幻想水滸伝T

第二十話 寝所を転々とした宿星

「ぐおぉぉぉ〜、があぁぁぁ〜」
「あー、もう!うるせー!!」
被っていた布団を跳ね上げると、上半身を起こしビクトールを睨みつける。
恨みがましい目線程度でビクトールが起きるはずも無く、気持ちよさそうに寝ている。
諦めて布団を被りなおし、寝ようとはしてみる。
だが一旦ビクトールのイビキが気になってしまったため、耳からイビキを追い出すことができない。
「もう、駄目だ・・・」
観念したハジャは、布団を持って部屋を出て行った。



「頼むヒックス、泊めてくれ」
「それぐらい良いよ」
夜中に突然訪れたハジャを、眠たい目をこすりながら快く出迎える。
交わした言葉はそれだけで、眠りにつく二人・・・しばらくすると。
「うう・・・ごめんよ、テンガアール」
「あ?」
ヒックスの寝言で再び目を覚ます。
「待ってよ・・・置いていかないでよ、テンガアール」
「わかったよ。ちゃんと訓練するから・・・」
一言で終わらない寝言。
どんな夢を見て、何をしているのか容易に想像できそうだ。
夢の中までも大変そうだが、ハジャはなんとなく同情できなかった。・・・ただのひがみであろうが。
ヒックスの終わらない寝言に、とうとうハジャは布団を抱えて部屋を去っていった。



「カクカクしかじかで、泊めてくれ」
「それぐらいで起すな。勝手に入って寝ろ」
夜中に起されてムチャクチャ不機嫌そうだが、OKをだしたのはフェイである。
他にフリックやシーナという選択肢もあったのだが、どちらも駄目そうな予感がしたのでここに来たのだ。
「うわ・・・」
フェイの部屋に来たのは二度目だが、入ったのは初めてだった。
一応城主だと言うことは知っていたが、あまり意識したことは無かった。
しかし、部屋の広さや豪華さは、他の人の部屋と比べ物にならない所を見ると、自分がここに居て良いのかと思わされる。
さっさとフェイが寝てしまったので、とりあえず適当な所に寝転がって布団を被ってみる。
・・・眠れないので寝返りをうってみる。・・・・・・それでも眠れない。
静かなのはいいのだが、こんな広い部屋では落ち着かないので眠れないのは当然である。
そして、そのまま夜が明けた次の日、城の所々で眠そうに目をこすりながら掃除をするハジャが見られた。