Get Two

第三球:主婦と主夫と病人と

 

ブオォーーーーーーーー

耳障りなほどの大きな音は意識から切り離して腕を前後させて掃除機にゴミを吸わせる

自宅謹慎だからって暇と言うほどやることが無いわけではない

こんなに時間が有るときは珍しいから普段できないところの掃除をするのだ

 

「ね〜ね〜、はーちゃん遊ぼうよ」

 

そう考えればなかなか有意義な日を送れるではないか

琥珀にはそう言った意味では感謝しよう

どうせすぐに前言撤回するようなことがあるんだろうけどな!

 

「はーちゃんってば!」

 

ドパムッ

ぐぁ、茉凛さん背後からのタックルは危険だから禁止だと何時も言ってるだろうが

 

「イジメかっこ悪いよはーちゃん!」

 

「いじめって・・・なんなんですか茉凛さん」

 

茉凛さんの声まで意識から切り離してたみたいだ、俺の頭は騒音と判断したらしいな

ほとんどまんまだけど・・

 

「掃除なんていつもやってるでしょ?遊んで」

 

「だからさっきも言ったでしょ、今日は普段できないところを掃除するって。テレビでも見ててください」

 

「い〜や、つまんない〜」

 

そらそうだ、今は朝の10

ニュースとか中途半端な番組しかやってないから茉凛さんには面白くないだろう

面白いって思う人いるのか?それより普段なにしてるんですか茉凛さん

 

「昼過ぎになったら買い物に行きますからそれまではゲームしててください」

 

「買い物?冷蔵庫は一杯だよ」

 

「お見舞いです、それまではおとなしくしててください」

 

「は〜い」

 

ふ〜、とりあえず納得してくれたみたいだ

しかしアイツもよくよく病気になる奴だな・・ちゃんと飯くってんのか?

まあいいや、とっとと掃除だ掃除

 

 

 

「え〜なんでついて行っちゃ駄目なの」

 

予想してた言葉だけど・・説明しても納得してくれないだろうな〜

ただ単に病人の周りでドタバタして欲しくないだけなんだけど

 

「病気が茉凛さんにうつったら困るからおとなしくこの公園で待っててください」

 

「はーちゃんにうつるほうが困るよぉ」

 

くっ、要らん知恵つけよって

こんな古典的な手は嫌なんだけど・・

 

「あ!トトロだ!!」

 

「え?何処何処?はーちゃん何処にいるの?」

 

ダッシュ!!

我が母親ながら情けない・・こんな手に引っかかるとは

ちなみにトトロはいつも茉凛さんの心の中に巣くっています

 

 

 

 

 

さてとお見舞いって言っても病院じゃなくて普通にクラスメートの青島 優希の家だ

琥珀の友達だけあってこいつも色々な〜・・俺の友達でもあるけど

 

「ほれ、果物屋のおばちゃんに適当に詰めてもらった果物と琥珀からの手紙」

 

「ごめんね鋼君わざわざ来てもらっちゃって」

 

果物はそこらへんに置いて手紙を渡してやる

琥珀からの手紙は果物屋のおばちゃんが俺が来るだろうからって預かってたらしい

先を読むとは芸が進化してるぞ

 

「それで大丈夫なのか?」

 

「うん微熱が続いてるだけだから・・あ、ちょっと待ってね」

 

あーきたきた、優希がビニール袋を口にあてて

ゴバァ

透明な世界がまっかっかだ

 

「・・本当に微熱なのか?」

 

「今日は何時もより少ないみたいだし大丈夫だよ」

 

どう見ても1リットルはあるが本人が言うんだ大丈夫だろう

大丈夫だと思いたい、何事も無かったかのように琥珀の手紙読んでるしな

 

「茉凛さんは一緒じゃないの?」

 

「病人の前でバタバタ走られたらかなわんからそこらの公園に置いてきた」

 

手紙を見ながらおもむろに聞いてくる優希だが・・

茉凛さんと一緒にきたこといったっけか?

 

「そうなんだ・・」

 

なんだ?手紙に何が書いてあるんだ?

なんか食い入るように見ていて、俺が見えてないぞ

 

「やだ・・琥珀ちゃんったら」

 

なんだ?なんで赤くなる?

おい、マジで大丈夫か顔真っ赤だぞ

熱があがってき

ゴバァ

2回目かよ!しかも今度はビニールにじゃなくてベッドにダイレクト

そのまま力なく倒れってまてい!!

 

「おいしっかりしろ優希!死ぬほど出たけど生きてるぞ」

 

「鋼くん・・わたしもう」

 

もうじゃねー!俺が来てる時にこういうことすんな

せめて琥珀がいれば苦しまずに送って(逝かせて)くれるのにアイツは今学校だ

 

「わたしね・・ずっと前から」

 

なんだ?隠し事か?

そんなことする暇あったら吐血を隠せ、人前で堂々とするんじゃねえ!

 

「鋼君のことが」

 

喋っている途中の優希の手から琥珀の手紙がするりと落ちる

血を直視したくなくて優希から目を離し落ちる手紙を目で追ったのだが・・気になる文字が

 

「す」

 

優希の言葉を右手でさえぎる・・アイアンクローで無理やり

目をぱちくりさせて驚いているがそれは俺も同じだ

 

「優希・・これはなんだ?」

 

俺の手の中には拾った琥珀の手紙

最後のほうがさっきの血で読めなくなってるが、前半部分は俺と優希との会話がそっくりそのまま

 

「えっと・・強制的未来日記」

 

ふざけんな!強制的って何だよ!

くそ琥珀の嫌がらせもとうとう逝くとこまで逝きやがった

それにしてもなんでアイツのまわりはアイツの手伝いをする!

怒りに任せて優希の顔がミシミシいってるが・・怒りによる不可抗力としておこう

 

「あの〜鋼君そろそろ力緩めてくれないと」

 

さっきまで赤かった優希の顔が青くなってきた

うむ、血の吐きすぎで貧血なんだろう決して俺のアイアンクローのせいではない

 

「余計力こもったきがするんだけど・・」

 

「気のせいだ」

 

気のせいじゃないけどな

さてとこのまま優希は気絶させて帰るかな

今夜の琥珀との決戦にそなえて色々策を練らんといかんし

 

 

さてと・・茉凛さんは何処にいるのかな

置いてくなって喚くのを無視したからな〜勝手にどっか行ってなきゃいいけど

む!背後に怪しい気配!

 

「は〜が〜ね〜、よくもこんな所に一人で置いていったわね」

 

うぉ、珍しい大人バージョンで現れやがった

     ・ってことは怒ってますか茉凛さん

 

「ひっじょぉ〜に怒ってます!」

 

大人バージョンの茉凛さんは苦手だ・・(遠目に)母親っぽさ全開で

本当の母親だけどな

 

「今日の償いとして停学期間中はしっかりと遊んで貰いますからね!」

 

根本的なとこは変わってないんだけど

あ〜帰ったら絶対そっとしておいてくれないぞこれは

 

「さー帰って遊ぶわよ鋼、出前でもとりましょう今日はご飯作らなくていいから」

 

そう言って茉凛さんはとっとと歩いていってしまう

結局遊ぶの付き合わされて疲れるのは一緒なんですけどね

出前か・・月末苦しくなるからあんまり金かかることはしたくないんだけどな〜

 

「鋼時間は大切に、サクサク歩くの」

 

「へ〜い」

 

そういや結局あの手紙の後半って何が書いてあったんだ?

優希の言葉アイアンクローでさえぎって聞こえなかったし・・

まあいいや考えてわかるもんでもねーし

琥珀対策もいらんだろう、茉凛さんと遊んでれば何もしてこんだろうし

明日、明後日体力持つかな俺・・