幻想水滸伝U

第十八話 傷心旅行に出かける宿星+坊

眩しさを持たない光がはじけるように、突如ハジャの部屋に現れた。

「大変だよ、大変だってば。のんきにお茶なんか飲んでる場合じゃないよ、フェイさん!!」

「あ〜、フェイさん。私にも温めのを一つください。私熱いのだめなんですよねぇ。あ、お茶菓子なんかがあるとさらにグーです」

「ビッキー、落ち着きすぎだから!」

「今丁度グレミオから送られてきた特性饅頭を食べてた所だ。ハジャはいらないって言うし、ビッキーにあげるよ」

「わ〜、ありがとうフェイさん。後でハジャさんにもお礼を言わないとね」

のんびりとしすぎているフェイとビッキーの雰囲気に飲まれそうになるテンガアールだが、なんとか踏みとどまった。

激しく首を横に振って自分を保つと、重大事件を伝えるべきハジャを探す。

「ハジャさん、ハジャさんはどこ?!」

「ああ、アイツならほら、ベッドの上」

フェイが指差したベッドの上には、こんもりと盛り上がったシーツがいた。

ひざを抱えて壁をみつめるハジャである。

「ハジャさん遊んでる場合じゃないよ、メグがね!」

「知らない」

「メグとマイクロ……え?」

「知らない。女なんてみんな信じられない。敵だ、あっちいけ」

「あ〜……もしかして、すでに知ってるの?」

妙ないじけ方をしているハジャからフェイへとグルリと視線を移動させる。

「まあな。ちょっと小耳に挟んだからカスミに調べてもらったんだ。まったく、普段はっきりしないくせに捨てられた途端、女々しい」

「ングング、フェイさんこのお饅頭美味しいね。グレミオさんもっと送ってくれないかな?」

「ビッキー……少し黙ってて。話が進まないから」

「テンガアールちゃんのイジワル」

「ビッキー泣くな。食いかけだが俺の饅頭をやる。ついでにグレミオにも手紙を書いておくから」

「うん、ありがとうフェイさん」

「……もういいかな?」

話が一向に元に戻らず、テンガアールはこめかみを押さえながら尋ねた。

だが、誰もその疑問に答えるものはおらずテンガアールは勝手に話を進める事にした。

「それでハジャさんはここでいじけてるだけでなにもしないの? メグだって一時の気の迷いかもしれないじゃない」

「メグの事なんか知るか。誰とでも一緒に」

「カスミが言ってたんだが、マイクロトフってシーナとかと違って実直な男らしいな。そう遠くないうちに結婚なんてあるかもな」

「う〜ん、これがカミューさんあたりだったまだ良かったんだけど。有りうるだけに怖い」

「ねえねえ、二人とも。ハジャさんが何か小刻みに震えてるよ?」

視線をそろえるようにベッドの上にのハジャに移すと、確かに震えていた。

やはり言葉とは裏腹に気になってはいるらしい。

いつまで震えているのかと皆で見ていると、不意にかぶっていたシーツを脱ぎ捨てベッドを降りた。

「そうだ……ハイランドへ行こう」

遠い目をして見た先にある国は、ハイランドではなくトラン共和国である。

「ちょちょちょ、ハイランドって何言ってるの?! 今一応戦争中だよ。ルカ・ブライトがいるんだよ!」

「狂皇子か、ちょっと興味があるな。よし、俺も付き合うか」

「いいなぁ、私も旅行したいなぁ。フェイさん私もついて行っちゃダメかな?」

「ダメに決まってるでしょ!!」

和気あいあいとさわぐ三人をほうっておいて、ハジャの荷造りは着々と進んでいった。





割と秘密裏に進んでいったハジャとフェイの旅立ち。

……のはずだったのだが、今フェイ達の前には何故かシンファとナナミがいた。

「フェイさん聞きましたよ、ハイランドに行くんですよね?」

「ああ、だがさすがにシンファは連れて行けないぞ。ナナミもだ」

「それはシュウさんにきつく言われちゃった。だけど手紙ぐらいはOKだって、だからもしジョウイに会ったら渡してください」

「やれやれ、会ったらな」

その行動がどれだけジョウイにとって危ないものか、二人はわかっていないようだが、シュウはわかってやっているのだろう。

フェイはしぶしぶといった感で受け取った。

「フェイ……そろそろ行くぞ。というか、早くここを離れたい」

闇を背負ったハジャがせかすので、フェイは見送りのテンガアールとビッキーのほうを向いた。

一応今日の旅立ちをしっているのはこの二人とシュウだけである。

「ビッキーそれじゃあ頼むよ。グレミオへの手紙は向こうで出すから」

「はい、お饅頭のためなら裏側だって一っ飛びです。準備は良いですか?」

「今の俺はテレポートだって怖くない」

「OKだ。いつでもやってくれ」

二人の言葉を聴いてビッキーがにっこりと笑った。

「それじゃあ、えーーーーーーーーーーーーーい!」

ビッキーの抜けたようで、気合の入った声で二人は消えた。

上手くいったのなら今頃はハイランドの城下町にでも着いているはずである。

「フェイさんが上手くジョウイに合えるといいね、シンファ」

「そうだね。届くと良いけど」

「本当にいいのかなぁ……メグは止めに来るのを待ってたんだと思うんだけど」

「お饅頭♪ お饅頭♪ グレミオさん、はやく送ってくれないかな」