幻想水滸伝T

第七話 意地を張り合った宿星

雑用で走りまわる合間に、ハジャがマリーの酒場に寄ることは珍しくない。
今日も少し言付けを頼まれたので寄ってみる。
マリーの姿が見えないが、気にせず冷たいものを頼むと返事が返ってくる。
テーブルに着くと、よく確認もせず出された飲み物を口につける。
「まずっ!」
どろっとした感触に、青臭い臭いのためそのまま吐き出す。
「おや、口に合わなかったかい?グレミオさんに東方の珍しい飲み物貰ったから、試しに飲んでもらってるんだけど」
未だ吐き気のする胸を抑えつつまわりを見渡すと、自分と同じように気分の悪くなっていそうなものがちらほら。
「ふっふっふ・・・このどろっとした感触と、どうしようもない青臭さが解らないとは。まだまだ、子供だね」
勝ち誇りつつも震えている声のしたほうを見ると、大ジョッキの青汁を片手に持っているフェイがいた。
「見栄張るなよ。明らかに顔色悪いぞ」
「おやおや、昼間なのに負け犬が」
「マリー、俺も大ジョッキでくれ」
どう聞けばそう聞こえるのか解らないが、フェイの馬鹿な挑発にあっさりと乗る。
「それじゃあ、一気飲みで勝負といくか」
どちらも後には引けないという顔をしていた。



用意ドンの合図で始まった青汁早飲み競争。
審判は、わざわざこれだけのために呼ばれたフリック。何で俺がとぶつぶつ言っている。
大ジョッキから青汁が口に流れ込むに連れて、二人の顔色もどんどん青くなっていく。
「「飲んだー!!」」
飲み終わりジョッキをテーブルに叩きつけるのは、同時なのか音が一つ。
二人もそう思ったのか、審判であるフリックをそのつもりは無いだろうが、荒んだ目で睨み付ける。
「同着だ。もう一度やり直しだな」
フリックの言葉を聞き、今度はお互いをにらみ合うフェイとハジャ。
マリーにもう一杯頼もうと口を開けた瞬間に、両手で口をふさぐ。
明らかに、焦っている。
すばやく状況を察したものは、二人から距離を取り始める。
駆け出した二人が向かったのは同じ場所。・・・トイレだった。
「・・・・・まずい。もう一杯」
二人が駆け抜けたテーブルのうちの一つ。
そこで青汁を飲んでいたハンフリーは、マリーにおかわりを頼む。
言葉とは裏腹に、青汁を気に入ったようだ。