幻想水滸伝T

第五話 メグの夢を知った宿星

「ちょっとでいいからさ。聞いてみてよ」
「何で俺がそんなこと」
モップで床を磨きながら話し合っているのは、ハジャとメグ。
頼まれ事の内容は、メグにからくりを教えてくれない理由をからくり師のジュッポから聞いて欲しいということだ。
「だから私が、手伝ってるんじゃない。それに二日酔いを看病したのは、誰かな〜?」
普段決して使わないような、低い声でおどされる。
断れないことは無いが、なんとなく後が怖く首を縦に振ってしまった。



「っと、言うわけで聞きに来ました」
「唐突だな、お前は・・・」
連絡も無しにやってきたのだが、運良くジュッポは仕事場にいた。
ここに来た理由を簡単に説明した。
「唐突はともかく、メグ曰く「他人になら話しやすいんじゃないかな」だってさ」
「理由、ねぇ・・・」
そう言った後、ハジャに背を向けて理由を考え出す。
背を向けられたハジャは、他人だからこそ話せないこともあるんじゃないかと思った。
「まあ、アレだ。別にからくり師が駄目って訳じゃないんだが・・・」
とりあえず、ふんふんと頷きながら聞いてみる。
「メグはまだ子供だ。知らなきゃいけないことがたくさんあるんだ。将来からくり師になるにしても、今は広い世界を見て、聞いて体験して欲しいんだ。」
背中を向けた理由は照れているのだろうが、そんなことはお構いなしにハジャはそれじゃあと仕事場を後にする。



「それでそれで、どうだったの?」
期待を目一杯に広げている所に悪い気がするが、要約して内容を伝える。
「メグはまだ子供だから駄目だってさ」
「うそ・・・」
間違ってはいないが正確ではない言葉を聞いたメグは、走って何処かへ行ってしまう。
正確に伝えるべきだったかなと思いつつ、掃除を再開する。
だがしばらく後に、正確に伝えるべきだったと後悔することになる。
メグが向かった先はジュッポの仕事場で、理由を正確に聞くと真っ先にハジャの元へ仕返しにきたのだった。