Get Two

第二球:赤飯な家族

 

炊飯器を開けると赤い飯

別に水の変わりに血を入れたわけではなく、ただの赤飯

ただのと言えるかは不明だ・・そもそも赤飯を炊けと言ったのは琥珀だ

だいたい理由の予想はついてるが

 

「ただいま〜」

 

張本人のお帰りだ、色々と

 

「鋼〜ちゃんと赤飯炊いといた?」

 

「ああ」

 

予想はついてるものの一応理由を聞いてみたい気がするが

聞くべきか聞かざるべきか・・どちらを選んでも結果は同じだろう

 

「あー、その赤飯鋼の初停学のお祝いなんだからちゃんと食べなよ」

 

ほら、聞く前に答えやがった

絶対お前ら人の考え読めるだろう

俺も既に高校生大人の一歩手前だ、ここは余裕の態度で応えてやろうじゃないか

赤飯を炊いたのは俺だという事実を頭の中枢に刻み込んでおいて

 

「お前は食わないのか?」

 

「あたし赤飯嫌いだもん、たしか茉凛ちゃんも嫌いだったっけ」

 

じゃあなんで赤飯など炊かせた!

しかも腹減ってると思ったからたくさん炊いたよ、朝の教訓を生かして5合もな!!

 

「食べきれなきゃお隣にでも配れば」

 

「何のお祝いか聞かれたらどうする」

 

「正直に鋼の初停学祝いって言う」

 

貴様はなめとんのか!

なんでわざわざ身内(俺だが)の恥を近所に広めにゃならんのだ

しかも躊躇もせずあっさり言いやがって

 

「はーちゃんが停学・・はーちゃんが・・停学」

 

お、茉凛さん何時の間に・・

言ってなかったっけ?午前中で帰ってきたときに気づくべきだぞ

何だその思いつめた顔は、真っ青だぞ

 

「琥珀ちゃん!はーちゃんが不良さんになっちゃったよ!」

 

「あ〜よしよし、そうよ今夜は鋼が真人間でいる最後の晩餐明日から鋼は悪徳と暴力に染まった人達の負の希望になるの」

 

おいこら!負の希望ってなんだ

しかも悪徳と暴力に染まったものの負の希望って不良の域を越えてないか

 

「明日から飯がまずいんじゃボケ!とか言ったり」

 

「あ〜可哀想な茉凛ちゃん、きっとちゃぶ台ひっくり返しておまけにやくざキックが飛んでくるわ」

 

飯作ってるのは俺だ

まあ、言っても無駄だけどさ

 

「せっかくお部屋お掃除してあげたのに勝手に入るんじゃねえババァ!とか言ったり」

 

「あ〜可哀想、きっと机の上には整理されたエロ本が11冊」

 

リアルな数字はやめろ、本当みたいじゃねえか

しかも掃除してるのは俺だ、家中俺だ

 

「極めつけは風呂が熱いとか温いとかフルチンで迫ってくるのね」

 

「あ〜可哀想な鋼、なんて粗末なものを持って生まれたの」

 

いいかげんにしとけよお前ら

風呂入れるのも俺だ!!

 

「粗末は否定しなかったわね」

 

「粗末だなんて可哀想だよ琥珀ちゃん、はーちゃんのは可愛いんだから」

 

お前らアレだろ、100%人の考え詠めるだろ!

否定しても俺は肯定するぞ

絶対許さん!今日は謝ってくるまで赤飯以外出さないからな!

 

 

あ〜食った食った、赤飯ばっかりな

まだ2名ほど赤飯を目の前にしてうつむいてるが知らん

俺は悪くない

たとえ2人が泣いていたとしても・・まぁちょっとぐらいの罪悪か

 

「はーちゃんが虐めるよぉ〜シクシク」

 

「粗末なくせに鋼が虐めるシクシク」

 

持つかボケェ!

なんで俺が虐めたことになってる、自分の胸とちゃんと会話しろ

しばらくそうしてろ、風呂だ風呂むちゃくちゃ早いがさっぱりして寝る

 

 

 

「う〜・・」

 

寝苦しい、と言うか重い

何かが俺の上にいるような・・金縛りって奴か?

 

「はーちゃん大丈夫?苦しいの?」

 

あー暗くて顔は見えないが・・その声は茉凛さん

赤飯の入った茶碗片手になんで人の体の上で正座してますか?

 

「何してるんですか?」

 

「反省してるの」

 

あなたは人の体の上で正座しないと反省できないんかい

 

「だって琥珀ちゃんが反省するときは相手の体の上で正座するのが常識って言ったんだもん」

 

やっぱり琥珀か!

しかも何だその常識はそんな常識捨てちまえ

茉凛さんも信じるなそんな言葉

 

「琥珀―!!」

 

俺の上で正座してる茉凛さんが耳をおさえてるが構わず大声で琥珀を呼ぶ

どうせ琥珀のことだ俺が茉凛さんにどいてと頼むことを見越してなにか吹き込んでるだろうからな

 

「なにようるさいわね、空腹に響くんだからやめなさいよ」

 

てめえ、何普通の会話してやがる

この状態を見てなんの感想も無しかい

 

「・・マザコンもほどほどにしときなさいよ」

 

うーがー!!自分で仕向けといてムカツクー

ちょっと赤飯で虐めたくらいでここまでするか、しかも自分でやらずに茉凛さん使いやがって

変化球は苦手なんだよ!

 

「あたし寝るから・・後よろしく」

 

ちょっと待て!なにがどうよろしくなんだ

おいこら行くな、戻って来い!!

 

「茉凛さんどいてくれ!あのバカ絶対殴る」

 

「いーやー」

 

いやじゃない、こら暴れるな・・ぐぁ膝がアバラにめり込む

ちくしょう絶対諦めてたまるか、諦めたらそこで終わりなんだ

安西先生見ててくれ俺は絶対諦めねー!

 

 

 

 

 

 

 

朝か・・いつのまに、時計はっと6時か何時の間に寝たんだ?

たしか諦めないことを安西先生に誓って・・

大声で叫び続けたら琥珀に人中(人体急所のひとつ)入れられたんだっけ

 

「う〜ん・・大ちゃ〜ん」

 

時に茉凛さん・・なんで俺のベッドで寝てますか

こんなとこ琥珀に見られたらまた何言われ

 

「鋼、おはよ♪」

 

既にいるし!

何だその獲物を見つめるハイエナのようないやらしい目は

 

「これなーんだ」

 

そういって琥珀がヒラヒラさせているのは一枚のポラロイド写真

 

「どう、茉凛ちゃんの寝顔可愛く撮れてるでしょ?」

 

茉凛さんが可愛いかどうかは置いておいて

なんでその隣に俺が寝てる!しかも白目剥いて気絶してるじゃねーか

 

「この歳で母親と寝てるって広まったら・・面白いことになるわね」

 

「くっ・・」

 

面白くねえよ!

なんて奴だ・・仕返しが二重構造になってやがった

 

「何が目的だ」

 

「赤飯」

 

「あ?」

 

「赤飯のこり4合一人で全部食べてね」

 

くそ!今日から俺は自宅謹慎だぞ毎食赤飯食えってのか

正直俺も赤飯好きじゃねえんだよ、我慢すれば食えない事無いけど

あ〜ムカツク、チラチラ写真見てんじゃねえよ

 

「解ったからその写真よこせ」

 

琥珀にこんな写真もたせてたら、リストラされたおっさんに核の発射ボタンもたせるようなもんだ

絶対すすんでボタン押しやがる

 

「嫌、今日あたしが帰ってくるまでに食べきったらあげる」

 

朝と昼で4合も赤飯食えってか無茶言うんじゃねえ

 

「3日後から鋼は学校でマザコン呼ばわり・・可哀想」

 

笑いながら嘘泣きしてんじゃねえ!そのバレバレさが又むかつく

食ってやるからもうちょっと寝てろ!このためだけに早起きしやがって

 

「それじゃ、もうちょっと寝るから朝ご飯よろしくね」

 

よろしくしてやるさ

コーンフレークを水で出してやる、それでまた何かしてきても知らん

泥沼に入るのが俺一人でも喜んで沈んでいってやる、こんちくしょー!!