幻想水滸伝T

第二話 また闇に沈んだ宿星

「暗いの嫌だ。静かなの、怖いよ〜」
エンレードル城の地下一階の牢屋には今、生ける屍と化した少年が涙で袖を濡らしていた。
逐一何処かで滴る水音に、ビクリと反応することが哀れみを誘う。
結局湖に落ちた後救出はされたのだが、気がついた途端、動物的感を総動員してフェイに襲い掛かかったため、今度は死の指先により闇に消えかけたことが完璧なトラウマとなっている。
「ね〜、ハジャさん。人の話聞いてる?」
ハジャに話し掛けているのはメグだが、聞こえていないのか泣き続けている。
「だ〜か〜ら〜!マッシュさんの出した条件さえのめば、ココから出ていいんだってば」
ハジャがメグの存在に気付くのは一時間後なのだが、気付かせるためにメグはハジャ目掛けてナイフを投げたとか。



「うぅ・・・何で、俺が」
「仮にも軍主に手を出したんだから、しょうがないんじゃないの?」
マッシュが出した条件とは、雑用係りとして働けば一応牢から出すという単純なもの。
問答無用で殺されかければ、フェイに襲い掛かった理由も解るというものであった。
今は一階の階段にいるのだが、この広い城をくまなく掃除しろというのも無理がある。
「それじゃあ、私いくから」
「待ってくれ。一人は嫌だー。いかないでー!」
「ちょっ、雑巾絞った手でさわらないでよ!」
縋りつくハジャを足蹴にするメグだが、なおも食い下がるハジャに奥の手をあっさりと出す。
「からくり君六号!」
ポケットから手のひらサイズの人形を取り出すと、ハジャ目掛けて投げつける。
人形はハジャの顔に張り付くと、小さな爆発を起した。
「ば・・・爆発も嫌だ。」
「なんで?どうして爆発なんか・・・あー、しっかりしてハジャさん!」
ハジャはそのまま、本日三回目、今度は爆発により気を失った。



「坊ちゃん、なんだかご機嫌ですね?」
「まーね」
自室でお茶をしながら楽しそうに鼻歌を歌っていれば、グレミオでなくとも解る。
わざわざ解った?などと聞き返さない。
「これからは、もっと楽しくなりそうなんだ」
「そうですか。それはよかったですね」
グレミオと二人でさわやかに笑いあうが、よかったのはフェイただ一人だけ。
そして、それを知っているのも、フェイただ一人だけであった。