幻想水滸伝T

第十四話 召使になった宿星

いつもと同じように掃除をしているハジャ。
だがこの後、普段からは考えられないようなことが起きた。
「これからお茶会があるけど、来るか?」
フェイがお茶会などという似つかわしくないことを言い出し、さらにはハジャを誘ってきたのだ。
しかい、メンバーを見た途端、よく解らないがとても納得させられた。
「おお、我が友フェイ・マクドール。ようこそ優雅なティータイムへ」
出迎えたのはヴァンサン・ド・ブールだった。
ヴァンサンの出迎えに、律儀にフェイも似たような言葉で挨拶をかわす。
慣れているような気がするのだが、よくお茶会をしているのだろうか。
「我が友フェイ・マクドール。そちらの身形の乏しい男は、貴方の召使かい?」
「誰が召使だ!」
「気に障ったのならこのヴァンサン、貴族の誇りにかけてあやまろう。下々の者と語りなれていないのだ」
言葉で謝るといってはいるが、一言多い。
これで謝っているつもりなのだろうか。
「俺はどうすれば良いんだ?ヴァンサンを殴れば良いのか?蹴れば良いのか?屋上から突き落とせば良いのか?」
困ったハジャはフェイに尋ねてみるが、どうも様子がおかしい。
「ふふ、我が友ヴァンサン。彼は君のような高貴な人に会ったことが無く、舞い上がっているのさ」
「確かに・・・解放軍に身を寄せているとはいえ、このヴァンサンは元帝国貴族。やはり高貴な雰囲気がにじみ出てしまうのか」
息を口からではなく、鼻から抜きそうな感じで笑いあうヴァンサンとフェイ。
とてもハジャにはついていけない何かが形成されつつある。
このままこの場を去って湖に向かって叫ぼうかとも考えたが、ヴァンサンが余計な事にハジャの分のお茶までいれる。
「下々の者の口に合うかはわからないが、飲みたまえ。我が友フェイ・マクドールの召使」
「お前・・・いつか誰かに刺されるぞ」
どうやらヴァンサンに皮肉は通用しないらしく、意味の無い微笑で返された。



「んで・・・俺を連れて行った意味はあったのか?」
苦痛でしかなかったヴァンサン主催のお茶会を撤退した後、今日の意味をフェイに問いただす。
「無い」
「あ?」
「だから、無い。たまに顔出さないと、しつこく意味の解らない手紙出してくるから」
そう言うとフェイは、疲れた顔で懐から六通ほど手紙を取り出す。
差出人はヴァンサンである。
書きつづられている文章は、意味があるようで全く無い。
しかもその文字は、一文字一文字違った色で書かれている。
「元帝国貴族って・・・あんなのばっかか?」
「そうじゃないと、信じたい。俺も一応、将軍の息子だったし」
そう言ってため息をつく。
どうやらヴァンサンが苦手なのはフェイも一緒のようで、一人で会いに行きたくなかっただけなのだろう。
ハジャは全く巻き込まれただけなのだが、ヴァンサンの相手で疲れたため怒ることもできなかった。