long long stairs

第九話 カヲル、来日


それぞれをネットワークで繋げられた仮想空間。
無駄な情報を一切排された空間に浮かび上がる老人達の視線は、ぐるりと取り囲んだ一ヶ所へと集まっていた。
そこに映し出されるは、紫色に身を染めたエヴァンゲリオン初号機。
ただし、右腕が失われていた。

「由々しき事態である」

ゼーレ議長であるキールの言葉で、初号機が動き始めた。
ボコボコと細胞が目に見えるように増殖していき、一瞬で再生してしまう。
再生した腕が狙うのは、第四使徒シャムシエルのコアだった。
手首の甲にある穴から放たれた光のパイルが、コアを打ち抜いてシャムシエルを沈黙させた。

映像が一旦ブチッと途切れ、新たに映し出された初号機は走っていた。
紫から赤く発熱するほどに速く走り、一瞬の閃光をかわして尚走り続けている。
その先に居るのは第五使徒ラミエル、そちらもエネルギー過剰生成で青い身を赤く染めていく。
両者が激突する一歩手前で画面が完全にホワイトアウトした。
それが明けた頃、右手から光の鞭を伸ばしてラミエルを貫いた初号機。

「身の程を知らぬ模造品が、無謀にも昇り始めたと言うことか」

「やはり碇をネルフ司令の座につけたのが間違いだ。情報の漏洩など真っ赤な嘘、奴が自ら模造品を資格者に仕立て上げたのだ!」

「いや、そう考えるのは尚早だとおもがね」

「何故だ。事実奴が用意した初号機が力を発揮しているではないか!」

全くの正論ではあるが、尚早と答えた老人は冷静だった。

「仮に碇君が息子を資格者にしたとして、何故こうも早くばらす必要がある。彼ならもっと長く隠し通せるはずだよ」

「ぐっ、それは・・・」

碇ゲンドウと言う人物を知っているからこそ、反論ができなかった。
状況的には疑いをかけるのが当然であるにもかかわらず、当人の性格上ありえない状況でもある。
より確率の高い意見をとるのなら、後者である。

「それに、我々は勘違いをしていたのかもしれない」

ゲンドウを弁護した老人が言葉を続けた。

「神の使いである使徒。彼らが持ちし生命の実は、倒した本人にしか手に入れることが出来ない可能性がある」

「つまり、碇の息子はそうと知らずに力を使っていると」

キール議長が認めるような発言をしたため、ざわついた。
もしそれが本当ならば、すでに生命の実を三つも模造品が手に入れてしまった事になるからだ。

「では議長」

「我らが作り上げし資格者、ファーストチルドレンをここに」

一拍の間を置いての宣言により、老人達の中央に一人の少年が浮かび上がった。
色薄く光にかざせば煌く銀に昇華しそうな灰色の髪、切れる様な眼差しに浮かぶは深紅の瞳。
少年は薄く笑って、初号機とそのパイロットであるシンジの映像を見上げた。

第三使徒を殴り続けるエヴァ、その中で必至に叫ぶシンジ。
第四使徒を前にして市民を手に撤退するエヴァ、その中で悔しげに唇をかむシンジ。
第五使徒の閃光に対し臆する事無く突き進むエヴァ、その中でただ一点を見つめているシンジ。
少年―――渚カヲルの笑みが深まった。

「すでに話は聞いていよう。ネルフ日本支部に向かい、使徒の証たる生命の実を手に入れるのだ」

「了解、しました」

受け答えは確かにしたのだが、カヲルの視線は初号機とシンジに釘付けられていた。
誰もそれを咎める事無く、やがてカヲルが自ら視線を離した。

「では、準備がありますので」

ふっと闇にカヲルが溶けていった。
しばしの沈黙の後、キールが議会を続けた。

「これで生命の実の件についてはよかろう。だが、碇には鈴を付けておく必要がある」

「初号機の力の発現。この報告を怠った事実はいかんよ」

「議長、その件に関しましては、私のほうから鈴を出しておきましょう。心当たりがあります」

いやらしく笑い意見を出したのは、常にゲンドウを忌み嫌うあの老人であった。

「よかろう。君の方から鈴を出してもらおう」

「ありがとうございます。それでは、早速手配をしますかな」

老人が先ほどのカヲルのように消えて行ってから、議会内に僅かな嘲笑が生まれた。
彼がゲンドウを嫌っている事は周知の事実だ。
だが、彼の言う心当たりも周知の事であり、まずあの鈴が鳴り響く事が性格上ありえないからだ。
部下の性格すら掴めていない彼が消えるのはそう遠くない。
そして、その代わりに椅子に座っているのは、ゲンドウとなる事だろう。

「しかし、よろしいのですかな議長。鳴らぬ鈴などすでに鈴ですらない」

「かまわぬ。鈴であるという事だけが伝われば、その意味の解らぬゲンドウでもあるまい」

警告はする。だが、まだ今は手を出さないと言う意味であった。

「ネルフの運営は、ゲンドウ抜きで行えるものではない」









大海原を裂く様に進む戦艦や大型空母。
そのうちの一隻は、甲板に大きくカバーがかけられており特別な改造を受けている事がわかる。
ある物を運ばせる為だけの為に作り変えられた船。
カバーによって隠されている物こそ、エヴァンゲリオンの零号機であった。

そのパイロットの渚カヲルはと言うと、ある船の船首、落ちてしまいそうなほどの縁に立っていた。
学生服と言う戦艦と言う場に全くそぐわぬ恰好、さらに彼が口ずさむのはよろこびの歌。
何もかもが場違いな彼は、何を想うのか歌い続ける。
確かな事は、その眼差しが海を見るのではなく遥か彼方を見ていると言う事だった。

「やあ、なかなか上手いじゃないか」

一定のリズムを持った拍手を持ち合わせて歩いてくる一人の男。
顔見知り、名目上現時点での保護者である彼―――加持リョウジにカヲルは振り向いた。
柔らかな髪が流れるようになびく。

「僕の力ではありません。歌が本来持つ力、僕はその力を借りているにすぎない」

「そうか」

謙遜ですらない否定の言葉に、少し面食らう。

「それでもそんな歌を歌うぐらいだ。良いことでもあったんじゃないのかい?」

「もうすぐ、碇シンジ君に会えるからです」

即答に近く、再び海原の彼方に目を向けて答えたカヲル。
先ほどからずっと見ていた彼方の方角は、第三新東京市だったらしい。

「初搭乗で高シンクロ率をたたき出し、すでに三体もの使徒を倒したセカンドチルドレンか」

興味深そうに目を細め、カヲルと同じように第三新東京市があるであろう方角を見た。
すでに三十を迎えたはずの男だが、その瞳の置くには抑えきれない好奇心がうかがい知れる。
カヲルは加持の鈴としての仕事を知っているものの、あえてそこに触れるような事はなかった。
鈴が鈴たるべきかどうかは、鈴に決めさせれば良いからだ。

「世界でたった二人のチルドレン」

カヲルは心の中で、チルドレンを資格者と言う言葉に置き換えた。

「その一人が僕で、もう一人が碇シンジ君。会ってみたいと僕の心が揺れるのも仕方の無い事ですよ」

「まるでこれから恋人にでも会うような言い方だな」

茶化して言ったつもりが返答は、言葉ではなく笑みだった。
奇麗なと表現できてしまうほどの微笑だが、そこから覗く赤い瞳がより際立つ。

加持は吸い込まれるように、君は一体何者なんだと問いかけそうになった。
世界の脅威である使徒を倒す為に作り上げられたネルフ、その上位組織であるゼーレ。
秘蔵っ子とも言えるカヲルは、ゼーレと言う組織の核心に限りなく近い所に居るはずだからだ。
だが、まだその時ではないと何とか踏みとどまる。

「そこは否定する所なんだがな」

なんとか言葉をごまかせた時、遠くで上がる水柱に大きく揺れた空母。
次々と上がる水柱に何事かと視線をよこす。

「なんだ。水中衝撃波か?」

疑問でしかない加持の呟きに、カヲルは黙って頷いた。
次に水柱が上がったのは護衛艦が丁度あった場所、水柱は何かが船にぶつかったものだった。
飛び散る水しぶきの間から、僅かに見えたのは白く大きな何かとしか認識できなかった。
しかし、戦艦を何隻も沈め続けるような存在はそういくつもあるはずがない。

「使徒、しかし何故ここに!」

疑問を悠長に解いている暇は無かった。
驚きの声を上げている間にも水柱が上がるごとに沈んでいく戦艦、今は考えるより行動だった。

「加持さん、僕はエヴァを出します。ブリッジの方をよろしくお願いします」

「わかった。無理をするんじゃないぞ」

自らのエヴァが置いてある艦へと走り出したカヲル。
そんなカヲルを見送りつつ、加持は呟いた。

「こんな所に使徒襲来とは、あれを狙ってきたと考えるのが妥当か」

加持の視線の先はカヲルのエヴァの方ではなかった。









艦の内外を問わずに鳴り響く警報音。
その大音量に負けないようにと思っているのか、それ以上の大音量で声が叫ばれるブリッジ。
敵が見えないわけではない、ただ見えても正体が不明と言う事で大した対処が行えなかった。
アンノウンとしか言いようのない相手、使徒だったからだ。

「まさかこの歳になってからあんな物を見せ付けられるとはな」

「もう20年早ければ冒険家にでもなってましたか?」

「いや、今からでも遅くはあるまい」

顔に冷や汗を出しつつ、僅かに口の端をあげた艦長と副艦長。
何も無駄口のつもりはない、冷静な対処を行う為に余裕を持とうとした軽口だったが、無駄だった。
使徒相手では何が有効とも解るはずもなく、できる事と言えば、

「全艦任意に迎撃」

ありきたりな命令だけだった。

使徒が泳ぐ事により出来る水しぶきに向かって、各艦から魚雷が次々と発射されていく。
魚雷の爆発による水柱と、使徒による水しぶきには誤差が見て取れた。
だが確実にダメージは与えられたはずだと誰もが思ったものの、使徒のスピードが落ちる事はなかった。
やがて、水しぶきが進む先に居た一隻の戦艦が、非常識にも真っ二つに割れ四散していった。
そして何かを探すかのように、ふらふらと使徒は次の艦へと突き進んでいく。

「何故だ、何故沈まん!」

「この程度じゃ、ATフィールドは破れないか」

艦長の怒声に続いた呟きに、ブリッジの時間が一瞬だが止まった。

「加持君、君をブリッジに招待した覚えはないぞ!」

「どうも、艦長」

こんな時にも軽く手を上げ笑ってみせる加持。
何を根拠にそう思っているのか、どう見ても何とかなると思って本気で笑っている。

「この際細かい事は置いておいて、早いとこネルフに指揮権を譲渡してくれませんかね」

「駄目だ、あんな人形に何が出来る。それに海の上は我々の管轄だ!」

「管轄ですか。そう言われるとこちらも引き下がるしかないのですが、良いんですか?」

加持が視線を向けた彼らが言う海の上では、また一隻の戦艦が二つに折れ沈んでいった。

「今沈んで行ってるのは、セカンドインパクト前からのお仲間でしょうに」

艦長の顔色が、苦渋に染められた。
これは強制ではないが、加持からの忠告でもあったからだ。
貴方が意地を張っていればいるほど、仲間が死んで言ってしまうという。
説得まで後一歩と言うところで、艦長の背を押す言葉が聞こえてきた。

『オセローより入電、エヴァ零号機起動中』

「なんだと!」

艦長が顔を向けたのは、エヴァ零号機が収められた改造艦。
起動した証拠であるかのように、被せられたカバーが山型に盛り上がっていく。
つられる様に、何故か今までフラフラと手近な艦を沈めていっていた使徒の動きが定まった。
零号機の乗る改造艦に向かっていく。

「いかん、全艦使徒を足止めだ。零号機は直ちにその艦から離脱!」

『了解、ご協力感謝いたします。艦長』

ギリギリの一線で艦長の腹がきまり、通信でカヲルから感謝の意が伝えられる。
そして、この場にいる全員が零号機に目を奪われる事となった。

使徒が作り出す水しぶきが改造艦にぶつかる直前に、大きく跳んだ零号機。
空中で掛けられていたカバーを殴り捨て、大きく開くのは翼。
純白と呼ぶに相応しい色が、その翼だけではなくボディにまで広がっていた。
使徒と呼称される異形の怪物と、エヴァンゲリオンと呼称される人造人間、どちらがより天使となりうるだろうか。
人が作り上げてきたイメージを具現化するのなら、零号機は紛れも無く天使であった。

「さてと、俺の仕事はここまでだ。武運を祈ってるよ渚カヲル君」

唯一天使に心を奪われなかった加持だけが、静かに気付かれることなくブリッジを去っていった。





人々の心を鷲づかみにするほどに優美に翼を広げた零号機だが、その姿も長くは続かなかった。
はるか足元では輸送されていた改造艦が使徒により破壊されている。
零号機は足場を求め、フラフラと別の艦へと滑空していった。
端的に言えば、自重を支えきれずに落ちた。

「飛べない翼か、滑稽だね」

少し怒りの混じった開発者への恨み言だった。
ドイツに居た頃にも何度か飛翔の実験はしていたが酷く燃費が悪く、長い時間自重を支え続ける事も出来ない。
最初五分は会ったはずの電源が数秒で三分にまで減り、今は無様に艦に膝を付いている。
外部電源のないこのような特殊な状況下では致命的である。

「恐らく外部電源の無いここでは、短期決戦しかない」

そうするにしても普通の艦では足場がないと見渡し、目に入った大型空母。

『パイロット聞こえるか、私はこの艦隊の総指揮をとるものだ。我々は何を協力すればいい?』

「少し足場をお借りするために、貴艦への着艦許可をいただきたい」

『解った着艦方法は任せる。こちらは少しでも奴の気をそらす為攻撃を続行する』

「お願いします」

再び今いる艦へと使徒が方向を転換した。
跳躍するのと同時に艦が破壊され、今度は翼を使わずに艦から艦へと跳ぶ零号機。

使徒もすぐさま零号機を追い方向を変えようとするが、次々と魚雷が打ち込まれていく。
ダメージは無くとも、嫌がらせぐらいにはなるだろう。
そして、使徒に魚雷が打ち込まれていく様を見て、カヲルがそういうことかと笑った。
艦隊司令には感謝をしなければならない、足止めにと魚雷を打ち込んでくれたおかげで使徒の力が見えたのだ。

「零号機着艦します。衝撃に備えてください」

零号機が着艦すると同時に、大型空母が大きく傾いた。
これでもかなりの力を膝で緩和したつもりなのだが、持ち上がった方に体重をかけて傾きを打ち消した。

『パイロット、この艦は少々壊れても沈みはせん。気にせず戦え!』

「重ね重ね、感謝します」

カヲルはウェポンラックからプログレッシブナイフを取り出すと、右手に持ち無造作に構えた。
シンジの初号機での構えと比べると、幾分隙が多いように見える。
だが底知れぬ凄みという曖昧な物はカヲルの方が上だった。

「さあガギエル、おいで。この世界に埋め込まれた使徒と言う種。僕達は芽吹くべきではなかったんだよ」

その独白に答えるような声無き叫びをカヲルは確かに聞いた。

大型空母へと向かってくる使徒、ガギエル。
まだガギエルが泳ぐ時に作り出す水しぶきは遥か前方だが、カヲルは右手を引き、左手を前へと突き出した。
心が繋がっているかのように、カヲルはガギエルの中で膨らむ力を感じた。

カヲルも同じように力を込めて発生した光の壁、ATフィールド。
フィールドに何かがぶつかり空母の目前に大きな水柱が立ち昇った、ガギエルの力である衝撃波だった。
艦に直接体当たりをしていたのではなく、衝撃波でもろくしてから突き破っていたのだ。
その証拠に、足止めに打ち出されていた魚雷が水面が激しく揺らぐのと同時爆発していた。

水柱が宙で散らばり、大粒の水滴となって降り注ぐ。
零号機は降り注ぐ水滴を気にもせず、向かってくるガギエルを見据えた。
力が効かないとなれば残された手段は一つ。

「体当たり・・・決着をつけようか」

海面に発生していたガギエルの水しぶきが収まった。
普通にユラユラと揺らめく海。
その一部が盛り上がり、すぐさま真っ白なからだのガギエルが零号機目掛けて海面から飛び出した。

零号機は身を低くしてかわす変わりに、プログレッシブナイフをガギエルの体に走らせた。
ガギエル自身の勢いもあり、スパンっと一直線に入った切れ込み。
そこから覗く赤い球にカヲルは手を伸ばし、引きちぎった。
全ては一瞬の出来事で、命が消えて海面に叩きつけられたガギエルが静かに海へと沈んでいく。

「ゆっくりとお休みガギエル」

神を通じてではなく、ガギエルの為だけに祈りの言葉をささげる。
次いで起こる海からの閃光と嵐のような波。
木の葉のように揺れる空母を零号機で必至に安定させる。

「でも、できれば僕はもう少しだけここにいたいんだ。彼が、碇シンジ君がいるから」

祈りが願いへと変わっていく。

「常に孤独だった僕が、孤独から脱する事ができるかもしれないんだ」









ただ広く、最低限の光源だけが持ち込まれたネルフの司令室。
今そこには二人の男が立っていた。
当然のように一人はゲンドウであり、もう一人は加持だった。

「いやはや、波瀾に満ちた船旅でしたよ」

二人が挟む執務机の上に置かれたのは一つのケースバッグ。
厳重に封が成されたそれを、ゲンドウは加持の言葉に反応する事無く静かに見ていた。

「やはり、これのせいですか?」

また何も答えないゲンドウだが、加持の方が勝手に言葉を続けた。
ケースを開けて中のものを見せる。
その中には人の胎児のような物が収められていた。

「すでにここまで復元されています。硬化ベークライトで固めてありますが、生きてます。まちがいなく」

今までゲンドウに顔を向けていた加持だが、ケースの方に顔を向けた。

「現人神計画の要ですか?」

「そうだ。最初の人間アダムだよ」

ようやく加持に顔を向けて言葉を発したゲンドウだが、すぐさまアダムに視線を奪われていく。
加持の方もこれ以上長居をしても有益な会話はないと判断し、礼もせず退室していった。

用心をして加持が退室してから約十分後、一人の少年が加持と同じように礼もせず司令室に入ってくる。
その様な事をできるのはシンジしかいない。
だまって父の元まで歩いていくと、机の上のアダムを見た。
硬化ベークライトで固めてあるはずなのに、シンジはアダムと目があった気がした。

「さっきの人、信用できるの?」

自分でもアダムから気をそらす為の会話だとは気付いていた。

「信用しているわけではない。使えるから使っているまでだ」

予想通りと言えば予想通りの返答。
ゲンドウの方もシンジがアダムに動揺を強いられていると気付いていた。
シンジが再びアダムを直視するのをじっと待った。

「これがアダム。計画の要、俺達の希望」

「レイ、ユイ・・・もうすぐだ」

言葉はシンジのものだが、その言葉に希望が込められているのは間違いなかった。