幻想水滸伝T

第二十六話 よくよく考えてみた宿星

「なんか・・・前にも同じようなこと無かった?」
「ちゃんと今回はフェイも連れてきたし、カスミもいるんだから文句言うなよ」
今は既に夜遅く、皆寝静まっている時刻。
それなのに、ハジャにメグ、そしてフェイとカスミまでもが食料庫に集まっている。
今回夜中に集まったのは、マッシュからの依頼だった。
大元はレスターやアントニオで、最近食料の減りが速く、未確認だが夜中に食料庫に忍び込んでいるものが居るらしいのだ。
「そうじゃなくて、何でこういうことに私を連れてくるのよ!」
その問いかけに、ハジャは目をそらした。 実は、何かあるたびにメグを呼びに行くのが癖になってしまっているだけなのだ。
「まあまあ、メグさん落ち着いてください。城内だから危ないことは無いはずですし」
「もう、いちいち呼びにこないでよ!」
こうも言い合いをしていては隠れている意味がないと、カスミがメグをなだめる。
ハジャは助かったとばかりに息をつくと、ずっと物陰に隠れて辺りを見張っていたフェイに様子はどうだと聞く。
「特に、誰も来る気配は無いな。今日来るとも限らないし、寝たい奴は寝てても良いぞ」
「あっそう、悪いね。って痛い、痛いって!」
「頼まれた張本人が、真っ先に寝てどうするのよ!」
フェイの言葉を聞いて、真っ先に寝ようとするハジャの耳をメグが引っ張る。
フェイとカスミは二人を見てやれやれと肩をすくめ、顔を見合わせた後提案する。
「まず、俺とカスミが寝てるから、しばらくしたら交代な」
そう言うとフェイは地面に寝転がり、カスミは膝を抱えて座り寝てしまった。
二人は反論する暇も与えられず、仕方なく食料庫の出入り口を警戒することにした。



いくら見張りとはいえ、ずっと無言で警戒しているのも疲れてくる。
先に口を開いたのはメグだった。
「ハジャさんって、私以外に女の子の友達居ないの?」
唐突な質問で少し驚いたが、ん〜っと唸り声を上げ考え込む。
「テンガアールだろ、ビッキーだろ・・・」
声を出して例をあげては見たものの、たった二人で終わり黙り込んでしまう。
テンガアールはどちらかと言うとヒックスつながりで、ビッキ−はちょっと怖い。
よくよく考えてみると、頼まれごとをされることは多いが、それだけでほとんど女友達がいないではないか。
ちなみに今回カスミは、マッシュの命令でつきあっているだけだ。
「情けないわね。そんなんじゃ彼女の一人もできないよ」
「ほっとけ!」
そのまま黙ってしまう二人、ハジャは考え事に神経を集中してみる。
よく考えてみれば軍隊の割にはこの城は可愛い子が多い。
シーナみたいにはなりたくないが、ソロソロ彼女が欲しくなる。
テンガアールにはヒックスが居るし・・・
「ちょっと怖いけど、ビッキーって可愛いよなぁ」
「えへへ、そうですか?照れちゃいますね」
ハジャのこぼした一言にピクっと反応するメグだが、それ以上に突っ込むべき所が。
「ビッキー、何やってるのよ!」
メグの声でビッキ−が何時の間にか居たことにやっと気付き、フェイとカスミも目を覚ます。
「何ってモグモグ、お腹すいちゃったから、ちょっとお夜食を・・・メグちゃんも食べる?」
果物か何かを口にいれながら器用に喋る。
よくよく見れば、両手を組むようにして果物野菜を抱えていて、そのなかからジャガイモをメグに差し出す。
ジャガイモを生で食べたくは無いので、丁重にお断りを入れるメグ。もちろん残りのハジャ、フェイ、カスミも。
「よく夜食とりに、ここにきてるの?」
「みんなには内緒だよ〜」
もしやと思って聞いてみるフェイだが、あっさり肯定の言葉が出てきた。
ビッキーなら瞬きの紋章で自由に出入りできるため、誰かに見つかることもない。
意外とあっさり、事件解決である。
おいしそうに果物も野菜も生で食べているビッキ−だが、マッシュに黙っているわけにも行かない。
翌日に説明をし、ビッキーにはちゃんと食べたものを後でレスター達に報告することを義務付けさせた。