第五球:傘の日には雨を持って
雨が嫌いと言う奴がいるが俺はそれほど雨が嫌いではない
雨が降っているときに外にいたり傘を持ってなかったりさえすれば
むしろ屋内で雨粒が窓に当たる音を聞くのが好きでさえある
ザーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
でも今はずぶ濡れだから嫌いだ
服が水を吸って重くなりなおかつ俺の体力を奪っていく
「ただいま〜、茉凛さん手が空いてたらバスタオルもってきてくれない」
「あや〜はーちゃんずぶ濡れだね、傘持っていかなかったっけ?」
そうなんだ持っていったんだよ、それでずぶ濡れになる理由は一つしかない
言っとくが雨宿りしてる女の子に貸すなんてベタじゃない
傘が盗まれたって傘立てに見覚えのある俺の傘・・ちょいとそこ行く琥珀さん?
「お帰り鋼、今日あたし傘盗られたからアンタの傘かりたわよ」
俺はお前の身代わりかい
一言言えば傘にぐらい入れてやるのになんで一人で帰っちまうかな
「相合傘なんかしたらちょっと濡れちゃうじゃない」
おかげで俺はずぶ濡れだ!
なんで傘の持ち主がずぶ濡れで傘持ってない奴が濡れてないんだよ
「まったく、相合傘しようだなんて図々しい」
人の傘勝手に持って帰るほうがよっぽど図々しいわい!!
おいこらこっちにこい一発殴ってやる、お・・無視かい・・・これでも喰らえ!
ずぶ濡れの靴を脱いで無視する琥珀の後頭部めがけて投擲
ヒョイ
あっさりかわされた・・
ベチ
あ、バスタオル持ってきた茉凛さんに直撃
え〜っと・・茉凛さん落ち着け、悪気は無かったぞ
「は、はーちゃんのバカー!!」
ドパム
半泣き状態の茉凛さんのタックルは当社比1.3倍の威力だった
次の日・・まあ今日なんだけど
ザーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
今日も雨は止まずに降り続いている
「チャンスよ!」
学校に登校後、教室の席に座り外の雨を眺めていると突如琥珀が叫ぶ
聞いたところでろくなことが無いのは解りきっているので無視、文句あるか?
「今日は雨!雨といったら傘、そして傘泥棒これは神のバカが私に与えた仕返しのレヴォリューション」
神様ってのは暇なんだな
そもそもお前神のバカって、それに革命って仕返しの方法が著しく変わるのか?
「鋼行くわよ、傘泥棒は市中引き回しの刑よ」
あ〜よかったよかった、がんばってこいよ
雨の日ってのはただでさえ気温が下がるのに何を好き好んで・・
ゴンッ
さらに無視してたら殴られて引きずってつれていかれた
「んで・・人を無理やり連れてきたからにはなんか方法を思いついてるんだろうな」
「あったりまえじゃない、傘泥棒は傘を持ってないから盗むつまり傘を持ってなければ傘泥棒よ!」
あってるような、間違ってるような・・
もしかして雨が降ってて寒いこの日にわざわざ下駄箱付近で張り込むのか?
「ソレは鋼の役目、私は寒いの嫌だから教室に帰るわ」
待てい
琥珀が帰ろうとしたところ肩を鷲掴む
お前は自分が何を言っているのか考えたことあるのか?無いだろ?
付き合ってやるからちゃんとお前も居ろ!
「鋼・・私たち姉弟よ」
ってこら!真剣な顔して何くちばしっとるか!!
そうじゃなくて、傘泥棒捜しに付き合ってやるからお前もここに居ろといっとるんじゃ
「しっ!」
怒鳴ろうとしたところを人差し指を口に当てた琥珀に黙らさせられる・・裏拳で
昇降口に現れたのは・・ウチのクラスのメガネじゃないか
メガネが靴箱のふたをパカッと開けるとそこには数十のメガネ
外用のメガネから室内用のメガネに掛けなおして
内用外用のメガネってなんだよ!
「さすがメガネね・・お洒落さんだわ」
それでいいのかと言う視線を教室に向かうメガネに送るが・・気付くはずも無い
やっぱりアイツもウチのクラスだけあって普通じゃないな
次現れたのはキャプテン・・傘って言うかビーチパラソル片手に
別にキャプテンがどんな目で見られようと勝手だけど、野球部を見る目が怖い
「香ちゃん目立つの好きだからね〜」
そんなことは聞いてはいないが、キャプテンの素行調査もかねるか
キャプテンが下駄箱を開けるとそこには一通の・・手紙?
「そんなバカな・・」
「香ちゃん一応3拍子そろってるし」
3拍子そろってても性格はアレだぞ?
その場で封筒を綺麗に開け手紙を読み出すキャプテン・・・後爆笑
なんだ?何がおかしい?恋文じゃないのか?
読み終わったらしく封筒に手紙を戻し下駄箱に入れなおす
「あ〜おもしろかった」
そう言った後別の下駄箱を開けそこにあった上靴を履いて行ってしまう・・
他人の恋文かよ!!
なんて恐ろしい奴だ、何の躊躇もなく読んで行きやがった
とりあえず後で被害者に密告しとくか・・知らないよりは知っていたほうが良いだろう
ドサッ
そもそも見てるだけじゃ何もわからないことに気付き始めた時何かが倒れる音に顔を上げる
昇降口にたどり着く前のところにに優希が倒れていた
血と雨が混ざってなかなかキモイことになってるぞ
「えっと・・どうするよ」
「どこまで血が広がってくか見てみたい気がする」
そこまでしてたらさすがにやばくないか?
もうすでに半径1メートル近くは血溜まりの詩だぞ
仕方が無いので琥珀に保健室に連れて行かせる・・優希次から雨の日は休め
寒い・・風邪引くぞこのままここにいたら
雨で気温が下がっているところに優希のつくった血溜まりが体感温度をさらに下げる
あの血溜まりを見た奴の反応は様々で飽きることはなかったな、うん
「ねえ、誰か怪しい人いた?」
ボーっと眺めてる内に琥珀が保健室からご帰還だ
さっさと教室に行かなかったことは誉めてやろう
「誰も」
「あのさ鋼・・私気付いたんだけど、今日って朝から止むことなく雨降ってるよね」
そうだな、昨日は昼過ぎから降って来て今日は朝からだな
「もしかして朝から降ってるのに傘持ってこない人なんていないんじゃ」
沈黙
・・・ははは、知ってたさ
元々俺は琥珀に無理やり連れてこられただけでそんなことは百も承知でい
「ばっかみたい」
人のこと言えんだろうが!
何だその言い草は俺一人がバカじゃねえだろ!!
落ち着け〜落ち着け〜俺、今切れたら武器(傘)は一杯でデスマッチだ
「二人ともこんなところでなにしてるの?」
怒りに耐えてたらあっさり見つかった・・紫暮さんに
正直に言いたくないです、詳細はこのバカに聞いてください
「そうそう琥珀さん、昨日教室に傘忘れて行ったでしょ」
なんですと?
「あ・・そういえば盗まれないように昇降口じゃなくて教室に置いておいてんだっけ」
と言うことは無駄足ですか?
寒いなか我慢して無駄ですか?
昨日ずぶ濡れで帰った意味は何処ですか?
「こ〜は〜く〜」
「やあねえ、そんな怖い顔してほんのお茶目さんじゃない」
謝る気はないんだな?謝ってもそんなことは知らんがな
「私優希みてくるからそれじゃ」
そう言って走り出す琥珀を追いかける、昇降口に置いてある傘を両手に抱えて
傘泥棒?ああなってやるさあのバカに天誅喰らわせるためならなんにだってなってやる!
「またんかこのバカタレが〜!!」
俺は抱えている傘を琥珀めがけて投擲する・・力の限り
「傘!傘泥棒よ〜助けてポッパーイ!」
この後傘が盗まれることは無かったがどれが誰の傘かは解らなくなったらしい