[Eternal Flame]



 1/23

 今日も、依然米田の行方はつかめない。同時に桃木の行方も不明で、刻(とき)だけが無駄に、そして一定的に過ぎる。

 昨日、木塔が負傷した。

 胸に負った傷は深くはないが、限界まで圧迫された木塔のストレスが招いたものだ。今俺達は無理を承知で四階にいる。二人の焦る気持ちを抑えることも出来ず、実力もつかないまま上の階に上がったとたんのことだった。

「くそ・・・くそぉ・・・」

 そう呻く木塔を治療し、家に送ることしかオレには出来なかった。





 2/3

 この頃になると、クラスの人間どもは桃木千秋の話をしなくなった。どこでどう広がったか知らないが、アホ(担任=桃木千秋)が先月はじめから立て続けの起こる事件に巻き込まれたという噂が回っているのだ。その噂は全く正しく、それに対する行動もごく普通の行動だった。所詮は好きと言うだけで、赤の他人。下手に足を突っ込み事件に巻き込まれるなんて、馬鹿げている。当然の反応だ。全てが無かったように振る舞っている。

 しかし、そんな振る舞いは木塔をよけいに苛立たせた。

「強く・・・強くなりてンだよ、くそ・・・」



 オレを含め三人は今、学校の屋上にいた。

「・・・・・・」

「ムカつくぜ、なんだあいつらのあの態度。あんなに慕ってたのによ」

「木塔君・・・」

 夕日が眩しい。真っ赤な夕日だ。まるで血の色の夕日が、三人を照らす。

「信じらんねえ。あんな見かけだけの、表面だけのつき合い・・反吐が出る!」

 空気が冷たい。そう言えば昨日は、雪が降っていたっけな・・・

「ウラベ・・・なんでテメエは、こんなに落ち着いていられるんだ・・・?」

 木塔が羨ましそうにオレに言う。そこには妬みと、尊敬と、苛立ちと、失望と、悲しみがほんの少しずつ混ざったような・・・・そんな枯れた声が聞こえた。

「・・・・・」

「お前も、アイツらみたいに『表面だけ』なのか?」

「・・・・・」

「木塔君、そんなの酷いよ」

「・・・・悪い」

 根倉の言葉にうなだれた木塔。胸の前に拳を作り、悔しそうにその拳を見ている。

(冷静・・・・?)

 違う。そう言うモノじゃない。オレの問題はもっと別の所にあるんだ。

「木塔・・・フィネガンが死んだ。そうだな」

「あ?・・あ、ああ」

「オレの、復讐も死んでしまった・・・」

 そうだ、もう強くなる意味も、無理して生きる意味もない。

 こんな腐った世界を生きる意味なんて、無い。

「でもよ、桃木センセーが危ないんだぜ!?いつ死ぬか分からないんだぞ!」

「・・・・ああ」

 それがどうし・・・

「お前の母ちゃんと同じ末路になっちまうんだぞ!!」



・・・・・・・え?



「な・・何言って・・・木塔君・・」

「あ、ああ・・!す、すまん!すまんウラベ!すまねえ!」



・・・・・・・・・桃木千秋が、母さんと同じ死に方。

「米田は、オレの母さんを始末するように仕組んだ真犯人・・・・」

 しかもよりによって、あんな頭のイカれたジャンキーに抹殺を指令した人間。

「桃木もあんな死に方・・・あり得る・・・散々悪魔を使って桃木を弄んだ・・・!」



「ウラベさん、落ち着いて・・・木塔君のバカ!」

「ウラベ冷静に、・・・おい!」



 すべての元凶・・・そうなることを知っていながら、わざとあんなものを母に向かわせた指令・・・

 ・・・・・・ユルサン・・・・・・



「木塔、お前の言葉で目が覚めたよ」

「え?」

 そう、目が覚めた。本当に殺さなければいけない人間は、フィネガンではなかった。

「オレが殺すべきは、米田だ」





 2/20

 一年最後のテスト、学期末テストが始まった。日夜訓練のせいでろくに勉強が出来ないオレらは、その全てをカンニングした。八つ当たりで戦っていたオレに、オレの陰気な魔気に親近感と畏怖を覚えたのだろう、新たな仲魔が加わった。悪霊・紫カガミだ。力は分散されるがその体を無尽蔵に増やせれるその悪魔は、全ての魔法や術を反射する全長1メートル程はある巨大な手鏡だった。紫の枠に飾られたその鏡を覗くと中から薄気味悪い女の顔が浮かんでくるが、慣れればどって事はない。

 文系の答えはナイトストーカーに任せ、理系は紫カガミの分裂による多重反射を利用してのカンニングを利用した。

 もう後味が悪いだの、楽して点が稼げるだのを言っている余裕もなかった。毎日が四階での戦闘による疲労は、常に二人を限界に追いつめる。二人とも遅刻が目立っているが休むこともない。

 二人は常に戦い続けた。





 3/2

 二人に武器を与えた。木塔には鞭、根倉には大鎌を。それぞれに合った、短所を補うための武具だ。

「木塔は破壊力のあるグローブの方が、確かになじみやすい。しかし独走するお前には鞭のほうが似合う。技術は要するが、常に相手の間を取りつつの戦いが今の木塔に重要だ」

「・・・・・」

 木塔は無言で頷いた。

「根倉、おまえの大鎌は相当な技術や間合い、それに敏捷性がいる。でも根倉の本来の持ち味がソレだとオレは思う。魔気の一種であるライトニングは、防御が高い代わりに攻撃性が全くない。その大鎌の破壊力は、そんなお前をきっと助けてくれる」

 根倉はその自分の身長をも越えそうな鋭い刃を見ている。そり刃でも、二メートルほどはある。

「う、ん。出来るだけガンバる」

「ああ。二人ならきっと使いこなせる」

 シーアークの二階で武具を渡すと、二人とも練習にはいる。もはや短時間で強くなることは出来ないと悟った二人は、自分に見合った武器を望んだ。そしてこれから米田が見つかるまで、この武器の鍛錬に励むことになった。

 この武器はオレが六階以上の敵から得た戦利品を、永煌石のオーナーに頼んだものだった。ちなみにアマツミカボシの呪いが無くなったのをオーナー代理でありである香夜さんが知ったとき、その丸一日まったく(仕事に)手が着かなかったらしい。

「その日は激しく愛を語っちまったゼ、もちろんベッドの中でな」

 ずいぶん上機嫌でそう言ったオーナーは、どこか優しそうだった。



 −−米田が見つかる、その日まで−−



 二人はその日を望んで自らの武器を振るった。自分のレベルに合わない武器を、その多大に自らの魔気を吸い取る武器を。

 米田から桃木千秋を奪え返す、そのためだけに。



 しかしまさか、その『日』がすぐ近くまで迫っているとは思いもしなかっただろう。

 あの米田との、悲しい決戦が。









 卜部 凪 Lv 49 ITEM・不詳の刀 ・赤いスカーフ ・D−ショック

                 ・シルバーアクセサリー ・アナライズ・アイ

・暗黒剣レーヴァテイン ・ドリー・カドモン

                 ・リム

  力  25(50)  生命エネルギ 800(4000)

  速力 26(49) 総合戦闘能力 750(4130)

  耐力  8(15)  総悪魔指揮力 53%

  知力 10(16)   悪魔交渉能力 33%

  魔力  3 (5)

  運   1 所持マグネタイト数 4200



 仲魔 ・妖精ヴィヴィアン L.v 40

    ・堕天使ビフロンス 34

    ・魔獣カソ 37

    ・聖獣ヘケト ?

・破壊神トナティウ     38

    ・鬼神フツヌシ       53

    ・外道ナイトストーカー   13

・怪異ムラサキカガミ    49



2/(−) 完