幻想水滸伝T

第十話 たらい回しにあった宿星

「騎士たるもの、毎日の訓練は欠かせんのじゃ。とぉー!たりゃー!」
「ファイトです。ご主人様」
普段はクロミミなどが訓練をしている所での、マクシミリアンの年寄りの冷水。
それはともかく、今日もよい天気で、洗濯物もよく渇きそうだ。
乾かす前には、しっかりと洗わなければならないのだが、
「すみません。せっけんがきれそうなので貰って来てもらえますか?」
「うぃーっす」
今日は掃除でなくセイラの洗濯を手伝っていたハジャ。
言われるままに城の倉庫番、ロックの所へ向かった。



「せっけんね。どこやったかな?」
倉庫に入りゴソゴソやりだしたロックを見ながら倉庫を覗き込む。
綺麗と言える範囲でも汚いといえる範囲でもない、中途半端な状態だった。
今度掃除に来るかなと思っていると、ロックが何かを思い出したようで、そうだと言ってくる。
「たしかサンスケさんが以前に、風呂用のと間違えてもっていっちゃったんだ」



「おうおう、間違いにはすぐ気付いたさ」
サンスケが常駐している風呂場に行きせっけんの事を聞くと、すぐに思い出したようで。
「確かフェイが使わないならくれとか言って、持っていったな」
ハジャはそれを聞くとすぐ、フェイの自室に向かうためにエレベーターを目指した。



「あ〜、あのせっけんね。あげてもいいけど」
ちょうど自室に居たフェイに事情を話したのはいいが、明らかに条件付のようである。
「メースに天牙棍鍛えるように預けてあったから、エレベーター使わずにとってきてよ」
「てめぇ・・・」
一応反抗してみたが、
「せっけん、いらないんならいいけど?」
「ちくしょ〜!!」
敗北決定であり、全速力で二階まで降りていった。
数分後天牙棍を片手に戻ってきたハジャは、フェイからせっけんを受け取ったが、その際に気になる一言を聞いた。
「多分、もう必要ないと思うけど」



「セイラさん、せっけんもらってきまし・・・た?」
走って戻ってきたハジャの目の前に広がる光景は、竿に干された沢山の洗濯物。
「すみません。せっけん、足りたのでいらなかったです」
「マジっすか?!」
それぐらいのことで怒れるはずも無く、曖昧な笑みを浮かべる。
「私、洗濯好きなんですけれど、どうもせっけんの使う量とかよく解ってないみたいで。以前もフェイさんに、同じようなことをたのんでしまって」
セイラの言葉で、フェイが言っていた一言を理解する。
以前も頼まれたフェイは、たらいまわしにされた挙句せっけんは足りていたということだ。
意味も無く疲れてしまったが、それでも今日は洗濯日和だった。