幻想水滸伝T

第二十三話 自ら飛び込んだ宿星

「あちぃ〜」
「はぁ〜」
日中の暑い時間帯に、当ても無くとぼとぼとハジャが城内を歩いている。
すると、反対方向から歩いてくるメグ。
調度T字路で同じ方向に曲がりあう二人は、顔を見合わせる。
「・・・何よ」
「別に・・・」
すぐに顔をそらしあうとハジャがずんずんと先に歩いていく。
が、メグがすぐさま追いつき、追い越す。
追い抜いたメグは振り返ってふふんと笑うが、その隙にハジャがメグを抜き返す。
そのまま競争に発展していくのはいいが、ゴールがないため泥沼だった。



「ぜ〜ぜ〜、余計・・・暑くなった」
「はぁはぁ・・・馬鹿みたい」
「見たいじゃなくて、二人とも馬鹿だと思うよ」
あっさり二人を切り捨てたのはルックだ。
ルックに何やってるのと突っ込まれ終了となったのだ。
時既に遅く、汗だくになった後ではなったが。
「何で、お前はそんなに涼しげなんだよ?」
「風の力を使ってるからね」
そう言うとルックは紋章で風を起し、二人は涼しそうな顔をする。
そんな幸福も束の間、すぐに止む風。
「え・・・何でやめちゃうの?」
「風をくれぇ〜」
「そよ風って、力を抑えてる分疲れるんだけど。そこまでする義理は無いよ」
ルックはそのまま、二人を置いて何処かへ行ってしまう。
二人は息を合わせてブーイングをするが、この手が聞くはずも無い。
ルックの足を止めることさえできなかった。
「しょうがないわね。テンガアールのところへ行きましょう」
先ほどの張り合いはなんだったのか、ハジャはメグの言葉に頷くとあっさり付いて行った。



「ねえ、メグ。本当にやるの?」
「お願い!このとおり・・・」
メグはテンガアールに水の紋章を使ってもらおうと頼み込んだ。
テンガアールは物凄く気が進まない顔をしているが、拝み倒す二人に仕方ないとばかりに承諾した。
「母なる海」
テンガアールの言葉で水の紋章が光りだすと、メグとハジャが水に包まれる。
「あ〜、冷たくて気持ちいい」
「癒される〜」
水が自分の周りから消えると、二人はさっぱりし、さわやかに笑っている。
ただ、テンガアールは心配そうに二人を見ている。
「大丈夫・・・なの?」
そう問われて何がと聞き返そうとしたが、あることに気付きそれどころではなくなってきた。
「暑い!」
「あれ?なんかさっきより暑くなってきたような・・・」
二人の言葉を聞いて、やっぱりと笑うテンガアール。
基本的に回復魔法は自己治癒力を上げる。つまり、細胞が活発に動くということ。
「もう駄目だ!」
耐え切れなくなったハジャは、窓から湖へ服のまま飛び込んだ。
「あ、ずるい!」
メグはテンガアールの部屋を走って出て行く。
「水着、水着」と口走りながら自分の部屋へと走り込むと、言葉どおりに着替えた。
そして、自分の部屋の窓からハジャの居る湖まで飛び込んだ。
「・・・やっぱり、仲良いんじゃない」