幻想水滸伝T 第十二話 普段着を買った宿星 「ここがカクの町か。見事に漁村だな」 建物が整理して建てられている事は無く。ぽつんぽつんと、好き勝手に建てられている感じである。 そんな村のなかに商店は何件だろう、片手で足りそうだ。 「主な買出しは魚だからな。そっちはヤム・クーたちが行ってるから、俺たちは夕方まで自由行動だ」 一応夕方に船が出るのだが、気楽そうに言う。 瞬きの鏡を持っているフェイは、それに間に合わなくても関係ないからだ。 「ハジャさんは何か予定あるの?」 「普段着を何着か買いに着たんだけど・・・こんな漁村とは思ってなかったからな」 ビッキ−の召喚の失敗で呼ばれてしまったハジャは、普段着や生活用品がほとんど無い。 少しは城の備品やビクトールの物を借りてはいるのだが、それにも限界がある。 「こういうところだから逆にいいんじゃない?都会のよくわからない服より、よっぽど丈夫で機能的なのがあったりとか」 「それもそうだな。どうせ汚れるんだし、安くて丈夫ならなんでも」 フェイの楽しそうな言葉にあっさりと納得する。 どうやらフェイは目的も無くハジャについてくるらしい。 服屋を探しに行こうとするそんな二人を、メグが二人を呼び止める。 「ちょっと待って二人とも、何普通に怖い会話してるのよ。私も着いて行くから!」 どうやらこの町に服屋は一軒だけのようで、その辺の人に聞いたらあっさりと見つかった。 「こういうの、いいんじゃないのか」 「おお、丈夫そうだな」 店に入り全てを見る前に、速攻手近にあった服をとり、ハジャに見せて渡すフェイ。 明らかに笑っているのだが、ハジャはマジ顔だ。 「ちょっと待った!それさっき、浜で漁師のおじさんが着てた奴じゃない」 「漁師御用達か、丈夫そうだな」 「だからその基準がおかしいのよ!」 ハジャが持っていた服を取り上げもとの場所に戻すと、店内を小走りでかけめぐる。 何点かめぼしをつけたのを抱えてもとの場所に戻ってくると、そこに二人は居ない。 どこに行ったのかと店内を見回すと、奥の方で激しく笑っている二人を見つける。 「こんなの絶対、ヴァンサンかミルイヒしか着ないってのに。何でこんな所に!」 「買って帰って着せてみてぇ!」 二人が持っていたのは、何でこんなものを仕入れたのか聞いてみたくなるような奇抜な服。 よく解らないヒラヒラがついていたり、配色も奇妙な色ばかりでおかしいものだった。 気持ちは解らないでもないが、メグはとりあえず力づくで黙らせてみた。 「何しにきたのかな?」 「「俺(ハジャ)の服を買いに来ました」」 拳を握り締めているメグに、口を揃え答える二人・・・少し涙目である。 「ほら、色々とってきたからこの中から選びなさい」 ハジャに拒否権はなかった。 だが、どれが良いのかわからず適当に選ぶことになり、外出用の普段着しか買えなかった。 結局、雑用の仕事中はビクトールの服を借りつづけることになった。 |