幻想水滸伝T

第三十二話 熱湯をかぶった宿星

「おう、おめーら。また風呂壊すんじゃねえぞ!」
サンスケに注意されつつ、フェイとハジャは脱衣場へと入っていく。
今回は水鉄砲も持ってないし、シーナは別行動だ。
「特にハジャ、気をつけろよ」
「アレはもともと、お前が言い出したんだろうが!」
「さっさと行くぞ」
誤魔化しなのか、素で自分の非を見つめていないのか。
さっさと服を脱ぎ、さっさと浴場へといってしまう。
「待てこら!」
ハジャも急いで服を脱ぎ、フェイを追いかけた。



浴場へ行くと湯にもつからず仁王立ちしているフェイ。
いぶかしげにハジャが問いかける。
「何やってんだ、お前?」
「石鹸忘れた。貸してくれ」
「別に良いけど・・・俺が使い終わるまで、待ってろよ」
「断る!」
相変わらず仁王立ちで、意味の取りにくい返答をするフェイ。
だが、すぐに意味を理解したハジャのこめかみに青筋が立つ。
「貸してと言っといて、先に使うってのか。この馬鹿が・・・」
「ちょちょっと、貸すだけだろ。まあ、いいや」
自分から言い出しておいてそっぽを向いたかと思うと、向いた女風呂の壁。
両手でメガホンを使うと声を張り上げる。
「誰かいたら、石鹸貸してくれー!」
「ものすごいこと女湯に頼むな、お前」
呆れたというか、すごい度胸というか・・・フェイのとった行動がすごかった。
「その声は、坊ちゃんですか?私のでよかったら投げますが・・・」
帰ってきたのはクレオの声だった。
フェイはすぐに投げてくれと頼む。
そして壁の上から現れた石鹸は放物線を描いた。
そのままフェイの手元に行くと思いきや、体を洗っているハジャの頭に直撃した。
「痛ってぇ!」
「ハジャ君?もしかしたら・・・ごめんなさいね」
悪気は無いのだから、かまいませんよと言おうとした瞬間。
「大丈夫よ、クレオさん。ハジャさんってば、無駄に丈夫なんだから」
聞こえてきたメグの声で、ぷちっといった。
ハジャは頭に直撃した石鹸を拾うと、女湯へと適当に投擲した。
「いった〜・・・もぅ、えい!!」
声から判断するにビッキーに当たったようだが、問題は痛いといった後の気合を入れた声。
いやな予感がして上を見上げると、ぱっと現れたのはブクブク煮立っている熱湯。
「ぎゃーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
熱湯が直撃したハジャは、痙攣しつつ気絶をした。
「クレオ、石鹸あったから、それもう投げ返さなくて良いから」
「それはかまいませんが、今の悲鳴・・・ハジャ君大丈夫ですか?」
「丈夫らしいからね」
そうなんですかと納得のいかない呟きが聞こえたが、フェイは聞こえない振りをして石鹸を泡立たせていった。
もちろんその石鹸はハジャのだが、気絶しているので使っても平気だろうと勝手に使っている。
ちなみにハジャは、のぼせたということで処理された。