幻想水滸伝T

第二十九話 最弱の宿星

「323で、俺の目が5だから・・・俺の勝ちだな。」
ガスパーの懐に、ハジャが汗水流して得た給料が消えていく。
「本当に弱いなハジャは。向いてないんじゃないのか?」
「向いてないとか言う前に、賭けなんてするもんじゃないわよ」
今日は特にすることが無く、いつものの三人でガスパーの所でチンチロリンをしていたのだ。
もっぱら賭けているのはハジャで、十回以上かけているのに一度も勝っていない。
「おいこら、お前本当に幸運の紋章なのかよ?」
自分が弱いのを棚に上げて、以前つけた紋章をぺちぺち叩いてみる。
だが、これが幸運の紋章であるとは誰も言っていない。
「たく・・・サイコロってのはこう振るんだよ」
紋章に八つ当たりをしているハジャに、見てろよと言ってからサイコロを振るフェイ。
振られたサイコロは椀の中で転がり、しばらくして止まる。
結果は456のアラシだった。
「あー!!勿体ねえな。やる前に賭けとけよ!」
「わ〜、一発で出た」
何回やってもハジャが弱い目しか出せなかったのに、フェイは一度で三倍払いのアラシを出してしまった。
ガスパーはやっていられないと言う顔をしている。
「相変わらずの強運だな。・・・ハジャとは正反対だ」
「そうでもないさ。おかげで大抵の賭場は、出入り禁止くらってるからな」
明らかにつまらなそうな顔をするフェイは、贅沢なとハジャに言われ苦笑する。
必ず勝てるために賭けができなくなることと、必ず負けるために賭けができる。
どっちが贅沢なのかは、どうでもいい事ではある。
「それより、もう一勝負だ」
「またぁ?」
「ほどほどにしとけよ」
「大丈夫、大丈夫」 自分以外の全員から心配そうな声をかけられる。
ハジャの大丈夫と言う言葉に説得力は皆無だった。



三十分後、ハジャは燃え尽きていた。
アレからも止まらず連戦連敗、これでもかと言うほどハジャは賭けに弱かった。
「やめておけば良かったのに・・・」
「負けっぱなしで引けるか!」
「賭けで人生踏み外す、典型的な奴だな」
それでも止める気はないのか、サイフをあけるハジャだが、そこにお金は残っていない。
全身のポケットを探るが、お金が出てくる気配は無い。
「しょうがないわね。ほらこれ、ラストチャンス」
「おお、サンキューメグ!」
「本当に、良いんだな?」
差し出された百ポッチをハジャにではなく、メグに確認するガスパー。
メグが頷いたのを確認して、サイコロを振る。
「来た、来た、来たー!!」
三回振った結果、出た目は1。
これでよほどのことが無い限り、ハジャの勝ちだ。
「せーの、てい!」
だが勢いを付けて思いっきりサイコロを振ったのはいいが、椀からサイコロが飛び出た。
しょんべんである。
「・・・馬鹿」
メグの言葉を否定する者は誰も居なかった。