幻想水滸伝U

第十七話 見切りをつけられた宿星

日差しが温かく、若者でさえ日向ぼっこをしたいと思う麗らかな日。

メグの部屋にきていたテンガアールはメグの言葉を聞いて我が耳を疑った。

同じく聞いたビッキーは……理解しきれなかったようだ。

「ごめんメグ、もう一回言ってくれない?」

「だから、誰でも良いからデートしてくれそうな男の子の知らない?」

メグの目は至って真面目で、冗談とも思えない。

「ん〜、メグちゃんは男の人と遊びたいんだよね? ハジャさんは今日は忙しいの?」

「あんなグズな男なんて知らないわよ」

(そうとうきてるわね、メグ……まあ、あそこまできてはぐらかされたらねぇ)

ペッとメグがつばを吐く仕草を見せた。

元々ズタズタだった堪忍袋が袋ごと粉砕されたのだろう。

「男の子って言っても私はヒックスぐらいしか知らないし……ビッキーは?」

「フェイさんにシーナ君にルック君……後はわかんない」

「身内ばっかりじゃない。フェイさんとルック君は向こうからNGもらうだろうから、シーナ君が妥当かな?」

「シーナ君かぁ……なんかイメージというか、インパクトがないわねぇ」

唸りながら考え込むメグ。

ビッキーはその仕草に首をかしげ、テンガアールはつきあってられないとベッドに身を投げ出した。

「ハジャさんも何やってんだか」

「今はぷー太郎だよ、テンガアールちゃん」

「いや、そうなんだけどね……本当に、なにやってんだか」

最後までビッキーは首をかしげるだけだった。





「まあ、実際誰かいた所でなにもしないんだけどさ」

ハジャのいないレストランのテーブルで一人ひじをついたメグは呟いた。

あの後、結局テンガアールとビッキーはそれぞれどこかへ行ってしまったのだ。

話の内容が内容なだけに、二人を攻められない。

「はぁ〜、ハジャさんの所に行かないと暇になるのが一番いやなのよねぇ。からくりも楽しいけど、そればっかりじゃ嫌になっちゃうし」

ひじを立てた状態からテーブルへと完全に体を預けてしまう。

「相席をよろしいですか、レディ?」

「へっ……あ、どうぞどうぞ!」

見上げた先には、赤と青、対照的な青年が二人いた。

メグは体をまっすぐに立てると、今しがた自分のしていたはしたない行為を思い出し顔を真っ赤にしていた。

顔が赤いのは恥ずかしかったからだけではない。

目の前の二人があまりにも有名な騎士団の二人だったからだ。

「あの顔が赤いようですが、体調が優れないようでしたら医務室までお連れしますが」

「いえ、私はこれぐらいが平温ですから。お気になさらずに!」

さらに赤くなったメグに青い服装の騎士、マイクロトフは戸惑っているが、相棒のカミューは理解しているようだ。

「大丈夫だそうだ。残念だったなマイクロトフ、素敵なレディを誘う口実がなくなって」

「ば、馬鹿野郎カミュー! 俺はだな、じょ、女性がだな」

「くっくっく、本気にするなよマイクロトフ。冗談だ、冗談。すまないレディ、マイクロトフは女性に不慣れでね」

どうもカミューはマイクロトフをからかっているだけのようだが、メグはますます動揺してしまう。

ようやく息を整え、上がりきった体温が戻る頃には、マイクロトフ達が料理を頼みきってしまっていた。

「なあカミュー、最近すこし騎士団全体が緩み始めているとは思わないか?」

「相変わらず堅い考え方をするな。確かに常日頃の鍛錬は欠かすべきではないが、気を抜く事も大切だ。例えば……先ほどのお前のように、女性を誘うとか」

「え……あの」

「だからカミュー! 俺はそんなつもりは一切」

「無いと言い切るのも逆に失礼だぞ。お前はもう少し肩の力の抜き方を覚えるべきだ……っと言うわけでレディ。この場を貴方に任せたいのですが」

「え、えー!!」

いきなりの話の展開にメグの頭は完全についていけていない。

それはマイクロトフも同じなのだが、カミューはよろしくといって席を立つと行ってしまう。

「ちょ、ちょっと待てカミュー、俺は」

「お前たせしました」

席を立ってマイクロトフも後を追おうとするが、間が悪く店員が頼んだものを運んで着てしまう。

仕方なく席に着くが、先ほど以上にメグが顔を赤くしていた。

「って……カミューの奴、最初からこのつもりで」

二人の間に置かれたのは一つの南国風クリームソーダだが、そこに刺さっているストローは二つ。

「すみません、カミューの奴が失礼な事を。これはすぐに下げてもらいますんで、あの私もこれで」

「ま、待ってください。さ……さすがに急これは困りますけど、よろしくお願いします」

真っ赤な顔をしてペコリと頭を下げたメグの行動を、マイクロトフが理解するのに数十秒は掛かった。

「えっと…………本気、ですか?」