幻想水滸伝T

第十七話 紋章を付けてみた宿星

「な〜、へリオン婆さん。何か憑いてないかみてくれよ」
「あたしゃ、ただの傍観者だよ。そういうのはジーンにでも頼みな」
最近のついて無さぶりが限界に達したハジャ。
変なものに取り付かれているのではないかと、ヘリオンの婆さんに見てもらいに来たのだ。
が、返ってきた言葉は、そっけないものだった。
仕方ないのでジーンの所へしぶしぶ行ってみる。
しかし、その顔は晴れる様子は無い。ハジャはジーンが苦手だったのだ。



「ふふふ・・・いらっしゃい、ハジャ君」
「ど、どうも」
何が苦手かというと、この微笑が苦手なのだ。
正確に何処とは指摘できないのだが。
「ちょっと最近ついてなくて、ジーンさんに見てもらえないかと」
「みろと言われても、私は占い師じゃなくて紋章師よ」
言われてみて、初めてそのことに気が付いた。
だがヘリオン婆さんに言われるままに来たことを話すと、何かを思い出したように立ち上がり店の奥に消えていく。
ほとんど時間がかかることなく戻ってきたジーンは、右手に見慣れぬ封印球を持っていた。
「これ、最近知人に貰ったもので、幸運の封印球だとは思うんだけど・・・付けてみる?」
似てるんだけど、ちょっと違うのよねとの怪しげな言葉付きだったが、ハジャはYESと即答した。
今はなんでも良いので縋るものが欲しかった。
似てるだけで幸運の封印球ではないと聞かされているのに、意外と追い詰められていたのかもしてない。
「ん〜、とりあえず幸運の封印球で良いかしら?汝幸運の封印球よ。自らの封印を解きて、彼の者に汝の姿を映し力を貸し与 えたまえ」
ジーンの言葉が終わると封印球が光り、その紋章がハジャの右手にうつる。
「料金はサービスしてあげるから、何か違いを見つけたら教えれくれる?」
「はぁ・・・わかりました」
迎えられた時と同じ笑みに見送られ、ジーンの店から出る。
悩みが解決したわけではないが、とりあえず仕事に向かった。



はじめは何かあるんじゃないかとビクビクしながら掃除をしていたのだが、しばらくするとおびえるのも馬鹿らしくなった。
いつも通りの調子で掃除をしていると、
「ハジャさん、この辺でからくり人形見なかった?落としちゃったんだけど・・・」
「ん?」
言葉につられてあたりを見回すと、少しはなれたところに人形が落ちていた。
それを拾い、投げわたしてやると、ちょうどハジャとメグの間で弾けとんだ。
「あははは、それじゃあ!」
苦笑いをして去るメグを、無言で見送る。
人形が弾けとんだあたりは、残骸とすすで汚れてしまっていた。
残骸を片づけていると、ぼそっと一言。
「・・・微妙」
紋章の効果があったのか、無かったのか。
良くわからない結果に困ったが、廊下が汚れたものの人的被害が減ったような気がする。
ただ、ジーンへの報告はもう少し経ってからにしようと思ったハジャだった。