悠久幻想曲  月と太陽と

 

                        嘘をつくことはいけないことです

 

                   でも時に嘘をつくことで人を救うことができます

 

                       たとえソレが一時の幸せであっても

 

                   でも私がつく嘘は誰も幸せにすることはありません

 

                       ただただ私自身を傷つけるものだから

 

                          ーアリサ・アスティアー

 

 
                                              
悠久幻想曲
 
                第九話 嘘
 
「目薬茸」
聞いたことがあるのか疑問系ではなく、確認するようにアリサが呟く
「なんかそれが天窓の洞窟ってとこにあるらしくて、次の休みに行くみたいですよ」
目薬茸とは字のごとく目を治す薬でトリーシャが何処からかエンフィールドの近くにあるという情報を聞
きつけてきて、明日あたり採りに行くらしい
「それがあればご主人様の目が治るッスか?」
「さあな、俺は医者じゃないからわからん」
テディが小さい声で冷たいッスと言っているが本当のことだ
「それでアスカ君もいくの?」
「近いって言っても山の洞窟ですからね、一応」
最初はリサやエルもついていくらしく護衛の必要も無いと思ったのだが、行かないと言った途端大ブーイ
ングをくらいしぶしぶ了解したのだ
「そう、気をつけてね。私これからちょっと出かけてくるから二人は先に寝ていていいわよ」
「これからッスか?」
「ちょっとそこまでだから大丈夫よ」
目の不自由なアリサでなくてもすでに外出するような時間ではない
だが制止する間を与えずそそくさと外へ行ってしまった
「何かあったッスかね?」
「さあな、でも帰ってくるまでは起きてるぞ」
この後アリサは一時間ほどで帰ってきた
 
 
 
 
「まあよくよく集まったもんだ」
日曜の朝集合場所のジョートショップに集まったのはアレフ、シーラ、パティはもちろん学生組みクリス
マリア、シェリル、トリーシャそして護衛のエルとリサさらにピートとメロディ
「それだけアリサさんが慕われてるってことだよ坊や」
「アルベルトの奴も自警団連中引き連れていくって聞いたよ」
リサの発言は前から知っていたことだがエルの発言がアスカにはありがたかった
「アルベルトも行くってなると・・リサ、エル耳貸して」
アスカはエルとリサを呼び寄せると他のみんなには聞こえないように相談をはじめる
 
「っと言うわけで保護者との相談の結果、三つの班に分かれて天窓の洞窟まで競争するぞ」
アスカの発言は本当にエルとリサとの相談の結果なのだが、みんなの反応は賛否両論のようだ
「みんなで一緒にって言うのはいけないんでしょうか?」
「そうだな女の子は多いほうが楽しいぞ」
「ただたんに行ってもおもしろくないだろ、それにこれだけ大人数だと絶対どこかで目が届かなくなるか
ら最初っから少人数に分けるって意味もあるぞ」
アレフの意見は無視だがクリスの意見もアスカには予測済みだった
もっともな意見にお〜っとみんなが唸るが一応隠しておいた意味もある
わざわざ言うようなことはしないが
「それで班分けはどうするんだ?」
「落ち着けアレフ、ちゃんと考えてある」
班はそれぞれ保護者一人に被保護者三人で構成されている
一班がアスカ保護者にアレフ、パティ、シーラ
二班がリサ保護者にピート、メロディ、マリア
三班がエル保護者にクリス、シェリル、トリーシャ
班員の相性も若干考慮されている、特にマリアとエルあたりが
「特に意見がなければ班に分かれてとっとと行くぞー」
アスカのいいかげんなスタートの合図で目標の天窓の洞窟を目指しそれぞれの班がスタートをきった
 
 
スタートをきって一時間半といったとこえろか最初は山道の風景などを見て楽しんでいたアレフ、パティ
シーラだがそろそろ疲れが見え始め最初よりは言葉が少なくなっている
「おーいアスカ、今どれくらいだ?」
たまりかねたアレフがアスカにゴールまでの距離を聞く
「もう半分は過ぎてるし、ちょっと休憩入れるか」
アスカの言葉に三人とも助かったと言う顔をして地面に座りだす
三人とも少し汗をかいているがアスカだけはなんでもないような顔をしている
「前から思ってたけどタフだなお前って」
「旅してりゃ一日の大半が歩きだからな、慣れだ」
慣れだけで山道を息を切らさず歩けるのかは怪しいがこれまでどんな足場の不安定なところでもアスカが
バランスを崩すようなことは無かった
「アスカ君ってどんな所旅してまわって来たの?」
「そういえば聞いたこと無かったわね」
「どんなって言われてもな・・大きな図書館があるところとか遺跡とかかな」
「お前っていっつも本読んでるもんな、もしかしてエンフィールドでカッセルじいさんの次に物知りなん
じゃないか?」
「知ってても役に立たないことのほうが多いけ」
言葉の途中でアスカが後ろに振り向く、アスカの後ろは道はなくただ森が続くだけだ
三人は不思議そうにアスカを見るだけだが特に森に変化も見られない
「どうかしたのか?」
「どうってわけじゃないけど、誰かいたような」
言われて森の中を方々見渡すが誰かがいるような不自然さは見当たらない
「まったくどういう感してるんだお前は」
確かにさっきまで人がいたようには見えなかったのにガサガサと茂みを掻き分けてシャドウが現れた
自分でも見つかったのが以外だったようで言葉に表れている
「なんとなく何だけどな、それより何やってんだお前?」
「お前の邪魔しようと隙うかがってたんだよ、台無しになったけどな」
不機嫌そうにシャドウが言うがアスカはそんなことかと言う感じでため息をつく
「台無しじゃないわよ!何でアンタはそういうことしようとするの!!」
「なんだ?誰だアイツは」
「アレフ君あの人はね・・」
パティが怒りの声をあげるなかシャドウを知らないアレフは混乱している
「まったく無駄足だ、今日はもう帰るか」
そう言ってさっさと帰ろうとするシャドウ
「あ・・そうそう、天窓の洞窟だっけ?あそこって最近誰かが目薬茸を守るために罠はったらしいぞ」
「そっか忠告わざわざ悪いな」
シャドウの去り際の台詞を几帳面に返すアスカ、よくよく関係のわからない二人である
「って何和んでるのよ!」
「シャドウのなんてほっといて先を急ぐぞ!誰かが先に洞窟に入ったらアブねえ」
「アスカ君、はやく!」
「んじゃ、休憩はお終いっと」
重そうに腰を持ち上げるとさっさと走っていってしまった三人を追いかけ走り出す
なれない山道を走ったせいか結局三人はアスカに追い越されることとなる
 
 
「どうやら一番乗りっぽいな」
洞窟を覗いてみたが大人数が入ったような足跡はなく、言葉どおり最初にアスカの班がついたようだ
「ぜ〜ぜ〜、タフとかじゃなくて・・異常だよその体力は」
「走って・・きたのに・・息もきれてないわね」
「はぁはぁ・・しゃべれない」
途中休憩をとった意味がほとんどなくなるぐらいに三人はバテバテである
山道を走ったら普通はこうなるのだが
「しょうがねえな〜、ちょっと洞窟の罠みてくるから後から他の班がきたら事情を説明しといてくれ」
山道を走ったばかりだと言うのにアスカは休むことも無くまた天窓の洞窟に歩いて入っていく
「・・りょうか〜い」
返事ができたのはアレフだけのようだ
 
 
「若いくせにだらしねえなあいつらは」
『お前についてこれただけマシだ、並みの体力ではついてくることすらできないだろう』
ブラッドの言葉はもっともで最近一番アスカの仕事を手伝っているのはあの三人で、そこらの若者よりは
体力がついてきている
それでもついて行くのが精一杯と言うことはアレフの言うとおりアスカの体力が異常なのだ
「なにも無いな、罠って脅されただけか」
どんどん奥に進むがこれと言って矢が降ったり落とし穴があったりもしない
『アスカお前は罠に対する知識があるのか?』
「あるわけ無いだろ、俺の知識は魔法関係に偏ってるって知ってるだろ」
アスカは自分の言葉に考えさせられる
罠と言うのは普通見えないように仕掛ける、つまり自分には見つけられるはずが無いと
「しまった!」
アスカがしょうも無いミスに気付き洞窟を出ようと走り出した時、大きな爆発音が洞窟内に響く
いそいで入り口に向かったが時は既に遅くたくさんの岩で塞がれてしまっていた
『閉じ込められたか』
「あ〜やられた、どうせ罠仕掛けたのシャドウだろこれ」
罠と言うものは侵入者を追い返したり撃退するのが目的だが、これはあきらかに洞窟内に閉じ込めるのが
目的だ
元々シャドウはアスカに近づくつもりで、自ら姿を現す前にアスカに見つけられただけなのだ
「こりゃ困ったな・・魔眼でふっとばすか?」
『吹っ飛ばしたところに三人がいたら巻き込まれるだろう、それに上からさらに岩が降ってくる可能性も
ある』
一瞬アスカの右目が赤くなるがブラッドの言葉にひきとめられいつもの黒色に戻る
「諦めるか、奥に行って出れそうな所さがすぞ」
『それしかない様だな』
入り口がふさがれたために真っ暗だったが次第に暗闇に目が慣れ歩き回る分には困らない程度になっている
アスカはとりあえず、奥へ奥へと歩みを進めていくことにした
 
 
その頃外では、爆発音に気付いたアレフ達が天窓の洞窟の入り口までやってきていた
「ちょっとこれ何よこれ、入り口がふさがれちゃってるじゃない」
「アスカの奴もしかしてひっかかったのか?」
「アスカ君もしかして中に?」
目の前は人力ではとても動かせそうに無い大岩の大群
いるであろうアスカに対して叫ぶことしかできないことに無力感がつきまとう
「叫ぶだけじゃ駄目だ、エンフィールドに戻って自警団呼んで来る」
そう言ってアレフは一目散に山道を駆け下りていく
「パティちゃん私たち・・どうしたら」
「待つしかないわ、それしかできない」
二人にできるのは待つこと、そしてアスカの無事を祈ることだけだった
 
 
「霊水ゲットー」
「目薬茸ゲットー」
「でも出口がなーい」
ちゃっかり目薬茸とその材料である霊水を手に入れたのはいいが肝心の出口は見つからない
途中天窓の洞窟と言う名の由来である天窓があったが壁が垂直でそこまで到達することができなかった
「これは本気で困ったな」
『やはりさっきの天窓からでるしか方法はないのでは』
「そうは行ってもあの天窓十数メートル上だぞ、ジャンプもとどかなかったじゃねーか」
一応壁を攀じ登ったりジャンプしたりと脱出は試みたのだが、壁は垂直でさらにコケですべり、ジャンプ
は五,六メートルが限界でそれ以上は無理だった
「それにあの天窓狭くて出れないぞ絶対」
『出れない割には悲観的にはなっていないのだな』
どうもブラッドから見てアスカは危機感が足りない、絶対出れるような確信があるように思われる
「ブラッドが前にシャドウから『大部分敵だが最終的には味方だ』って聞いただろ」
ブラッドが伝えろと言われたのは敵の部分だけなのだが一応会話のほとんどを伝えてある
「シャドウって俺を殺すつもりは無いんじゃないかな?、だからどこかに俺の脱出できる方法があるはず
なんだ」
それは確信以上、まるで相手の考えが読めるほどの事実
「でもなー、入り口は魔眼で壊せない、天窓は届かない」
あっとアスカは何かを思いついたように天窓があるホールまで走り出す
「これなら出れる」
出れる事は出れるがその結果は下手をすれば大怪我ではすまないだろう
『で・・どうするのだ?』
「魔眼で俺自身を吹き飛ばして天窓まで跳ぶ」
アスカの考えは意外と単純で一度天窓めがけてジャンプし、その後地面めがけて魔眼を使い爆熱で自分を
外まで吹き飛ばすのだ
『できないとは言わないが・・運まかせだな』
「このままウロウロしてるよりはマシだ、山の夜は冷えるしな」
言い終わると同時にアスカは何の躊躇もせずジャンプする
そして地面を確認すると右目が赤くなり一気に力を放出する
「南無三」
 
 
「お〜い、パティにシーラ!何か変化はあったか?」
アレフがようやくエンフィールドから自警団を引き連れてやってきた
「何も無い多分アスカはまだ」
中にとパティがいおうとした瞬間天窓の洞窟内から入り口ができた時以上の地響きがしかも連続で起こり
出す
「あんたたち急いで入り口から離れな岩が崩れるかも」
リサが入り口に近づいていたみんなを急いで離れさせる
天窓の洞窟を見守っていると山のほぼ頂上、人では登れそうに無いようなところから土煙が上がっている
そして爆発したかと思うと何かが飛び出すとそれは森の中に落ちた
「もしかしてアスカ君?」
「シーラ行くわよ!」
「あ、ちょっと二人とも待ちなさい」
二人は誰の制止も聞かず駆け出す、今のがアスカだと願って
 
 
「ようシャドウ、なんとかなったみたいだぞ」
「命拾いしたな・・」
アスカが落ちた先ではパティでもシーラでもなくシャドウが一番最初に訪れていた
「そういう風になるように計算してたんだろ」
シャドウは答えない、ただ黙っているだけ
「何か言うことは?」
何も言わずにシャドウはアスカの元を去っていった
「なんでだろうな、わかんねーや」
アスカは気付いていない、何時もは誰が何をしようと深く考えずにめんどくさいで済ますのだが、シャド
ウに関しては何故どうしてと考えていることに
シャドウと言う存在を酷く気にかけていることに
 
 
 
アスカは結局全身火傷に切り傷擦り傷とそれぞれの傷は軽いのだが傷が多すぎるため軽い入院となった
「アリサさんこれ、目薬茸の薬」
ドクターにつくって貰った薬をお見舞いにきていたアリサに渡す
「ごめんなさいねアスカ君、私の為にこんなことになって」
直接の原因ではないのだがやはり気になるのだろう、そもそも目薬茸を採りにいかなければと
心底すまなそうに謝っている
「たまたまですよ、ちょっと荒っぽい脱出しただけで」
アスカは脱出方法は爆薬を使ったと嘘をついたがたぶんリカルドあたりにはバレているだろう
「ご主人様せっかくアスカさんが採ってきてくれたッスから飲むッスよ」
「そ・・そうね、それじゃあ」
目薬茸の薬は液状で一見まずそうである
一気に飲み干したアリサはきつく目を閉じていた状態からゆっくりと目を開く
「見えるッスか?」
「ごめんなさい・・駄目、みたい」
「アリサさんが謝ることは無いよ、元々先天的な人には効かないんだし」
その言葉にアリサとテディがえっと驚く理由は違うのだが
「そう・・知ってたんだ」
「それじゃあご主人様に効かないのは当たり前ッス」
「ちょっとごめんなさいね」
残念そうにしているテディを置いて病室を出て行くアリサ
「どうしたッスかねご主人様」
「さぁ?」
 
 
アリサはアスカの病室を出た後真っ先にトーヤの元へ向かった
「トーヤ先生・・すみませんでした、こんなこと頼んで」
「俺は患者の意思を組んだだけだ、治りたいと言う意思の無いものを治す気も無い」
アリサの謝る姿をみても冷たい一言で返すトーヤ
「忘れられない十字架を背負ってる奴の気持ちはわからないでもないからな」
「忘れられない十字架・・」
アリサが呟いたのを見るとトーヤは机の引出しから一つのビンに入った薬を取り出す
「アスカが採ってきた目薬茸でつくった本物の薬だ」
「私にどうしろと?」
「知らん、飲むなり捨てるなり好きにしろ」
薬ビンをうけとるとアリサはそれをじっとみつめ考え込む
「だがこれは覚えておけそれはアスカがお前の為に採ってきた薬だ」
アリサは結局飲むことも捨てることもできずにそっと家にしまっておくことにした