Get Two

第八球:天国なんてあるのかな

 

「茉凛ちゃん、たっだいま〜!」

 

目の前で琥珀が玄関の扉を開けて家へと入っていく

それは普通のことなんだけど、これから部活で疲れた体に鞭打って飯を作るとはいえ

ものすげぇやっかいな予感がする

この家で厄介事が起こらない日のほうが少ないことには涙が出るが

 

「ただいま」

 

「お帰りなさいませ鋼さま」

 

「はーちゃんお帰り」

 

俺は玄関にいた二人を見た途端無言のまま玄関をくぐらずに扉を閉める

知らない人じゃないことは確かだ・・知ってる顔だ

でも親しいわけでもない、結局は考えていても仕方が無い再び扉を開け今度は玄関に入る

 

「どうかなさいましたか鋼様」

 

玄関を入ったり出たり、また入ったりと行動を不信に思ったのか首をかしげている四葉と茉凛さん

多分通ってるであろう学校の制服の上にエプロンをつけている四葉

台所から漂ってくる匂いからして夕飯でも作っていたんだろうな

 

「ご飯になさいますかそれともお風呂ですか?」

 

四葉の問に無言のまま再び外へ出ると携帯を取り出しリダイヤルをポン

確か最後に掛けたのは双葉のはずだ

 

プルルルル・・・プルルルル・・・ガチャ

 

「お前の意見は無視だ来い!!」

 

再び玄関をくぐった俺はぎこちない笑顔で風呂だと答えた

 

 

 

古人曰く『風呂は命の洗濯だ』と・・

いいか、風呂ってのは以外に危険が多いのだ

真冬の風呂が何故か水だったり、シャワーが急に熱湯になったり

何が言いたいのかというと風呂ではどうでも良いことを考えてしまう・・・それだけなんだけど

 

「鋼様、お着替えここに置いておきますわ」

 

「へいへい」

 

くもりガラスの向こうから四葉が話し掛けてくる

よくよく考えれば今えらい状況になってんな

クラスの奴らにでも知られればまためんどくせえことになりそうだし

後で琥珀にクギさしとくかな

 

ピンポーン

 

「はーい、少々お待ちくださいませ」

 

ってお前が出るんかい!

茉凛さんはまだしも琥珀はなにやってんだ、知りたくも無いが

双葉がきたようなので風呂を上がりバスタオルで体を拭いていると聞こえてくる会話

 

「疲れて帰ってくる夫に出迎える妻、古風なことだねぇ」

 

「そんな私は鋼様に着いて行くだけですわ」

 

風呂場から顔を覗かせて玄関を覗くとそこには両手を頬に当て体をくねらせる四葉と何故か居るメガネ

何故お前がそこに居る、俺が呼んだのは双葉のはずだ

 

「鋼、あんたの携帯部活中にちょっと借りたから」

 

ふらりと目の前に現れぼそっと言葉を残し去った琥珀・・・

やっぱりお前のせいか!!

お前絶対わざとだろ、そもそもメガネにどんな用があったんだ!

服を着るとすでに連絡網を使って現状を伝えようとするメガネを一瞬で気絶させ拉致る

四葉が何か言っているが無視してメガネを俺の部屋に連れ込み今度こそ双葉に連絡をする

・・・人生って難しい、むしろ妨害者がおおすぎねえか?

 

 

 

「ふむ・・つまり双葉の妹の四葉とやらが押しかけ女房きどりだと」

 

「そうだったのか」

 

「はーちゃん気付いてなかったんだ」

 

どちらかと言うと気付かないように思考をそらしてました!

双葉が来た事で急遽四葉対策本部が置かれた

メンバーは被害者でもある俺と被疑者の親族の双葉そして加害者になりかねない危険人物メガネ

メガネは幾度と無く連絡網でクラスに報告しようとしたので今は簀巻きにしてある

 

「とりあえず対策を練るには相手の情報だな」

 

メガネは簀巻きにされた状態でなにやらゴソゴソしだすとあるものを取り出す

 

「ティケティコン♪困った時のメガネメモ〜」

 

簀巻きにされた状態でどうやって取り出したかは聞いてはいけない気がする

例えメガネが起用に口で風を起こしページを器用にめくってみせても

 

「え〜っとなになに、赤森四葉、双葉の妹で14歳現在俺たちが通っていた中学に在籍中成績優秀友好関係も広く男女共に人気がある、が恋人のようなものは居ないその主な原因は性格がコロコロ変わることだが最近何かが原因で性格が安定」

 

「ものすっげぇ、その原因に心当たりが」

 

双葉を見ると、顔が引きつってる俺と同じことに思い当たったんだろう

アレは事故だ!人災だ!法廷でも勝つ自信があるぞ!!

 

「それではーちゃんは現状をどうしたいの?」

 

法廷で琥珀が強攻策に出たらどうしようとしょうも無いことを考えていると双葉から最もな意見が

どうしたいって・・・

 

四葉が何故か家で飯を作っている→俺が作らなくてもいい

 

四葉が何故か家にいる→茉凛さんや琥珀があまり絡んでこなさそう(望

 

まったくと言って困ることがありません!

 

「もうどうでもいいや!」

 

「はーちゃん・・・なんだか投げやりになってない?」

 

「逃避の一種だな」

 

ほっとけ!

もう今日は飯食って寝る、ムチャクチャ早いけど寝てやる!!

 

 

 

いつも通り朝早く目が覚める、朝飯を作るためだ

     ・・起き様として動かない右腕を見ると何故か右腕を抱きしめて寝ている四葉

どうしようかと困った瞬間四葉が起きる

 

「私が朝食を作りますから鋼様は寝ていてください」

 

うながされるまま十数年ぶりの二度寝を開始する

・・何か突っ込む所があったような、まあいいか

 

朝飯を食って家を出る、弁当は四葉が昼に持って来るそうだ

琥珀が幾度となく起きてるかと聞いて来るが寝ながら歩くようなまねできるか

学校に着き朝練に行ったがキャプテンが絡んできたため逃げた

 

授業中ボーっと外を見てたら怒られた

怒られている最中も右から左へと聞き流していた

弁当なんだろな〜

 

昼になったら弁当を持った四葉が教室にきた

なんかクラスの奴らが騒いでいたので屋上にいった

何故か琥珀が来なかったので四葉と二人で食べた・・うまかった

 

教室に戻る途中何故か廊下の真中にバケツが置いてあり足を突っ込んでこけた

教室のドアを入るとき何故か黒板けしが降ってきた、不思議なこともあるもんだ

酷く心配そうな顔した奴が多かったが悩み事でもあるのか

 

午後の授業も聞き流し帰宅、どうせ部活行ってもキャプテンが絡んでくるだけだし

帰って四葉が作った飯を食って風呂はいったら寝た

夜中に布団がゴソゴソいってたが四葉だろう気にせず寝た

 

朝起きて学校へ行った、途中キャプテンが絡んできたが無視したら泣いていた

授業は聞き流し昼飯時・・昨日と同じように屋上に行き四葉と弁当を食べた

ただ、教室へ帰る途中に体が動かなくなった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうなったんだ暗くてよくわからんがかすかに何処からか声が聞こえてくる

 

「それでどうなの春奈ちゃん」

 

「幸せ太りってのは聞いたことがあるが、幸せで思考能力の低下に運動能力の低下とは聞いたことも無いよ」

 

「あれが幸せだったかどうかはともかく・・馬鹿もここまで来ると哀れだわ」

 

「黒木琥珀お前一応これの姉だろう、一応今だけはいたわってやれ」

 

「いたわっても良いけど後で鋼のどたまカチ割るわよ」

 

「そこらへんは好きにしろ、結局は現状をどうするかだ」

 

「ん〜幸せでこうなったんなら、不幸にすればいいんだよね」

 

「理論上はそうだが何か考えでもあるのか」

 

「まあね、あ、双葉?私だけど鋼元に戻すから用意してほしいものがあるんだけど」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぎゃあああああぁぁぁぁぁぁ」

 

なんだ、なんだこの体を走り回る刺激の塊のような感覚は!

犯人は予想ついてるが聞いてやる

 

「誰だ!」

 

「私よ!」

 

やっぱりか!!

堂々と胸張って宣言してんじゃねえ、何でいきなりこんなことしやがる!

しかもこのバチバチいってるイスは本物か、なんだか物凄く死臭がしやがる

 

「私がアンタのために借りてきてやったのよ、本物にきまってるじゃない」

 

さらっと怖いこというなこの馬鹿姉が!!

ここは何処だ、何でこんなことになってやがる

 

「説明しろー!!」

 

「声がおっきいのでポチッとな♪」

 

「ぎゃあああああぁぁぁぁぁぁ」

 

 

 

気付いたら日付が3日ほどすすんでいたのが謎だ!

四葉が家から居なくなってさらに昼になると弁当を持ってくるのが謎だ!

メガネのメモの俺の欄に「絶対に幸せになれない男」とあったのが謎だ!

よくわからんがメガネにはメガトンパンチを贈呈しておいた