幻想水滸伝T

第九話 刻まれていた宿星

約束の石板を磨く。・・・磨く。・・・・・・磨く。
「君は、一体何がしたいんだ?」
しつこくいつまでも石板を磨きつづけるハジャに、呆れ顔でルックが話し掛ける。
「いや・・・俺の名前が入ってないから、埋もれてるんじゃないかと」
「あるわけ無いだろ」
言われてみれば先ほどから磨いているのは、名前が刻まれている表以外の場所である。
さっさと出て行くようにと、犬を追い払うかのように追い払われる。
しかし、あるはずだと駄々をこねていると、ルックの紋章が光りだした。
「風の紋章よ」
力ずくで追い出された。



「絶対、後で何か奢りなさいよ!」
「解ってるから頼む。このとおりだ」
このままで諦められるはずも無く、ハジャはメグを連れて再び石板が置いてある部屋の前まで来ていた。
メグにルックを誘い出してもらい、石板に近づく作戦である。
ハジャは見つからないように隠れていると、メグがうまい事ルックを連れ出したのを確認する。
すぐさま部屋に忍び込む。
「今度こそ。準備は万端だ」
先ほどは掃除にかこつけていたため雑巾で磨いていたが、今回は金だわしやヤスリなど道具を揃えてきている。
とりあえず金だわしで磨く。・・・磨く。・・・・・・磨く。
「くそ!」
磨いても磨いても出てこない。だが、無いからといって諦めるのもなんだか悔しい。
持ってきた道具のうちの最終兵器。石材切り出し様のナイフを取り出しニヤリと笑う。
「なきゃ、掘り込むまでだ」
「何を、掘り込むって?」
いきなり声を掛けられビクリと振るえるハジャ。
・・・この声の主は今、メグの相手をしているはずだが。
そ〜っと振り向くと、そこには頬を引きつらせたルックと、その向こうで両手を合わせごめんのポーズをとっているメグ。
「飾りっ気がないから、彫りこみ細工でもと」
言い訳は通用しなかった。
今度は追い出されるだけでなく、しっかりとお仕置きが付け加えられていた。



「全く・・・何を考えているのか」
風の紋章をフルパワーで使い、ほっと息をつくと何かが倒れた大きな音と共に振動がズンと伝わる。
しまったと思い音のしたほうを見ると、そこには倒れた石板があった。
「しまった。手加減しそこ・・・あっ」
倒れた石板の底に、なにやら掘り込みがしてあった。
それは表にある宿星の続きのようで「天迷星 ハジャ」とあったが、ルックはとりあえず見なかったことにした。
そして、石板を立て直すために城の力自慢を呼び出した。