貴方の姿を見せてちょうだい」
「私の姿って、誰かとユニゾンしないと宝玉から出られないよお母さん」
 意味がよくわからないと呟くアリシアであったが、何も理解できなかったのはアリシアだけではなかった。
 なのはやフェイト、アルフにとどまらず、知識の塊であるはずのユーノでさえきょとんと目を見開いていた。
 ユニゾンデバイスが余りにも珍しく貴重なために、正確な姿を知るものがこの場にプレシア以外いなかったのだ。
 これはもう少し早めに説明しておくべきであったと後悔しながら、プレシアは言った。
「良くお聞きなさい、アリシア。ユニゾンデバイスとは、インテリジェントデバイスよりもさらに格の高いデバイスなの。知性だけでなく、意識を基にしたより人に近い姿をとることができるのです。貴方の今の姿は本来のものではなく、ゴールデンサンと言うデバイスに宿っているに過ぎないの」
「そんなこと言われても、良く解らないよ」
「貴方、そんな有様でいつもどうやってあかね君とユニゾンしてたの?」
「なんか雰囲気的に、こうすれば出来るかなって思ったら出来てたよ。勘って言うのかな」
 我が娘ながら頭が痛いと、沈痛な面持ちでプレシアはこめかみを押さえていた。
 現在作成できる最高の演算能力を誇るインテリジェントデバイス、それをはるかに上回る演算能力を持つはずのユニゾンデバイスが勘の一言で済ませるとは。
 いやむしろ演算能力が高いからこそ、無意識という離れ技でユニゾンを行うことが出来たと考えるべきであろうか。
 元の姿を取り戻させるにはいっそ外科手術的に切り離した方が早いと、プランを考えそうになったところで考えを止める。
 一度深く考え出したら答えにたどり着くまで止まれないであろうし、今は自分の趣味に走るべきときではない。
「とりあえずこの話は、棚上げにすることにしましょう。それで何があったの?」
 プレシアに聞かれ、答えたのはなのはとフェイトであった。
 アリシアは普段外界の情報を手に入れることは出来ず、気が付いたらあかねの手を離れていたのだ。
 教室で見せたあかねの怒りと、一連の台詞。
 思い出すことが若干苦痛でありながら、その一字一句を間違えることなく二人は説明することができた。
 それだけ衝撃的な内容であり、心に染みこんできていたのだ。
「聞く限り、まるで以前の私とフェイトのようなお話ね」
「母さんもそう思った?」
「ええ、若干の違いはあるけれど」
 教室を出て行こうとしたあかねとの会話から、やはりプレシアも同じ印象を抱いたかとフェイト表情を沈ませていた。
「なのはちゃんやフェイトは、半年前のあかね君が印象強く残りすぎていて、今のあかね君をあまり見てはいなかった。意識していたかいなかったかは別としてね」
「あかね君、言ってました。今の僕はいらないのかって。そんなことないのに、そんなこと思ってないのに」
「でも、誰もそのことを口にしなかった。伝えなかった、そうね?」
 プレシアの確認に、なのはは頷くことしか出来なかった。
 言葉にしなければ伝わらない、それは知っていた。
 だが今とか以前とかではなく、なのはは単にあかねに記憶を取り戻して欲しかっただけで、違いとかどちらのあかねとかは考えたこともなかった。
 当たり前すぎて伝えることはせず、ただ求めるだけで終わりにしてしまっていた。
 あかねならばきっと自分たちが望んだように記憶を取り戻してくれると、気持ちを押し付けてしまっていたのだ。
「少し難しいわね。かなり前からあかね君が疑う気持ちを溜め込んでいたとしたら、今さらどちらのあかね君も関係ないと言っても信じてもらえない可能性もあるわ。ここは一つ、またあかね君のお母さんの力を借りるべきかしら」
「あの人のですか?」
 何処か嫌そうに呟いたのはユーノであり、それは初対面にも関わらずいきなり襟首を捕まれ凄まれたからだ。
 結局あの時の凄みの意味は、あかねの手により闇に葬られたが、ユーノにとってはあまり会いたい類の人ではなかった。
「あの人程、ちゃんと母親をしている人を私は知らないわ。息子であるあかね君のことを、本当に良く見てる。見習いたいぐらいだわ」
「お母さんも、ちゃんとお母さんしてるよ。前にモニター越しに会った時、私が泣いてたの気付いてたもん」
「ありがとう、アリシア。貴方たちは辛いだろうけれど、しばらくあかね君と距離をおきなさい。今無理に関係を戻そうとしても、こじれる可能性の方が高いわ。今夜にでも私からあかね君のお母さんに連絡しておくわ」
 なのはもフェイトもそれで納得して頷いたが、なのはだけはあることに気付いた。
「あのフェイトちゃんのお母さん。リンディさんもあかね君のお母さんと連絡をとってたようなこと言ってましたけど、良いんですか? そのうち魔法のこととか、ばれちゃうんじゃ」
「その心配は不要よ。あかね君のお母さんには、あかね君が記憶を失った時にちゃんと全て話してあります。あかね君が何をしてきて、どうなってしまったのか。もちろん私が、一度はあの子の腕を吹き飛ばしたことも」
「そんなことまで、母さん何も言われなかったの?」
 まさかそんな細部にまで、むしろ最も非難されるであろう事柄までも伝えていたのかと驚かざるを得なかった。
 卑怯な考え方かもしれないが、話さなければあかねが記憶を失ったことだけが非難の的になったはずだ。
 プレシアはあかねの母親ばかり褒めているが、相手の一人息子を傷つけた事実を伝えたプレシアも同様に、立派であるとフェイトもアリシアも思った。
「あかね君は、自分が理想とする父親の姿にいつか潰される。そう伝えた自分の言葉であかね君を守りきれなかったけれど、あかね君が望んだことを成して、その結果であるなら仕方がないって。左腕も元に戻ってるのなら問題ないと、笑って許してくれたわ」
「人は見かけによらないもんね。あの人がねえ」
「少し話がそれてしまいましたね。あかね君のことは一先ず、私とあかね君のお母さんに任せておきなさい。なんとか誤解を解いてみるわ」
 自分の手で誤解を解けないのは残念だが、自分たちでは話がこじれると言われた以上、任せるしかなのはたちにはなかった。
 そしてアリシアについては、渡されたなのはが持っておくことになった。
 これはプレシアの助言であり、手放したとは言ってもあかねが気にしている可能性もあることから、なのはが持っているべきだというのである。
 今出来るだけの助言を受けたなのはたちは、転送ポートを使い地球へと戻っていった。





 なのはたちが転送ポートを使い本局を離れてからしばらく後の頃、海鳴市上空では緊迫した光景が繰り広げられていた。
 背中合わせで浮かぶヴィータとザフィーラ、二人を中心に取り囲むように円陣を組んでいるのは管理局の武装局員たちである。
 今はまだデバイスを突きつけられるような明確な行動を見せていないものの、彼らの目的は今さら考えるまでもない。
 囲まれた状況で何処か抜け出す隙はないものかと見渡すザフィーラの背中で、口惜しげにヴィータが呟いていた。
「くそ、あいつが来てるって聞いて急いで帰りたい時に」
 局員が近くにいる為に、個人名は伏せて呟いたヴィータの呟きはザフィーラにしっかり届いていた。
「だから慌てるなと言ったんだ。奴らが本腰を入れてきているのは先刻承知、慎重に動くべきだ」
「う、うっせーな。見つかっちまったもんはしょうがねえだろ。こんなちゃらい奴ら、さっさと片付けちまおうぜ」
 ヴィータの言う通り、取り囲んでいる武装局員の数は十人。
 その魔法資質はこれまで倒してきた局員となんら変わりはなく、突破すること事態はそれほど難しくはない。
 だが本腰を入れているであろう管理局が、無駄に犠牲を払う様なこんなやり方をするのかザフィーラには疑問であった。
 それに目の前の武装局員たちはデバイスを突きつけることすらせず、数で勝りこそすれレベルの違う相手を前にした緊張感が何処か薄かった。
 緊張感がないとまでは行かないが、それが通常に比べ薄い。
「返り討ちだ」
 答えは、ヴィータがグラーフアイゼンを掲げ戦意を見せた時に明らかとなった。
 円陣を組んで取り囲んでいたはずの武装局員たちが一斉に距離を取るように下がったのだ。
 いぶかしむ間もなく、ザフィーラは上空にて増大する魔力を感知して言う。
「上だ」
 促されるままに見上げたヴィータは、頭上にて展開されるミッド式の魔法陣と、生み出された何十と言う魔力の刃に目を奪われた。
 自分どころかザフィーラにまで気づかれずに、ここまで大きな魔法を使うとは並大抵の相手ではない。
 これまで自分たちを取り囲んできた十人にも及ぶ武装局員たちは全て囮、気付いた時にはもう遅かった。
「スティンガーブレイド、エクスキューションシフト!」
 これまでとは明らかに格の違う少年が指令を下し、全ての魔力の刃が一斉に二人に狙いを定めていた。
「撃て!」
 最後の指示により一斉に放たれた魔力の刃たちは、とてもかわしきれる数でも、なぎ払える数でもなかった。
 今回ヴィータがザフィーラと組んでいたのは幸運であった。
 守護騎士の中で一番防御に優れるザフィーラがいることで、ヴィータやシグナムにはない第三の選択肢が生み出されていた。
 ザフィーラが迫り来る魔力の刃たちに向けて手の平を向け、防御魔法による障壁で二人を包み込んだ。
 次々に障壁に弾かれていく魔力の刃であったが、弾く数よりも着弾していく数の方がどんどん増えていく。
「ザフィーラ」
「動くなヴィータ。これしきの攻撃魔法」
 呟いた次の瞬間、光と音が二人から視覚と聴覚を全て奪っていっていた。
 煙が晴れた時にヴィータが目にしたのは、先ほどの攻撃がザフィーラの防御を上回っていたことを示す光景であった。
 自分を庇うように前に立ったザフィーラの腕には、数本の魔力の刃が突き刺さっていた。
 ザフィーラの防御を真正面から力押しで打ち破る、ヴィータの記憶の中でも片手で数えられるほどしかないものであった。
「大丈夫か、ザフィーラ」
「この程度でどうにかなるほど、やわじゃない」
 そう呟き突き刺さった魔力の刃を振り払うザフィーラであったが、ダメージが皆無であるはずがない。
「上等」
 自分のミスから起こった敵の襲撃、今は謝罪すべき時ではないとヴィータはあえて鼓舞する様に好戦的な言葉を発して攻撃してきた相手を見上げ睨みつけた。
 少年の方も、予想以上に少ないダメージに気を引き締めた様子であった。
 久方ぶりに全力での戦闘が必要かもしれないと思ったヴィータであったが、少年の瞳がふいに自分たちから外れるのを見た。
「なのは、フェイト」
 何時互いに隙を付いて攻撃してもおかしくない状況で何を考えているのかと思って同じ方向を見て、舌打ちを打った。
「あいつら!」
 ヴィータが見たのは、本局の移動中に急遽エイミィから敵発見の知らせを聞いたなのはとフェイトであった。
 ビルの屋上にて並び立つ二人は、以前の戦闘にて受けた敗北に対して気負った様子は見せていなかった。
 ただ若干の戸惑いの様なものは見て取れたが、些細なものである。
 その二人が手に持つデバイスを高々と掲げ、叫ぶように起動の声をあげていた。
「レイジングハート・エクセリオン、セットアップ」
「バルディッシュ・アサルト、セットアップ」
 全力だけでは足りないと、今この場にシグナムが、そしてシャマルといった守護騎士全員の力が必要だと、ヴィータは直感的に感じていた。
 だがこれから起きる出来事は、そんなヴィータの想像を遥かに超えたところにあった。
 守護騎士の全員が一番恐れる事態。
 それが起ころうとは、ヴィータやザフィーラだけではなく、この場にいる全ての人間に予測は不可能であった。

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