幻想水滸伝T

第四話 夜の紋章と知り合った宿星

「何してもいいが・・・ただ、これだけには絶対に触るなよ」
ビクトールの部屋に転がり込み真っ先に言われた事があった。
彼の剣、星辰剣という名らしいが、それに絶対に触らないことだった。
だが今、ココにビクトールは居ない。ちょっとぐらいならという気持ちが間違いであった。
「うわ、けっこう重い。それにしても・・・気持ち悪い掘り込みだな」
持ってみると思ったよりもずっと重く、両手持ちの剣らしいが際立っているのはツカにある奇妙な顔。
「小童!黙っていれば言いたい放題。みのほどを知らぬか!!」
「け、剣が喋った!」
呆然としつつ星辰剣の小言を聞いていると、ドアが開きビクトールが顔を出す。
「おいハジャ、風呂に・・・げっ!」
「ビクトール、パス!」
小言が煩かったので、喋りつづける星辰剣をビクトール目掛けて投げる。
当たり前だが、ビクトールは体を半身にそらし星辰剣の切っ先をかわした。
「小童にビクトール・・・」
壁に突き刺さった星辰剣は、たいそうご立腹のようで。
「「逃げろー!!」」
二人は逃げ出した。



「人の分際で夜の紋章の化身に刃向うとどうなるか、教えてくれるわ!」
投げつけられたわけでもないのに、廊下を飛びつづける一本の剣。
その先には、逃げつづけているハジャとビクトール。
「さわるなって言っただろうが!寝たジジイを起しやがって!」
「あんな奇妙な剣、気になって当たり前じゃないか!」
「小童、一度ならず二度までも。このわしを侮辱するとは、万事に値する!」
「イッテェ!チクっときたチクっと」
ハジャの余計な一言で、さらに剣のスピードがアップ。
そのまま、ハジャの尻に刺さった。
「こんな小童を部屋に置いた貴様も、同罪だ!」
「イッテェ、俺まで刺すなくそジジイ!」
刺されたことで二人の走るスピードが上がり、負けじと星辰剣のスピードも上がる。
そんなことを繰り返したため二人の体力が底をついても、星辰剣の気がすむまで追いまわされることになった。
そして城中をビクトールと二人で星辰剣においまわされたことで、ハジャの名がそこそこ知れまわることになる。