幻想水滸伝T

第十五話 ネコを探した宿星

「ミナー!何処行ったの、でておいで!」
「でてこ〜い」
ロッテが必死な声を出しているのに続いた声は、どこかやる気が無い。
それが気に障ったのか、ロッテが振り向きハジャに文句をいってくる。
「掃除なんか後にして、もっとちゃんと探してよ!」
「へいへい」
いいかげんな返事をしつつ掃除を続けるハジャ。
掃除を止める気は、ないらしい。
ハジャの見解では、ネコは気紛れで、気がつけば帰ってきているものだと思っている。
声を出すだけありがたいと思って欲しい。
「もう・・・ミナー!」
「なーロッテ、声出すより人に聞いた方が早くないか?この城、無駄に人がいるんだし」
「それ採用!」
ナイスアイディアとばかりにハジャを指で指すと、そのままハジャを引きずって行く。
アイディアは採用するが、ハジャを解放する意思は無いようだ。



「あ、ヒックス君にテンガアールだ」
ロッテの目線を追うと、今の自分と同じようにテンガアールに引きずられているヒックスがいた。
ヒックスと目が合うと、お互いに疲れた中年のような哀愁を滲み出しながら微笑みあう。
ヒックスとは長い友達でいられそうだ。
「うん、ありがとう。屋上行ってみるね」
声無き会話をヒックスとしていると情報が得られたのか、ロッテがハジャを引きずったまま歩き出した。
再びヒックスと微笑み会う。分かり合える友というのはありがたかった。



「あー、ミナ!探したんだから・・・」
屋上に出た途端声を張り上げるロッテ。
屋上の縁を歩いているミナの一番近くに居たのは、フェイだった。
「歩き回ってたから連れて来た」
どうしてお前がという顔をしているハジャに気が付いたフェイが、たまたまだという理由を話してくる。
見つかればそれでいいのか、ロッテは聞いてないようだが。
このまま解放されて掃除の続きをしても良いのだが、なんとなくロッテと同じようにミナの方へと歩いていく。
すると、間抜けにもミナが縁から足を滑らせずり落ちる。
「ミナ!」
ロッテが叫ぶのと同時に、ハジャが一番に駆け寄った。
何故か一番近かったフェイより。
ミナを掴もうとすると、力を振り絞ったミナがぴょんとジャンプする。
ハジャの頭を踏み台にすると、そのままロッテの懐へと帰還する。
「え?」
踏み台にされたハジャは、勢い良く縁を乗り越え湖へと落ちていった。
「またこれかーい!」
落ち慣れた者の余裕か、言葉を残して落ちていく。
「もう、ミナ!危ないことしちゃ駄目でしょ。さっ、部屋へ戻ろう」
ミナを抱きしめると、さっさと屋上を去っていくロッテ。
今目の前で起こった光景が、まるで何とでもない事のように。
そんなロッテが薄情なのか、ハジャが頑丈だと思われているのか、どっちだろうなと思ったのはフェイ。
冷静にそんなことを考えているフェイも十分薄情であったが、とりあえずハジャを回収するためにタイ・ホーの所へ船を 出してもらいに行った。