Get Two

第四球:芸人魂

 

今日と言う日は素晴らしい!

謹慎が解け、茉凛さんの遊びから開放され普通に普通の学生みたいに普通に学校へ行ける

普通・・なんて素晴らしい言葉だろう、そうだ!俺は普通なんだ

普通に教室のドアを開けクラスメートにさあ挨拶

 

ガラリ

 

「おはようクラスメート!」

 

何だその目は、まるで驚いている目ではないか

俺の謹慎が今日解けることを知らなかったんだな?

お?なんだメガネ、震える指で人を指しやがって

 

「鋼・・お前学校辞めたんじゃ」

 

静寂

 

 

 

 

辞めてねえ!!

誰だそんな悪質なデマを流した奴はって聞かなくても解る自分が嫌だ

 

「強い奴に会いに行くって一言のこして海外に旅立ったとか・・」

 

強い奴なら生まれたときから一緒だわい!

 

「嘘だー、俺は怪しげな宗教に勧誘された所を逆に乗っ取ったって・・」

 

この境遇に生まれたときから神を見限ったわ!!

 

「私は・・ごめん、聞かないで」

 

何を吹き込まれた貴様!!

急降下もいいところだ

からかうならまだしも全員一致の真顔で聞いてくるんじゃねえ!

えーい、朝練だ朝練

全ての悪意を吐き出してきてやる

 

 

「おはよっーす」

 

道具を取りに部室を開けて先輩の方々に挨拶

ここはテンションを抑えていかないと次は何があるか解らんからな

・・なんだそのさっき教室で見たような視線の数々は

 

「鋼・・お前学校辞めたんじゃ」

 

それはもうええっちゅーんじゃ!

クラスだけならまだしも部内でもひろめたのか

 

「それはもう教室でやったんですけど」

 

「「「「「ちっ」」」」」

 

あ!このやろうユニゾンしつつ舌うちかよ

ツバ吐くまねまでしやがって、下克上したろか!!

まったく俺の周りはろくなのがいやしねえ

 

「はーっはっはっは!おはよう諸君!!」

 

出やがったろくな奴じゃない筆頭が・・キャプテンなんだけどな

 

「おー鋼、今日はお前の為に3日分の遅れを取り戻す練習を考えてきてやったぞ!」

 

「全然うれしくないので一人二役でがんばっててください」

 

「遠慮はするな!これさえやれば3日分どころか下手すると一生野球ができなくなるぞ」

 

そんな練習やってたまるか!

なんでナチュラルに下級生を抹殺しようとするかなこのキャプテンは

双葉とか他の奴らには普通なのに俺だけ執拗に狙ってきやがっ・・・先輩方なんで俺の両脇固めてますか?

 

「鋼せっかくのキャプテンの好意を無駄にするな」

 

「そうだ、キャプテンは今日の為に睡眠時間を三時間も増やして考えてきたんだ」

 

「キャプテンはな〜、お前が憎くて憎くて仕方が無いんだ」

 

おいこら!段々と台詞が怪しくなってるじゃねえか!

しかも憎くてって俺は何もやってねえ!

 

「せめて!せめてグローブを」

 

「鋼・・高校球児たるものいつでもグローブがあると思うなよ」

 

じゃあどうやって試合やるんだよ!!

何で朝っぱらから命の危機にさらされないかんのだ

こんな時に双葉の奴はどこいったんだー!!

 

 

 

 

「ねえねえ何があるの?」

 

「よくわからないけど、また野球部が何かやるらしいわ」

 

「野球部も暇よね〜」

 

なんでギャラリーが集まってやがる

見世物じゃねえぞこら!

 

「こら鋼お客様に対してちゃんと愛想笑いせんか」

 

先輩その一ボールでジャグリングしてんじゃねえ!

その二も玉乗りすんな!!

あんたもあんたでなにおひねり請求しとるかキャプテン!

 

「さ〜てそろそろメインイベント!一年黒木鋼による三球同時ノックです」

 

「「「「「「「お〜〜〜〜〜」」」」」」」

 

お〜じゃねー!!三球同時なんてできるわえねえだろ!

絶対思い付きだろソレ!怪我したらどうする

先輩たちも互いにバットが当たらない距離測る前に突っ込むこと有るだろ!

 

「心配するな鋼・・・司馬君はこの半分の距離で三球とった」

 

キャプテンそれって漫画の話です!

誰か俺の代わりにキャプテン語で通訳してくれ、奴は絶対ミスフル読んでるぞ

 

「問答無用!撃てー!!」

 

カキーン、カキーン、カキーン

 

「こなくそー!!」

 

バシッ、バチッ、ボグォ

 

一球は左手のグローブでもう一球は素手の右手、最後の一球は・・

蹴り返したところをギャラリーの一人に直撃した

一部悲鳴が上がった気がしたがここにいる以上その程度の危険は覚悟しとけ!

 

「キャプテン!絶対今打ての字が撃てだったでしょ!!」

 

「ぬぬぬ・・こしゃくな!次は五球同時だー!!」

 

聞いちゃいねえよこの人、しかもノッカー二人増えやがった

誰か止めてくれ、奴らは本気だ!

 

カキーン、カキーン、カキーン、「とおりゃあ」、カキーン

 

もう一々捕るのがバカらしい避けて、避けて、避けて、避けて・・あれ?もう一球は?

ふと上を見上げると・・黒くて丸い物体

 

ドスン

 

顔スレスレを通り過ぎてグラウンドに突き刺さる

誰だ!砲丸混ぜた奴は、いくらなんでも死ぬぞ

 

「はっはっは惜しかったな鋼、もう少しだ」

 

アンタかキャプテン!!

しかももう少しってなんだ!もう少しって!!

三日あってなかったせいか三日分以上の嫌がらせ率だぞ

もうカンベンならん、ここは一気に返り討ちじゃ〜!

 

「はいこれ」

 

「おう!オーラオラオラオラ」

 

渡されたバットでノックの球を直接打ち返す

バットでテニスやってるようなもんだ

 

「ぐぉ!」「あが!」・・

 

一人・・また一人と打ち倒し、残るはキャプテンただ一人

 

「なかなかやるではないか鋼、だがここまでだー!」

 

キャプテンが渾身の力でボールを打ってくる

・・が、ボールを相手にはせず一気にキャプテンとの距離を縮めてバットを脳天めがけて振り下ろす

 

ゴキン

 

「またつまらないものを打ってしまった・・」

 

なかなか高い音がバットとキャプテンからしたが関係ないのでとりあえずキメ台詞

ふう・・これで俺に一時の平和が

 

「ふっふっふ之で勝ったと思うなよ、私が滅びてもまた第二、第三の」

 

ゲキッ

 

良いから滅んどけ、額に[]って書かれるよりマシだろう

それにキャプテンが滅んでもまだ他にも敵はわんさかだ

 

「朝っぱらからバカばっかねー、鋼」

 

「む!チェストー!!」

 

言葉を掛けてきた相手に何の躊躇もなくバットを振り下ろす

 

パシ

 

片手で受け止められた・・琥珀に

多分アレだ、俺の敵レーダーに引っかかったんだよ

別にお前を抹殺しようとしたわけじゃないぞ、今回はなんだか味方っぽかったしな

だからその必殺技を試しうちする時の微笑みはやめれ

 

「何か言うことある?」

 

「生きて帰りたいです」

 

琥珀の体が流れるように動いた

ドクター・テンマやっぱ世界は真っ暗だよ

 

 

 

 

目が覚めたのは保健室のベッドの上

どうせ琥珀のことだ一限には間に合うように加減してあるだろう

さっさと起きて教室に行こうとすると、この学校の保健医紅野春奈と目が合った

 

「おー、起きたか黒木鋼・・ぷっ・・ふっるー!!アハハ、古いけど飽きないわソレ」

 

なんだ?春奈さん何がおかしい

俺の顔に何かあるのか?

 

「これで自分の顔見てみな」

 

春奈さんに渡された手鏡を除くと額に

 

 

「いや〜灰谷達がさっき何かやってたのは知ってたけど、アイツらも古風だねぇ〜」

 

古風じゃねー!

それにアンタ黙ってみてたのか?!

 

「ほら起きたんならさっさと教室にいきな、他の野球部連中はアンタの起きる十分前に出てったよ」

 

このまま出て行けるか!

くそっ消えねえ、もしかして油性マジックかこれ?

このまま引き下がれるか!このままキャプテンのクラスにまで殴り込みじゃ〜!!

額に肉の文字を持つ男の生き様みせてやる!

 

「若さっていいねぇ〜」

 

よくねえよ!!