幻想水滸伝T

第六話 戦士の意味を知った宿星

「夢の国を探す君の名を〜っとくらぁ」
今日も今日とて、モップとバケツを片手に城を掃除して回るハジャ。
すると、前方から走ってくる人影。
「ハジャ君、ヒックス見なかった?」
「いや。見てないけど」
ハジャの返答を聞くとそのまま走って何処かへ行ってしまうテンガアール。
また、ヒックスが練習をさぼったのだろう。
戦士になるのも大変だなと思いつつ、掃除道具が入っているロッカーを開けると大きく目を見開く。
隠れていたヒックスを見つけてしまったのだ。
「こ・・・こんにちは、ハジャさん」
「それが、戦士のすることかい」
ハジャの言葉に曖昧な笑みをうかべるヒックス。
慌てて隠れたせいか、落ちてきた雑巾を頭にひっかからせている姿は、なんともいえないものがあった。



「本当にばれないでしょうか?」
「練習をサボって、掃除してるとは思わないだろ」
ヒックスにバンダナをほっかむりにさせ、廊下の掃除を再開する。
怪しいことこうのうえないが、たとえ見つかったとしてもハジャには関係のないことでもある。
黙って掃除をしていると、チラチラとヒックスがハジャを見てくる。
「なんだ?聞きたいことでもあるのか?」
チラチラ見られることが嫌な感じがするので、ハジャからくちびを切ってみる。
「えっと・・・その、戦士って何だと思いますか?」
「何って聞かれても、俺はただの雑用だし。そういう事は、フリックとかに聞いた方がいいんじゃないかな。戦士の村とか言う所の先輩なんだろ?」
そうですよねと小さな声を放つと、沈黙が場を占める。
床をごしごしやっていると、さっきとは逆の方向からテンガアールが走ってくる。
引換えしてきたのだろうから当たり前だが、ヒックスは身を縮めている。
「あっちにもヒックス居なかったよ。全く、練習サボって何処行っちゃったんだろ」
「何処行ったんだろうな」
白々しくもとぼけるが、いちいちヒックスがビクッとする。
面白くはあるが、少しひやひやとする。
「突然だけど、戦士って何だと思う?」
本当に唐突だが気になったので、先ほどヒックスにされた質問をそのままテンガアールにしてみる。
「え?・・そうだね。好きな人を護ってる人、かな・・・ほらやっぱり女の子なら、大好きな人に護ってもらいたいじゃない?」
少し照れ笑いをした後、ヒックスを探すからと走っていってしまう。
「戦士って、そういうものらしいぞ」
「すいません、ハジャさん。僕、用事を思い出したので!」
何かを決意したようにまくし立てると、ハジャにモップを渡して走っていってしまう。
残されたハジャは、走り去るヒックスが見えなくなった後で、モップを振り回し精一杯悔しがって見せた。
僻みであった。