[ESCAPE]
「いくぞ！」
かけ声と同時に車から飛び出した俺達は、寮の出入り口へと向かった。
「あ・・開いてる」
「よし、中に入るぞ」
そのまま中に入ると全力で階段を駆け上る。目指すは最上階である四階の渡り廊下だ。
どうやら突然のことで手が回らないのか、警備の『け』の字も感じない。難なく四階の渡り廊下前にある、大広間のある食堂に出た。
まずは、一安心か。
「木塔、次はお前の番だ」
「わ、わかった・・」
ケータイＣＯＭＰを起動させ、特定のボタンを押す。それが木塔の召喚方法だ。
「う・・おお・・来る来る来る来るう！」
木塔の気が地べたを這い、そこから大きな翼を持った蛇が現れた。
「だ、大丈夫・・だよな」
その蛇は地面をはい回りながら、じっとしている。ときたま木塔にばかでかい顔を近づけるかと思うと、また意味もなく地面に体をこすっている。おかげで食堂内にあるイスや机が、爪楊枝（つまようじ）を折るようにポキポキと折れていく。
「根倉、お前も召喚しろ」
「う、うん、ヴァルキリー、出て！」
もともと霊体まで進んでいた妖魔の召喚は、実に早く終わった。
「じゃあ、おれもそろそろ・・・」
ＭＤプレイヤーを握りしめ、魔気を高めた。
「ビフンロスにヴィヴィアン、それにトナティウよ・・・オレに力を・・・フツヌシノミコト・・・汝の守護を我に・・・・・」
そう言って魔気を込めると、実に早く三体は召喚された。
「よし、いくぞ・・・と、その前に、赤マントを・・・」
木塔に近づきスカーフに力を込める。するとそのスカーフはマジックのように大きくなり、木塔を包んだ。
「う、うあ、なんだあ！」
「赤マント、今回はオレじゃなくこの二人を守ってくれ。頼んだぞ」
マントにもだえる木塔を横目に、問題の渡り廊下へと向かった。
「ねえ、木塔君、このマントなんかカッコいいね」
「お前もそう思う？いや、オレも最初は驚いたけど・・・なんかカッコイイよな」
「そうだよね。それにウラベ君マグネタイト使ってないのに、三体も仲魔を呼び出すんだもん」
「三体じゃない。正確には五体だ」
「うそ、どこ・・」
「剣を持っているのが妖精ヴィヴィアン」
「お初にお目にかかります」
「ドクロをかぶっているのが堕天使ビフンロス」
「主に参謀役を。年寄りは戦闘が苦手ですので」
「バカでかい盾を引きずっているのが破壊神トナティウ」
「オオヲヲ・・・」
「いま木塔の首に巻き付いているのが謎の悪魔赤マント」
「げ！これ悪魔かい！」
「・・・・・・・・」
「そして、最後にいま姿を隠している八本の剣が、鬼神フツヌシ。計五体」
「うわあ、すごい」
「なんか、キＯロウみたいだな」
「・・・・・・・」
「た、たしかに・・・」
「悪魔見つけたら髪が立ったりしてな」
「・・・いっそのこと悪魔に生まれたかったよ」
・・・・・・・・・・・
「なあなあ、オレのホヤウカムイとお前のその女、どっちが強いんだような」
「ちょ、やめてよそう言うの・・って、キミも剣を構えちゃ駄目！」
「なあ、ウラベ。どっちが強いと思う？絶対オレのヘビ君の方が強いと思うぜ？」
「百パーセントヴァルキリーが勝つ。間違いない」
「そんなはっきりと・・」
「ヴァルキリーは対魔獣線に鍛えられている。能のない打撃や付け焼き刃の技では返されるのがオチだ。一対一でヴァルキリーに勝てる悪魔は、この中じゃ・・・破壊神トナティウぐらいかな」
「そんなに強ええの？とこでふと思ったが・・・そんな悪魔を何で根倉が従えているんだ？オレはたまたまＣＯＭＰの中に入っていたからだけどよ・・・」
「え、えとね、それは・・・」
「シーアークの十階でナンパしてた。怪我をして落ち込んでいたいた所をつけこんでな」
「な、なにい！悪魔相手にナンパしてたのか！」
「ち、ちちちちちっちち違うう！」
「大事な馬が死んでしまって傷ついてたところを、けなげに励ましてね。それがヤツの狙いだとは知らずに・・・」
「ネークーラー！サッテイだお前、もう最悪だ！」
「違うよ、違う！ぼくはただ怪我していたから、治療していただけなのに・・・」
「戦うことしか知らない女に、優しさという暖かさを教えてくれた。男の涙に女は弱い、か。その恩を返すという名目で仲魔になったが・・・なかなかのテクニックだ」
「ウラベさん、そんな言い方許せないよ！・・・って、ああ、駄目ヴァルキリー！ウラベさんに剣を向けないで！ああもう！」
「もてる男は辛いな、根倉」
「木塔君まで！」
・・・・・・・・・・・・・
「何か分かるか、ビフンロス？」
「これは・・・・異界化してますね」
ようやく渡り廊下の真ん中までついた俺達は、その異変さをまじまじと見ていた。
「異界化？」
「はい、一時的に何か強力な力によって空間が歪み、外部からの干渉がとれなくなることです。こういう場合は中にいる原因・・・この異界化は限りなく結界に近い作りですから、それを行使している張本人を叩くしかありません」
結界を撫でてみると、それだけで生気を吸い取られような感じがした。こんな間近になると気の消費も激しいのだろう、木塔と根倉が緊張している。
「外からの干渉は基本的に無理でしょうが・・・膨大な力を与えれば、論理的に可能かと思います」
「例えばどんな」
ビフロンスはオレの顔をのぞく。すこしギョッとしたが、慣れれば結構愛嬌のある顔だと思った。
「例えば、あなたの力を解放し、その恐ろしき魔剣で切り続ければ・・あるいは人が通れるぐらいの隙間ぐらいならば・・・・」
オレの全力の力で、か。
「ただし、マスター・ナギの魔気は強力すぎる。あなたほどの力がすべて解放されれば、さらにその力が結界にぶつかれば、５キロ先にいるサマナーも異変に気づくでしょう」
「だな。・・・・どうするか」
サマナーが来たところで中に入れば逃げ切れるが・・・もし椿さんが来たらやっかいだ。
「ねえ、ウラベ君、いいこと考えたんだけれど、いいかな」
根倉が得意げに話しかけてきた。自信満々の顔で。
「ウラベさんの悪魔、あの破壊神の盾って丈夫そうだよね？」
「ああ。オレの剣撃も、真正面から受けられるぞ」
「じょ、丈夫すぎるよ・・・でね、ウラベさんがこれを斬ってる間、この盾を文字通り『盾』にするんだ。ほら、ここって狭いでしょ？盾を垂直にすれば、少ししか隙間が無いじゃない。だから、僕らの姿も全然見えないし・・・・」
「お。さすがナンパ師。いいじゃねえの、ソレ」
すかさず木塔が茶化す。どうやら黙って悪魔を仲魔にしたのがまだ気に入らないらしい、尾を引いている。だがコレは木塔には悪いが根倉の魅力なんだ。仕方ないと許してあげる他はない。
「だからそんなんじゃ・・・それにね、トナティウ・・・だよね。彼だけやたらと大きいから、どのみち入れないと思うんだ。他はみんな人間サイズだし、ホヤウカムイは蛇だから狭いところ平気だし」
「確かに・・・」
いちいち姿を消して、もう一度召喚し直しのは時間の無駄だ。それになにより、ここは通路が狭い。トナティウの頑丈な盾はちょっとやそっとでは壊れないのは、体験済みだ。
「トナティウ、頼む」
「・・・・・」
「俺らが帰るまで、ここを死守してくれ。守りに徹していて欲しいんだ。盾をこうやって・・・そう、そうやっていれば、まず攻撃されることはない」
「・・・・・・ワカッタ」
そう言うと渡り通路の入り口付近に盾を壁にめり込ませる。左右に人一人も通れないようなスキマがあるぐらいで、後ろからの攻撃は完全にシャットアウトされた。
「これでよし、か」
「うん・・・」
みんなトナティウのそばによる。一人オレだけが結果のそばにいた。
「どんなことが起こるかわからん。木塔、根倉、気を高めろ。召喚された者は二人を頼む。特に赤マント、二人を頼んだぞ」
そういうとＭＤに気を放ち、柄だけになっている暗黒剣レーヴァテインを取り出す。力を込めると切っ先が姿を現し、すぐに炎に包まれる。
「シーアーク外で全力を出すのは初めてだ・・・」
そう言うと思い切り剣を振りかぶり、異様な色をした結界の壁に振りかざした。
・・・・・・・・・・・・・
「！なんだ、この気は・・」
「どうし・・なんだ！この禍々しい気は！」
「どこか遠くからだ、ものすごい衝撃波・・・・・誰かが結界を破ろうとしているのか！おい、見張りのやつからの報告はどうした！？」
「・・・・・ない。すべて異常なしだ。どうする椿・・・いや、見張りの一人が異常を発見した！」
「どこ！」
「本社の社員が泊まる寮からだ！そこから禍々しい気が放たれている！」
「寮からだと？何故そこから結界に接触できるんだ・・・」
「・・・・・・なに？・・・・おい椿！寮に向かうぞ！」
「訳を話せ！それにここの指揮はどうするんだ」
「あったんだよ、完全に盲目していた、そこの寮には本社に通じる渡り廊下があったんだ、ヤツラそこから侵入するつもりだ」
「な・・・んだと？・・くそ！」
「お前は先に寮へ迎え、オレもここの指揮の直しが終わったら、部下を連れて向かう」
「わかった。おい、手の空いているヤツ！非常事態だ、オレについてこい」
「まったく、どうなっているんだ・・・トップサマナーは次々死んでいくし、フィネガンが中にいるはずなのに・・・ぜんぜん事態は収拾しねえし！！」
・・・・・・・・・・・・
「あああああ！！」
ギィイィイィイ・・・という引っ掻き音が辺りに響く。少しづつであるが確実に結界は刻まれている。切り口からは暗闇が見え、そこからわずかに空気が漏れてくる。
「も一回！」
さっきより強く引っ掻き音が辺りに響く。
「き、木塔君、凄すぎるよ・・」
「ああ、こりゃわかるわ、こんなドス黒い気を弾かせれば誰でも・・・ん？」
オレは相変わらず全霊を駆けて壁を切り刻んでいる。剣を振り下ろした回数は、もうすぐ十回を越えようとしているが・・・なかなか開通しない。
トンネル工事の大変さを感じ始めたとき、後ろで大声が聞こえた。
「おい、ウラベ来た、き・・うっわ！」
剣を振り下ろしたときにオレに近づいた木塔が、ひっくり返りそうになった。しかしこける前に赤マントが体を支える。
「お、サンキュ、赤マント。・・・て、やばいぜウラベ、今十人ぐらいの集団が向かってきた。窓から見たらよ、先頭のヤツがこっちを見たんだよ。あの長髪・・・」
「だああ！」
「おわっつ！・・あの長髪、もしかしてお前の言っていた『椿』なんじゃねえか？」
（・・・・チッ）
さすが椿さんだ。行動が早いな。
「もうなりふり構わないぞ！大暴れするから離れて構えてろ！」
「ちょ、ちょっと・・・待てってウワー！！」
・・・・・・・・・・・
バリベリベリベリ・・・
「開いた・・・」
とそれと同時に、逆方向から大声が聞こえた。
「椿さん、こっちだ！こっちにいるぞ！」
「やべえ！見つかった！」
結構な足音が響いてくる。せっかく入り口が開いたところでお出ましとは、なんて他人任せな連中だ。
「二人とも、いま出せるだけの気を纏って、この「歪み」の中に入れ！はやく！」
「お。おう！先いくぜ」
「ウラベ君も早く来てね！」
先に中に入った二人を見送ると、次にヴァルキリーとホヤウカムイを入れる。
「何だ、この盾は！」
「わかりません、ただこの奥に何かが・・・」
「この盾・・・悪魔か！こちらも悪魔を召喚するぞ！」
（この声、椿さんだ！）
言いようのない緊張感を覚える。訳もなくサングラスをかけ直すと、自分の悪魔を歪みに通させる。
「任せたぞ、トナティウ」
「・・・・・」
「すまない！」
理由もなく謝ると自分自身も歪みに飛び込んだ。
「攻撃、開始！」
（く・・・・！）
椿さんの言葉を背中に受け、俺ら全員はようやくビルの中の侵入に成功した。
中にはいると、すでに戦闘は始まっていた。
何メートルもある巨大の体に目玉が頭の変わりをしている悪魔バロール、それに従う無数の人型の悪魔クドラク。
「こ、これ・・・強いよ！強すぎるよ！」
「泣き言うな・・・うわあ！」
バロールはホヤウカムイとの戦闘で持ちきりだ。特撮の怪獣決戦みたいだが、わずかにバロールが勝っていた。
「なかなか頑丈なことで」
剣を構えると、木塔の竜王がどいたその瞬間に剣を振りかざす。そのまま頭部の役割をしていた巨大な目玉は転がりおち、その瞬間にホヤウカムイが巻き付いていたバロールの体を絞め潰した。バロールの体はトマトを握りつぶしたようにバラけたが、すぐに光へと帰した。
「主を守れ！」
オレの言葉に本能するように竜王は飛び跳ねると、赤マントを執拗につけ回す悪鬼クドラクに襲いかかる。
「数が多いな・・めんどうだ」
見渡すとヴィヴィアンもビフロンスも苦戦している。あの二人が苦戦すると言うことは、ここの悪魔はかなりの高レベルだと言うことだ。
「ハイエナどもが・・・！」
もうかなりの数を葬ったヴァルキリーだが、それでもまだ根倉を守り切れていない。しかし傷ひとつ付けられていない辺り、さすがは十階の悪魔だけある。
「あ、ウラベさ・・・！」
「燃えろ」
今にも襲いかかろうとしたクドラクどもを一振りで三体の体を切り裂くと、返し刃で残りの二体をまっぷたつに切り裂く。計五体の鬼は体を炎に包まれながら光に消えていった。
「ここの悪魔はすこぶる強い！二人ともロックハートを構えろ、仲魔の援護に徹するんだ！」
「わワわ、かった、ました」
「おう、了解だ！」
もう少しここで足止めか−−二体の鬼を切り倒しながら、そう呟かずに入られなかった。
・・・・・・・・・・・・
「駄目です、椿さん。この盾ビクともしない！」
「く、オレの鞭でもどうにもならない・・・くそ、攻撃をゆるめるな！」
・・・・・・・・・・・・・・・
「まったく、三十体ぐらいはいたんじゃ無えか？」
「つ、つかれた・・」
あの後さらにもう一集団現れ、結局バロール二体を相手にするハメになった。一段落した戦闘の後、いつ椿さんが来るか分からないと言う理由で場所を変え、ビルの二階に移動した。
ここアルゴンビルは一階が大きな吹き抜けになっており、天井の高さが四階まである。つまり実際俺らは四階の渡り廊下から来たにも関わらず、本社に入ったとたんに『一階の展望フロアにいる』ことになる。ここは広い上に単調な作りで、なおかつ、もし吹っ飛ばされれば一気に三階分の高さから落下というダイブをエンジョイできる。
「エンジョイなんかしたくないよ」
と言われ、根倉の後押しで上の階まで避難することになったのだ。階段を上がり二階入り口の広間に出たとき、二人の間抜けな・・・・もとい叫び声が聞こえた。
「魔獣オルトロスに、同じ竜王のミズチか・・」
俺らの来る前に戦闘があったのか、計五体の混合集団は体の節々に傷を負っていた。レーヴァテインを構えると、その集団に突っ込んでいく。
「十階に比べれば・・・！」
オルトロスを両断し、傷を負いながらもよけたミズチの頭にヴィヴィアンの剣が突き刺さる。二体同時に宙を舞い襲ってきた獣を真一文字に切り裂くと、残った水竜はヴァルキリーの剣によって首をはねられた。
わずか６秒の間でケリがつくと、後ろを振り返る。
「いちいち・・・・騒ぐなよ」
息を整えながら文句を言った。
「だ、だだだって、人が死んでるんだよ、人間が！」
「ああ、そうだな」
「お前『ああ、そうだな』」って・・・こ、怖くないんか？」
二人は完全に慌てふためき、目も泳ぎまくっている。根倉は口を開けてその死体の様を眺めているだけだし、木塔の使い魔ホヤウカムイは人間の肉を見て食べたがっている。木塔はそれを必死に押さえてはいるが、たまに視線に入る肉塊が目に映るとたんに目を細める。
「こんなの、もう見慣れた。シーアークの上に行けば、こんなものゴロゴロしているぞ」
さすがにゴロゴロはしてはいないが、もうこんなもの何回見たことか。
「よく見ておけ、自分の力が至らないと、こうなる」
「強くないと・・・」
「こうなっちゃうの・・・」
二人にとってかなりの刺激らしい。ただ呆然と眉間にしわを寄せ、その『ひき肉』を見つめていた。
いいかげんもう先に進もうかと思ったそのとき、ヴァルキリーが黙って根倉の前に立った。根倉の視界を故意に遮ったのだ。
「あ・・・・」
それに気づいた根倉が彼女を見上げると、何とも気まずそうな顔で、
「ネクラ様は、騎士である私が必ずお守りいたします。私のために流した、涙に誓い」
と、何とも木塔が喜びそうなセリフをはいたのだ。
「あ、アリガト・・」
照れくさそうに顔を赤くして俯くと、絶妙なタイミングで、
「くあ〜〜！このナンパやろうが！うらやましいなぁ、この野郎！」
と、木塔が叫んだのだ。
「おれもあんなかわいくて強い女の子悪魔が欲しいぜ・・・」
と言い終わらないうちに、ホヤウカムイが体を寄せて迫ってきた。そしてなんと蛇みたいな形をした、先端の割れた大きな舌で木塔の顔を一舐めしたのだ。
「・・・・・」
「よかったな、木塔。モテるじゃないか」
木塔の悲痛で間抜けな大叫びが全フロアに響いたのは、その直後だった。
・・・・・・・・・・・・・・・・
「スキをみせたな、バカめ！」
「グオオオ・・」
「おお、あのバカでかい盾が！」
「もらった！」
ジュウッ
「おお、悪魔の首が・・」
「見ろ、あれだけビクともしなかった盾も光に返るぞ・・」
「何！光が・・・歪みの中へ入っていく？あんな化け物を従えているのか、この歪みを作ったサマナーは！」
・・・・・・・・・・
「椿さん、大丈夫スか？あんな隙間を滑り込んで・・」
「そんなことより、急ぐぞ・・あの歪みが消える前に・・得体の知れないサマナーを見つけなければ・・・」
・・・・・・・・・・・
「あ・・・」
うしろから気配を感じる。しかし敵意はなく、何かの罪悪感も感じた。
「トナティウの魂です」
「ビフロンス・・じゃあ、もう椿さんが侵入してきたのか！」
そう言って振り向こうとした瞬間、凄い速さで迫ってきた光の弾は、俺の前で止まった。
「スマン、トナティウ。傷が治るまでゆっくりしてくれ」
トナティウの召喚プログラムが入っているＭＤを胸にかざすと、その光はゆっくりと吸い込まれていった。
「木塔、根倉！トナティウがやられた」
「それって、マズイんじゃ・・？」
「やばいぜ、どうする？」
「とにかく三階を目指すぞ！ここは六階建ての作りだが、今ここは高さで言えば五階だ。とりあえず二階はあらかた調べた、もう三階しかないだろう？」
それにさっきから薄々感じているが、何か上の方で大きな力を感じる。
（いやな予感がする）
「急ぐぞ！」
・・・・・・・・・・・・・
「なに？さっきからフィネガンと連絡が取れない？どう言うことだ」
「ですから、さっきの最後の交信が最後です。『三階にいる原因を取り除く前に、やるべきことを思い出した』と言う・・それ以来、連絡が取れません」
「くそ・・・まさかフィネガンまで・・？」
「椿さん、また悪魔ッス！」
「まったく、マズイな・・・」
・・・・・・・・・・・・・
「ぅぉ・・・ぉ・・・」
「・・・！」
あの声、まさか・・・
「おい、こっちの悪魔は倒したぜって・・なんかあったか」
「木塔、マズイ・・」
クドラクのろ党もあらかたかたずき、一息つこうかとしていたときのことだ。
ガ・・・ガガ・・ン・・・
後ろから聞こえる、激しい衝突音・・・
「急ぐぞ！すぐ後ろに追っ手がいる！まずい！」
「うっそ、マジか！？」
「え、ファントムの人達、もう間近にいるの！？」
「ああ、さっき曲がった角のすぐ奥でドンパチしている！」
「うわ・・ウラベさん、急ごう！」
「分かっている！」
最後の一匹を片づけると、急いで廊下を直進する。もう後戻りは出来ない、後ろには椿さんがいるから・・・・！
「・・！階段だ！」
皆を先に行かせ、最後にしんがりの俺が階段を上ろうとしたとき・・・
「・・・いた！そこのキサマアァ、待て！！」
「ぐ・・！まずい・・！」
ついに椿さんに見つかった！
もう無駄だと思いつつも、最後の希望を持って上へと向かった。
・・・・・・・・・・・
「ついに怪しいヤツを見つけた！やつは相当強い、油断するな！」
「ゆ、油断って・・もしかして椿さん、戦うんスか？」
「当たり前だ。ファントムに仇なす敵は排除する・・・・おい、どうしたんだお前ら」
「・・・・さっきからの悪魔との戦いで、マグネタイトもほとんど無くなりました」
「仲魔も多く死んじまったし・・まともに戦えるのは椿さんだけッス・・」
「・・・・・・確かにな。まだ新入りのお前達がここまで来れらたのは、すごいが・・」
「俺らはここで待っています。ここのメインサーバ室は悪魔が寄りつかないし・・・足手まといも、無駄死にもゴメンです。あとは椿先輩、お願いします」
「・・・わかった。だが絶対ここから出るなよ。後から迎えに行くからな」
「はい、待ってます」
ギイ・・・バタン・・・
「いい人だよな、椿先輩って・・・」
「ああ。米田とは大違いだ。アイツ、今日ここに来てないらしいぜ、何か任務があるからとか言って」
「本当にナンバー５かよ・・・椿さんよりずっと弱いし、威張り散らすしよ・・・」
「と言うか、ファントムで尊敬できるのって、椿さんだけだよな・・・」
「ああ・・あとは態度だけでかくて、大して強くねえし・・・フィネガンさんは強ええけど、怖いしな」
「椿さん、言ってたぜ。『今のオレがいるのは、かってナンバー２だった卜部さんのお陰だ』って。組織を裏切って死んだけど、今でも尊敬しているって・・・」
「・・・・・俺らも会ってみたかったな、卜部って先輩に」
「ああ。そうだな・・・・」
・・・・・・・・・・・・・
「くそ、何だってこんな時に！」
階段を駆け上がると、またもや木塔達が悪魔と戦闘中だ。
「どけよ、てめえら！」
「お前がどけ、木塔！」
「え？う、うわ・・」
木塔が横に跳んだ瞬間、目の前にいた屍鬼コスモゾンビが断滅し、火葬された。死体は燃やすに限る。
「お前、あぶ・・」
「向こうがこっちに気づいた！走れ・・」
ダン！ダダン！
「に・・・逃げろ！」
遙か後方から長髪の男がライフルの銃口を向けていた。あいにく三発とも狙いは完璧だったが、すべて赤マントが防いでくれた。しかし相手を威嚇するというのが目的なら、効果は十分だ。
「あ、木塔君にウラベく・・」
「逃げろ！もうすぐ後ろにいるぞ！」
ダン！・・・ダンダン！
「うわ！本物の銃だ！」
全力疾走している俺らをただひたすら追いかけてくる椿さん。なんてしつこい・・・
「しつこい男は嫌われるぞぉ！」
「く・・・右に同じ」
赤マントで弾丸を防ぎつつ、ひたすら走る。
・・・・・・・・・・・・
「ち！」
ハア・・・ハア・・・
「向こうは三人もいるのか」
ハア・・ハア・・・
「負けるかも、な。だが、いま死んだらナギくんは・・・」
ハア、ハア・・・
「まだ死ねん！絶対倒す！！」
・・・・・・・・・・
「ん？なんだあれ！」
長い廊下をひたすら走っていると、何か大きな者が廊下に転がっている。さらに先に行っているはずの根倉が立ち止まり、その物体にふれているのだ。
「何やってんだ！もうすぐ後ろに・・・」
木塔は立ち止まると、すぐに走り出すように促す。しかし状況が分かっていないのか、木塔に腕をひっぱられた。それでも立ち上がろうともしない。
「だってこの人、瀕死なんだ！気を送るのをやめたら、すぐに死んじゃうんだ！」
「え・・う゛あ、確かに・・・」
確かに人間だ。体中血にまみれている。これじゃ助かるかどうかも分からない。年齢は四十代前半ほどで、ヒゲがやたらと伸びている。
「この顔、どこかで・・・」
しかしよく思い出せない。よく思い出せないが、ものすごい焦燥感に駆られる。何か異常に興奮する。
「なんだ・・この気持ちは・・」
手が汗ばむ。のどの奥が急にヒリヒリしだした。まるで体中が警告しているような、そんな気が・・・
「動くな！みな手を挙げ壁に貼り付けろ！この距離からだと『気』で防いでもただじゃすまんぞ・・・」
「しまった！やっば・・・」
・・・・くそ。ゲームオーバーか。
そう思い正体を明かそうと、サングラスに手を掛けたとき・・
「おい、そこのお前。お前も早く手を挙げろ！手を・・・・」
ちらりと何かを見た後、椿さんの言葉が止まった。そしてサングラスの下からでも分かるほど驚いていることが分かるほど、彼の顔が歪んだのだ。
そして、こう言った。
「フィ・・フィネガン！フィネガンじゃないか！」
・・・・・・・え？
『フィネガン』と椿さんに呼ばれた男は、その声を聞くとようやく目を開けた。
「・・・ふん、椿か・・・」
「なに、やってやがる！こんな所で倒れて、なにやってやがるんだ！」
椿さんはそう言うとフィネガンの体を起こした
。
「・・・ふん」
「ふん、じゃねえ！お前、米田の件はどうするんだ！卜部さんの妻を殺したのが米田の差し金だって事、もう分かってるんだ！なのにお前が死んだら元も子もないだろ！？」
（今、なんて・・・）
「・・はっ・・・証拠はそろった。後はお前がやれ・・・」
「何言ってるんだ！同僚を狂わした罪を償わしてやるって・・・そう言ったのお前だろ！」
「それぐらい・・・」
そう言い終わる前に男は吐血し、自らの服をさらに赤く染めた。
「・・ウラベの息子・・生きている・・・の・・だろう？ならば・・・」
「お前が死ぬと、指揮系統も乱れる！米田みたいなクズが暴走する！」
「ハハハ・・・唯一の・・望むは・・ウラベの息子に・・・引導を渡して・・もらおうと、思って・・・・・いた、が・・・」
「ウラベってまさか・・・」
そう言うと根倉はサングラスを取り、俺の方を見た。
「な、こんな子供があんなに巨大な気を？！」
椿さんが驚いている。オレはゆっくり振り向くと、その倒れた男を見下した。
男に近づく。
「サングラス・・・外してたから・・わからなかった」
「おまえ！壁に手をつけろと・・」
こいつが、母の敵だと思っていた。だがさっきのセリフは何だ？
「お前がフィネガンだな・・オレ・・・今までお前が母を殺したと思っていたのに・・」
「何言っている？おまえ・・・」
「ウラベさん！しっかりして！！」
「おい、ウラベ！気は確かか！」
何で倒れている？何でオレが手を下していないのに、死にかけなんだ？
なんで？
「ウラベって・・・ま・・ま・・まさか・・・」
サングラスが邪魔だ！
「なんで死んでいる！答えろフィネガン！」
オレが叫んだとたんに、フィネガンの目がオレを捉える。どうやら見た瞬間にオレの正体が分かったらしく、さも可笑しそうに笑った。
「く、くく・・まさか死の瞬間に、ウラベの息子に会えるとはな・・・」
「な、ナギくん・・・だったのか？あの悪魔の召喚したのも、この異界化したビルを外からこじ開けたのも・・・」
「・・・・・・・」
言葉が出ない。もし最初からフィネガンだと知っていれば、中途半端な真実さえ知らなければ・・今すぐ殺してやるのに！母さんみたいに挽肉にしてやるのに！
だが憎いはずのフィネガンはまだ笑っている。その笑顔に悲壮感を漂わせながら。
「ハ、ハハッ・・異界化したこの空間を、力でこじ開けた？それによく見ると、ウラベの息子・・たしかナギとか言ったな・・感じるぞ、お前の体から俺と同じ匂い・・ダークネスを！ハハ、その歳でそこまで強くなるとはな・・・・褒めてやる。例え体が万全の状態でも、お前はもうすでにオレより断然強い。なんせ空間の歪みを、力ずくでこじ開けられるのだからな・・・・・ゴフッ！」
しゃべりすぎで喉につまった血が口から吹き出た。この状態だから内蔵もグチャグチャだろう。
「フィネガン・・・オレの・・・両親の敵・・・」
何も写らない。椿さんの顔も、根倉も木塔も。ただ死に瀕したフィネガンの、血の色に染まった体だけが鮮明に写った。
「ふふん・・・仇、か。確かにな・・・ウラベにとどめを刺したのは、オレだ・・・憎いか・・・オレが・・」
「親父が死んだのは自業自得だ・・・悲しくも何ともない・・だがお前は、母さんを殺した・・・許さない・・・！」
剣の柄を握った。自分がもてるだけの力を剣に宿らせる。
熱い。目が熱い！涙が止まらない！
「・・・ナギくん・・・なんと・・なんて力だ！体が震える！」
「ウラベ、駄目だ！さっきの言葉、聞いただろ！フィネガンじゃねえんだよお！！」
「死ねえ、フィネガン！！！」
しかし、その剣はフィネガンを捉えることは出来なかった。
ポタ・・・ポタ・・・
血が滴る。その雫はオレの血でもなく、フィネガンの血でもなかった。
「駄目だよ・・・・冷静にならなきゃ・・・フィネガンは、犯人じゃないんだから・・・」
レーヴァテインの切っ先は、根倉の額で止まっていた。さらにヴァルキリーの二本の剣が刃の根本辺りでオレの剣を押さえていた。
ヴァルキリーの全身全霊の力と、根倉の防御重視型である『ライトニング』の二重効果で、フィネガンに引導を渡すことは出来なかった。
「・・・根倉・・・」
「・・・大丈夫、だよ」
根倉の流す血を見て、何か途方もない罪悪感を感じた。同時に得体の知れない絶望感にも襲われ、そのまま地面に膝をついた。
なんで、フィネガンが犯人じゃないんだ・・・
「なんでフィネガンが母さんの仇じゃねえんだよおおおお！！！」
完全に打ちのめされたオレは叫び、泣いた。
「何でだよ・・・何度も死にそうになっても・・・何度も母さんの死ぬ夢を見ても・・・ダークネスが空になって、死にたいくらいの筋肉痛や気怠さに襲われても、ただ復讐のためだけに生きてきた・・・・」
「ウラベさん・・・」
「ナギくん、それは・・・」
オレは何をすればいい？わからない・・・・
「・・椿、とんだミスを犯したな・・・」
「フィネガン・・・」
声のする方を見ると、死にかけだというのにフィネガンは立ち上がった。俺の目を見、自分の命を削るように口を開いた。
「ウラベが裏切ったのは、はあ、ファントムソサエティの、計画を、知ったから、だ・・マニトゥと言う、はああ・・存在を知り、その邪悪さに、嫌悪し逃げたのだ・・・そして、ファントムに裏切りは許さない・・・家族を監禁し、ウラベだけを抹殺、もしくは説得、するつもりだった・・・しかし、狂いが、しょ・・・生じた」
そこまで言うとフィネガンは壁にもたれ、必死に息をしている。
「そこから先は俺が話すよ、フィネガン」
椿さんは手持ちの符をフィネガンに貼ると、悲しげな顔で話し始めた。
「フィネガンの命令が、どこかで狂ったんだ。家族監禁が、家族抹殺へと。そしてその結果がこれだ。異変に気づいたオレは急いでキミの家に向かったが・・・実行犯は口を割る前に自らの命を絶った。それで事件は闇の中、さらにウラベさんは復讐の鬼になった。ファントムサマナーの約三分の一を次々と抹殺したが、何かの作戦中にファントムの施設に忍び込みフィネガンと交戦。死亡を確認した。しかしフィネガンは責任を感じ、すべて自分の指示だと言ったんだ。だから自分の作戦ミスでウラベさんを裏切らせたのも自分の責任、ファントムサマナーが何十人と殺されたのも自分の責任。それが・・・・真相だ」
「なんで・・何で命令が狂ったんです・・」
今オレの中に残っている、全ての『冷静』をかき集め、椿さんに問いただした。
「四年半の歳月をかけて調べたところ、やっと犯人が断定した。キミが一度見たことのある男、米田だ。当時二十四歳だった米田は伝達方法であったパソコンをハッキングして、データを改ざんしたんだ。しかしハッキングに対するシステムはいっさい起動しなかった。と言うことは誰かがそのパソコンにアクセスした瞬間に、自分も潜り込んだんだ。そして作戦を改ざんし、この悲劇は生まれた。すべての元凶は、米田だったんだ」
米田・・・あの男が、この悲劇を作り出した犯人か・・・！
「ゴフッ、ゴフウ、・・どうやらオレもここまでのようだ・・・な・・・」
フィネガンは再び地面に倒れると、それでも立ち上がろうとしていた。
「ウラベの息子よ・・・オレの仲魔はすべて死んだが・・・これだけは最後まで、そう、ウラベを殺したあの時から使わなくなった・・・悪魔を・・・くれてやる・・」
「フィネガン、そんな傷では！」
椿さんが手をさしのべようと出した手を力ずくで振り払うと、苦悶に満ちた笑みで吐き捨てるように言った。
「どのみち死ぬさ・・・だが最後に、旧友だったウラベの・・・息子に会えたんだ・・・悔いはない・・・な・・・・・」
そう言うと今にも倒れそうな状態でファイティング・ポーズをとった。うつろな目でシャドウボクシングをすると、フィネガンの体が光り出す。死を迎える彼の、最後のサーモンだった。
「受け取れ・・・ウラベの子よ・・・」
出てきたのは奇妙な上半身しかない人形だった。下半身はまるで編みかけの布みたく、いくつものパイプが人形の内部から突き出ていた。
「オレの人生、で、生涯の中で、一番大事な・・・大事な者達を失ってまで・・・得た・・最高の封神具だ・・」
そこまで言うとフィネガンは倒れ、大量の血を吐いた。
「おい、フィネガン！」
「神が定めた・・・万物の法を・・・・破る、悪の偶像、造られし神の眠る土くれ・・・『ドリー・カドモン』だ・・・」
「ドリー・カドモン・・・」
不気味な人形。ちっとも可愛くない人形。なのに、こんなにこんなに温かい・・・
「椿・・・オレは・・」
「もういい、しゃべるな！」
椿さんは必死にフィネガンを治療している。しかしこの場にいる誰もがもう助からないであろうこの男を、この男の言葉を聞いてあげる事しか出来なかった。
「オレは今・・・とてもスガスガしい・・・気持ちがいいんだ・・・体の寒ささえ、冷たくて気持ちいい・・・」
「そうか・・・そうか・・・！」
「今思えば・・・オレや・・ウラベや・・五人で、新米サマナーとして・・・やっていた頃・・が・・なつかしい・・・」
「そうだな。そうだな！」
「いったい・・・いつから・・・・こう・・・・なっ・・・・・・」
それっきりフィネガンが口を動かすことはなくなった。ただ、その死に顔に苦悶の影はなく、笑顔だった。
「・・・・そんなこと・・・」
椿さんの、必死に治療が中断した。もう治療する必要が無くなったからだ。
「そんなの、そんなのわかるかよおぉぉ！」
椿さんが号泣して、泣き叫んでいる姿を、オレはただ見ているしかなかった。根倉は体を悪魔に支えられながらも、肩を震わして泣いている。木塔も下を向いて歯を喰いしばっていた。
「あああああああぁぁぁぁ・・・！」
この場にいたすべての人間の瞳から、涙が頬をつたった・・・
結界が消え、電異界化していたアルゴンビルが元に戻ったのは、それからわずか十分後のことだった。
椿さんの権力で外に出してくれた俺達は、木塔パパが待っていてくれてるであろう寮の前まで歩いていった。
「ファントムの人間でないナギくんには教えられないが、米田だけを追うわけには行かないんだ。フィネガンが死んだ今、総指揮はオレがとるようなものだから。まだ、最後の一仕事が残っている」
そう言って微笑んだ椿さんの微笑みは、同情したくなるぐらい悲しい笑顔だった。
「終わったようだな、三人とも」
車の中にはいると、木塔パパはそう俺らに言葉をかけた。
「ここから出ていく前より、大人びているからな。相馬、車を出してくれ」
「かしこまりました」
エンジン音が鳴り、車は発車された。
「家に帰って宴会でもするか？」
「親父・・・」
「何辛気くさい顔してるんだよ。終わったんだろ？終わったことをいつまでも・・」
木塔の背中を叩く父。しかしそんなに喜んではいられなかった。
背中を叩く父の手を握ると、木塔は力強い声をあげた。
「終わってなんかいねえ。まだ終わってなんかいねえんだ！」
そう、終わっていない。まだ終わらせてはいけない。
まだヤツを・・米田を追いつめるまでは、終われない！
卜部 凪 Ｌｖ ４８ ＩＴＥＭ・不詳の刀 ・赤いスカーフ ・Ｄ−ショック
・シルバーアクセサリー ・アナライズ・アイ
・暗黒剣レーヴァテイン ・ドリー・カドモン
力 ２５（５０） 生命エネルギ ８００（４０００）
速力 ２５（４７） 総合戦闘能力 ６７０（３８１０）
耐力 ８（１５） 総悪魔指揮力 ４７％
知力 １０（１６） 悪魔交渉能力 ３１％
魔力 ３ （５）
運 １ 所持マグネタイト数 ５００
仲魔 ・妖精ヴィヴィアン Ｌ．ｖ ４０
・堕天使ビフロンス ３４
・魔獣カソ ３７
・聖獣ヘケト ？
・破壊神トナティウ ３８
・鬼神フツヌシ ５３
・外道ナイトストーカー １３
１／１・すれ違いし真実